独立体験記 番外編―被告人は無罪

「被告人は無罪」

私の担当していた国選事件で無罪判決がでました。

チラシの裏にでも書いておけ,というツッコミがありそうですが,今日の新鮮な気持ちを書き留めたいと思います。

雨が降る東京地裁。

私が今年の1月から担当していた国選事件の判決日を迎えました。

1月に国選で担当し始めてから,再逮捕を経て起訴されました(起訴されたのは1件だけでした)。

起訴後に保釈申請をした際,一度は保釈許可がでたのですが,抗告審でひっくり返ってしましました。

また,ものの本を読み,公判前整理手続きに付すことの上申をしましたが,検察官からのしっかり証拠開示はしますという発言や,裁判官からの促しもあり,上申は取り下げました。

第1回の期日のタイミングが検察官の異動と重なったため,初回の期日が結構先になってしまいました。

公判初回は4月下旬でした。

判決までの流れは,検察官立証,証人尋問1人,弁護人立証・被告人質問),論告期日,判決期日というオーソドックス流れでした。

被告人質問が終わった後に保釈請求がとおりました。

そして本日,判決の日を迎えました。

雨が降っていましたので,なんとなく良い気分ではありませんでした。

傍聴人席には検察庁の職員と思われる方がいて,「あー,判決後に身体拘束されてしまうのかな」という気持ちになりました。

他にも数名の傍聴人がいました(あとからわかったのですが,その中に新聞記者もいました)

裁判官が入ってきました。

一礼して着席する。

裁判官が「被告人は証言台の前に立ってください」と言い,被告人が証言台の前に移動する。

裁判官が判決を読み上げる。

「主文,被告人は無罪」

しばしば弁護士のなかでは話題にがりますが,被告人「は」と聞いた瞬間少し頭が真っ白になりました。

ただ,すぐに意識を戻して判決を聞くことに徹しました。

判決を聞いている間,特段,舞い上がったり,心の中がふわふわしたりということはありませんでした。

たんたんと判決を聞きながらメモをとっていました。

理由の読み上げが終了し,被告人と裁判所の1階で話し,事務所に帰ってきました。

その道中も特段,こみ上げてくるものはありませんでした。

自分の弁護活動を振り返ってみて,当たり前のことをしただけですし,反省しなければならないこともありました(無罪の重要な要素として,裁判官の補充尋問で得られた回答が無罪につながった面がありましたので,反省しっぱなしでした)。

法廷から出たところで,報道機関の方2名に呼び止められました。

被告人もいましたので,1分ほど話を切り上げ,名刺を渡して撤退しました。

これから無罪判決を得た実感ないし喜びみたいなものがでてくるのかわかりませんが,いまのところは,ホッとしたという気持ちです。

高揚感みたいなものは感じません。

高揚感がないのは,確定したわけではなく,控訴される可能性もあるからかな,と感じています。

逆に,弁護活動の反省点もあるため,反省を活かしてこれからの活動をより濃いものにしていかなければ,という気持ちで身が引き締まりました。

今の気持ちはすぐに薄れてしまうか,忘れ去ってしまうものだと思います。

つらつらと書いてきましたが,今日の新鮮な気持ちを書き留めるべく,この記事を書きました。

お目汚し失礼しました。

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