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新型コロナウィルスの新規陽性者数と重症者数の関係

連日、新型コロナウィルス(Covid-19)の新規陽性者数がニュースを賑わせています。本稿は2021年8月1日に書いていますが、数日前から全国の新規陽性者数が1万人を超え、過去最高人数を更新しています。
これに対し、ワクチンの効果で重症者数や死者数はあまり増えていないので、騒ぎすぎだとする論調もあります。
この記事では、これまでの新規陽性者数や重症者数、死者数の推移を可視化し、現在の状況をどう見るべきなのかについての情報を提供できればと思っています。

データの入手

元となるデータは、厚生労働省提供のオープンデータです。以下のデータが提供されています。
・新規陽性者数
・入院治療等を要する者等
・死亡者数
・重症者数

グラフの作成

上記のデータを単純にグラフ化してみます。緑が新規陽性者数、青が入院治療を要する人数、赤が重症者数、紫が死亡者数です。

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死亡者数はオープンデータでは累積数になっていますが、グラフ化する際に1日の死亡者数に変換しています。

それぞれの値の増減は連動しているように見えますが、縦方向のスケールが違いすぎて見にくいので、比較のためおおよそのスケールを合わせてみます。

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緑色の新規陽性者数はそのままとして、青の入院治療要人数を0.1倍、赤の重症者数を5倍、死亡者数を50倍し、増減の関係性を見やすくしてみました。

このグラフでこれまでの感染ピークの状況から見ると、青・赤・紫の線は緑の増減よりも少し遅れて増減している様子がわかります。つまり、新規陽性者数が増えると、少し遅れて重症者数等が増えるという構図です。

その状況を見るために、それぞれのグラフを横方向にずらしてみます。

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これも緑色の新規陽性者数をそのままとして、青の入院治療要人数を2日前倒し、赤の重症者数を14日前倒し、死亡者数を14日前倒ししています。

まだ若干ずれているような気もしますが、概ね増減のパターンが一致しているように見受けられます。

ここまでは(縦横の合わせ方に多少恣意性が入っているかもしれませんが)厚生労働省提供のデータを単にグラフ化したものです。ここからこのグラフについて考察してみたいと思います。

考察

直近のグラフを見ると、これまでのパターンでは紫の死亡者数についても上がり始めそうな時期ですが、今のところその様子はありません。
高齢者ワクチン接種が進んだおかげで死亡者数が減ったという仮説がありますが、この仮説を裏付けているように思います。

一方で、青の入院治療要人数や赤の重症者はこれまでと同様に上がり始めています。重症者は緑の新規陽性者数からおよそ2週遅れになっていて、新規陽性者数がまだピークに達しているかどうかわからない状況のため、しばらく増加が続くことが懸念されます。ワクチン接種の効果や、最近流行しているデルタ株の性質にもよるかもしれませんが、これまでの傾向と変わらない場合は、過去の重症者のピークである2021年5月頃の1400人(赤線は縦軸5倍スケールになっています)を大きく超えてくる可能性もありそうです。
厚生労働省の病床調査を見る限りは、重症用の病床は5000以上あるようなので、にわかに枯渇することはなさそうに思えますが、新規陽性者数は5月頃の倍近くになりつつあるので、重症者もこの勢いで増えてしまうと、近いうちに重症者用の病床が50%以上埋まる事態もあり得るかもしれません。

死亡者数が減ってきているのは当然重症者に対して相応の医療が提供できている前提でしょうから、重症病床が不足してきた場合には再び増加に転じる可能性もありそうです。そうならないように、重症者の推移は注視していく必要があると思います。

おわりに

以上、厚生労働省提供のデータを可視化することで見えてくる状況をまとめてみました。この記事が、現在の状況を冷静に判断する一助になれば幸いです。

(2021/8/1 21:30追記)
東京都は重症者の定義を独自に設けており、国の定義よりもより重症度の高い患者のみを重症者としています(厚生労働省による定義(4章)東京都の定義)
グラフ化した重症者数は、東京都分は東京都定義による人数が計上されていますが、病床数については国基準での計上となっているようなので、病床数の判断は定義を揃えた上で見る必要がありそうです。

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