見出し画像

それはまるで夢のような

ふらつく身体を吊革にぶら下げるように神奈川の果てまで、最寄りのバス停を降りる頃には雨はやんでいた。
お家に帰るやいなや母親から
「雨降ってたでしょ?傘持ってった?」
「向こうのコンビニで買ってきた」

──
さかのぼることおよそ一ヶ月前のこと。
池袋に傘を"置き忘れた"という、数奇な出会いを生み出したあの日とは真逆ともいれる「傘トラブル」を
、今回はなんとか回避できたのだが。

手足と顔を洗い、バッグの中身を取り出す。
ペットボトルに3分の1ばかり残ってたブラックコーヒーを眺めながら
「これさっき、横浜の煉瓦を食べる時2つのコップに分け合ってたコーヒーだ」
なんて思いだしたりして
2人で飲んでおよそ3分の1残ってたこれは何?

壊れるほど愛しても 1/3も伝わらない
純情な感情は空回り
I love youさえ言えないでいる My heart

なんて、SIAM SHADEの「1/3の純情な感情」
を思い出してみたり

まるで夢のような時間は
確かに其処に在ったわけで
傘もコーヒーも、夢の時間の目撃者である。

まるで明日デートするみたいだね
って迷って選んでくれたお洋服だったり
きっと似合うよって言った好きな色をまとった君はとても眩しかった。

darker than darkness
暗闇よりも暗いもの
眩しすぎて目が眩むこと

雨音を聴きながら、シロツメクサや焚き火だったり、星空のことだったり、

2人憧憬に思いを馳せてみたり。

僕は話すのが苦手、大勢の和に割ってまで話すことができない。
「わたしがとなりにいるから」
君の言葉に僕は勇気をもらえた。

案の定な僕の様子を隣で時々目配せしてくれた君の優しさだったり、
話したいことはたくさんあるはずなのに、静寂の間も生まれたりして。だけどそれは黙っているというよりも、目で会話していたわけで。
言葉にならない気持ちは言葉では伝えられない。
だから目で伝える。

それはきっと音楽も同じ。
楽器を弾けるというということは、もう一カ国語を話せることに似ているのかな。
楽器でなくとも歌声だったりメロディーだったり。

SNSや配信の文字では伝えられないこと
それを伝え合うためにライブハウスがあり、今日という機会がある。

という気持ちをこうして文字に起こしているのが自己矛盾の気もするけど(笑)

日々のセトリもそうだけど、こうして何かの形で記録に残しておけば、遠い未来の世界からも今日という日をプレイバックすることができる。

初めてづくしだったことを君は喜んでくれていた。
最初で最後になるのかな、
最後だなんて思いたくない。せっかくこの形が見えてきたのだから。これを「はじまり」と名付けてみよう。
またどこかで何かの形で。

───                                   雨音がクレッシェンドしている
仕事に行くときの雨は嫌いだ。
だけど君とお話した雨音については、どこか違う世界で慈しみのストロークを奏でてくれている。

そういえば昔、「雨音はショパンの調べ」という歌が流行っていた。
僕はようやく今になって、こんないとおしい気持ちを肌として知ったのかもしれない。

なんて思い出しながらいつまでも夢の続きを観たい

今夜この惑星は雨雲という灰色の空に覆われているけど、その迷霧の上には同じ星空が続いている。
夜を切り裂く光
君と同じ星空を眺めていたい。

20240602

微睡みの中より。
Лавочкин

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?