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意識低い系女子の逆襲。(序章)

「出る杭は打たれる」
なんてのは一昔前の話、と思って安心しすぎていたことは、認める。

「思い切りやってみなさい!責任は取ってやる。」
そんな上司の下でしか働いてこなかった自分が甘ちゃんだってことも、認める。

それにしたって、こりゃーあまりにも酷いんじゃないか、と時々いたたまれない気持ちになることがある。

恵まれた環境の中で、思い切りのびのびと働いて、毎日楽しくて仕方がなくて、気が付いたら結果もついてきた。そんな日々が何年も続いた。
新しい部署への配属が決まった時には、ただただワクワクした。明るい未来以外、想像できなかったから。

でも・・・

念願が叶って、着任した先で待っていたのは、
(特殊な)パワハラ環境だった。

もっと仕事がしたい!
そう思って乗り込んだ環境なのに…

最初っから、「ん???」と思うことの連続だった。
絶対君主制とか、独裁政権てのはこういう人間から生み出されるんだなと、傍から見たら、ちょっと感心してしまうような統治スタイルが敷かれていたのだ。(※統治であって、マネージングでは無いのがポイント。)

そんなスタイルは、田舎の中学校時代を彷彿とさせた。逆らう奴は先生によってボコボコにされ、成績表には「先生に対し忠実か否か」が反映される、そんな中学校時代。
(私は、そこで生き延びるために猫を3・4枚かぶる必要があった。)

中学時代のトラウマから、何が何でも外の世界に出なければ。。と強く思い、遥か遠くヨーロッパまで来てしまったのに、まさかのタイムスリップ。

農民は、何も考えずに領主のいう事にイエスと答えること。年貢をきっちり納め、言われたことだけきちんとやっていれば、安定した生活が保障される。農具の改良?肥料の開発?ふざけたことを抜かすんじゃない。頭を使う仕事は全て、上が決めることだ。農民が口を出すことではない。

まあ、要はそういう環境です。

「最近の若い子は・・・」
と言われるのが嫌で、ひとまず領主の統治スタイルに従った。
コミュニケーション力と柔軟性だけが私の売り、と思って生きてきたから。変な奴にも合わせてなんぼだと思ってきたから。もはやそうやって相手に合わせていくこと自体が私のプライドみたいになっていたから。

とにかくそうやって、自分なりに耐えてきた。
気が付けば3年が経っていた。

友人や同期の活躍を耳にするたび、胸がギュッと締め付けられるような気持ちになった。

あれ?私、このまま行ったら、30代を無駄にしちゃうんじゃない?

そんな焦りと向き合うのが嫌で、私はしばらく逃げることにした。
旅行に行ったり語学を勉強したり。「満足な業務を与えられずに飼い殺しにされている」という事実から、思い切り逃げてみた。
逃げながら、「領主が代わりはしないか」と期待した。遠く離れた本社に報告も試みた。けれど、何も変わる気配は無かった。

私が逃げている間、領主はとても満足そうだった。私が一揆を起こすことが無いと安心したのだろう。
たくさん休みを取りなさい、早く子どもを作りなさい、早く帰宅して配偶者に尽くしなさい。

傍から見たら、良いご身分だ。農民のくせに、有休取り放題。ただただ畑を耕してるだけで、破格の給料が保障されて、テラス付きのアパートまで用意してもらえるのだもの。

でも、もう限界だ。

私は好きな仕事がしたくて、たまたまそういう会社があったからサラリーマンになったのだ。偉くなるためでも、高い給料をもらうためでも、待遇を自慢するためでもない。やりたい仕事を追求したら、今のこのポジションを得るに至ったのだ。
願望を叶えてくれた会社には、恩義も感じているし、愛着だってある。

でも、もう我慢の限界だ。

農民にだって考える権利はあるし、学ぶ権利はあるだろう。田畑を任せてもらえれば、運営管理だってできる。新たに農地を開拓するモチベーションだってある。

ということで、一揆というには穏やかな、
静かなる逆襲を企てることにした。

この一揆が上手くいくかどうか、まだわからない。失敗して私が会社を去ることになるかもしれないし、領主が左遷されるかもしれない。

数年がかりの逆襲計画を、静かにここに記していきたいと思う。

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