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雨の図書館

゜こちらの作品を読む前に…

stand.fmでご活躍されている
お二人の配信者様の作品に感銘を受け
その図書館を雨の日にだけ
「私」も利用したくなりました

まずは、お二人の作品を順番に
お聴きください

https://stand.fm/episodes/645cbf632647778a667af3a0

https://stand.fm/episodes/645f829d468de2f62561d100

原田龍一さん(note)https://note.com/harada_ryuichi/n/n0c6963bad0c7

プロ作家のお二人の秀逸な文章に対して
ド素人の私は語彙力も乏しく
文章はかなり幼稚です
それでもご興味がありましたら
最後までお付き合いください

緒方しろ様、原田龍一様
図書館への立ち寄りを許可してくださり
ありがとうございます
深謝

雨の図書館

時間を気にすることなく目覚めた
カーテンを開けると
今にも降り出しそうな空
せっかくの休みなのに
なんとなく気怠い
こんな日は決めてることがある
図書館へ足を運ぶのだ

本を借りることが目的ではなく
館内閲覧するだけ
これは私なりの決めごと
街中の本屋ではなく
図書館の中にいたいだけなのだ

図書館の匂いが好き
新品ではない
古い紙やインクの懐かしい匂い
雨の日は特に深い
学生時代はほとんどの休み時間を
図書館で過ごしてきた

手際良く身支度を整えると
雨が降り出さないうちに
レインコートと傘を握りしめ
近くの図書館へ急いだ

受付の女性に軽く一礼すると
気になる本を手当たり次第
書架から取り出し
その中から5冊を厳選した

閲覧する時は
表の閲覧席ではなく
学習室に篭もることにしている
これも私なりの決めごと

平日の昼間に
わざわざこの部屋で
読書する人はあまりいない
しかし
これが夕方になると
学校帰りの学生たちで
視野が賑やかになる
それまでは私だけの空間

だが今日は
いつもの時間になっても
学習室に学生が入ってこない
もう少し閲覧しようと
学習室から出ると
書架を眺めた

さっきまで
数人はいたはずなのに
がらんと静まり返っていた

そんな中
私の前をあなたは通り過ぎた
たった1冊の本を
大事そうに抱え
更に奥の部屋へ向かって行く

どこか緊張した表情をしていたが
その口元には微かな笑みを感じた

そこは個人部屋と呼ばれる場所
一般利用者が立ち入る機会はまず無い
関係者か何かだろうと思った

気付くと閉館間際
慌てて数冊の本を書架に戻し
受付の女性に一礼した

先ほどの個人部屋の男性は
まだ出てきてないようだった
少し気にはなったが
いつの間にか
降り出していた雨に濡れないよう
持ってきたレインコートを羽織り
新調したばかりの傘を広げた
傘の裏面には
空のプリントが施してある

いつまでも
さっきの人のあの表情が
ずっと脳裏に焼きついていた

数日後
また雨が降っていた
もしかしたら逢える気がして
仕事帰りに図書館へ寄った

だが足を踏み入れた瞬間
いつもの雨の図書館とは違い
不穏な空気を感じた

全体を見渡すと
司書の女性が奥の部屋の前で
険しい顔をした男性二人と
何やら話し込んでいるのが見えた

あの部屋にいた人は
もう来ないのだろうか?
皮っぽい表紙の本は
もう読み終えたのだろうか?

あの日のことを思い出していた

閉館までまだ時間はあったが
今日は長居はせず
帰ることにした

雨は激しさを増していた
図書館の中まで
雨音が響き渡る
そんな中を突き抜けるかのように
ヒソヒソと声が聴こえてきた

あの部屋に入った人が
消息を絶ったらしい
貴重な本もなくなったらしいよ

私には誰のことか見当がついた
ここには曰く付きの本があると
噂でも聞いていた

足早に外に出て傘を開いた
そして
その腕を天に向かって伸ばしてみる
見上げた先には
半径60センチの青空が広がっていた

強張る表情の中
一瞬だけ見せたあの人の笑みを忘れない

もう雨の日に
図書館へ行くことはないだろう

作/lave  No.24  2023.6.17









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