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再会

年末の夕時
昨日からの寒波で
私の手も体も
街もすっかり冷え切っていた

「何かお探しですか?」
ふいに後ろから声を掛けられた

「あっ、はい…  厚手のアウターを」
そう答えながらふり返ると
「えっ?!」
「どうして?」
あなたが、そこにいた

「やっぱり!後ろ姿見えたから」
「俺、先月からここの店長」
そう言いながら笑った

何ひとつ変わってない
大きな瞳が瞬時に消えてしまう
そんな、笑いかた
私の大好きだった笑いかた
ひとつずつ記憶が蘇る

聞けば最近、婚約したらしい
私も単身赴任中だが
嫁いだばかりだった

「今日は、もう仕事終わり」
ただの会話
ただの食事会

「おっと!」
よろける私の体をささえてくれた

「相変わらず、冷たいね〜」
そう、ただの手つなぎ…

これは偶然なだけ
故意じゃない
たぶん…

久しぶりの再会に時間を忘れた
こんなにそばにいるのに
何もできない
何もしてこない

これは、友情?
それとも、自制心?

夜明けの窓ガラスを
静かに露が包んでいた


作/lave   No.39  2024.1.10









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