博士とスラムの角っこのカレー

もう見れない夢がある。

僕は見た夢を覚えてるタイプで、なかでも特別面白かった夢はすぐにメモに残してきた。
小学生の高学年くらいから続けている癖だ。

夢に関してはもう1つ特技?があって、寝る前にその夢の事を考えながら寝ると前回の続きから見れることがある。さながらアニメや小説の続きのように。
これにはおそらく決まりがあって、完結した夢はもう見れないし過去にもう観た場面を繰り返し見ることも出来ない。

例を挙げると…
赤いエネルギー体と青いエネルギー体、2体だけが生き残っている惑星が滅んでいく夢があって最後にはなんやかんやあって星が滅んでしまうんだけどそれ以降その星も赤と青のエネルギーも一切夢に出てこなくなった。

この法則に気づいてから僕は夢をメモに残し始めた気がする。夢の中のキャラクターも確かにそこに生きていたから、忘れてしまうのはなんかもったいない気がするのだ。

つまりはどれだけ焦がれてももう二度と見ることの出来ない夢がある。


タイトル回収。
僕が小さい頃に見てた夢の話。期間で言うと小学生の3-4年くらい
舞台は日本じゃないどこか。入り組んだスラムの路地裏と海以外は見た記憶が無い。GetBackersとかドロヘドロみたいなのを想像してもらえるとそう遠くない気がする。
夢の中の僕は9-10歳くらいの少年で短パンにTシャツ。寒かった記憶は無いのでたぶんこれが最適だったんだろう。住んでる家は特に無く、両親に会ったこともない。
そこで僕は13-14歳くらいの女の子が1人で住んでる廃墟に毎日のように通っていた。僕は彼女を博士と呼んでいて、彼女は僕を助手と呼んでいた。

特に大それた実験をしていた訳では無い。路地裏で拾った謎の機械を博士がガチャガチャやるのを見てるだけ。たまに作ってくれたゲームで一緒に遊んだり。
僕は博士が大好きだった。あとスラムのかどっこにあった謎のカレー屋さんも大好きだった。お金を払った記憶は無い。博士が払ってくれてたのかタダだったのかも分からない。そもそも店の名前も覚えてない。もともと無かったのかもしれない。
お気に入りの夢だった。最初に見ようと思って続きを見た夢な気もする。ずっとそばにあるものだと思ってたしサザエさんやドラえもんみたいに少しずつ変わりながらずっと続いていくと思ってた。

ある日いつものように博士に会うと、「助手にはもう会えない」と言われた。理由は分からなかったし聞かなかったけどたぶんホントなんだなと思った。普段通りにしないといけない気がしたのでその日もいっぱい遊んで、カレーをたべてぼろぼろのベッドでいっしょに寝た。

よくわかんない謎のコンピューターが部屋でずっと動いてて、そのまま気付いたら現実の朝だった。
あの夢だけはほかの続きものの夢とは明確に違って、僕が作った夢じゃない感じだけがずっとしている。カレーの味は不思議と思い出せない。美味しかった気もするし僕には辛過ぎた気もする。

見てきた夢のメモを見返す度、今でも少し切なくなるけど、あのままあのスラム街に逃げ込むだけの人生も良くなかった気がするのでこれはこれでいいのかもしれない。生きてればいつかまた夜に会える気もするし、会えないかもしれない。その時は今までにあった色んな夢と現実の話がしたい。

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