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「声」を頭に叩き込むのは難しい

 多分ですが、世の文字オコシストが最も好きな案件は「話者1人のセミナー・講演」だと思います。
 声の聞き分けをしなくていいというのは、何しろ楽ちん。音源がそれ用にきちんと撮影・録音されたビデオ、Web番組なんかだと最高です。
 もっとも話の内容と話者の力量でも大分差はありますし、ただ話をするだけの講演と、ふんだんに資料を用いてスライド投影(**下記注)も入るようなセミナーでも差はありますが、フォーマットとしては、これより上は多分ないでしょう。

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Zoomの場合、ここが「画面共有」になりますが、正直Zoomというもの自体の音源クオリティーがまだまだだなあと思うことが多いので、「1人の人がしゃべっている現場で撮(録)っている」を基本と考えてください。

そしてその次が、聞き手インタビュアー話し手インタビュイーの1対1のインタビュー。
 これも男女1人ずつだったりすると、声の聞き分けが非常にしやすくなるので、言うことありません。

 同性同士の場合、そっくりというわけでなくても、こんがらがることはよくあるので(ラフな雑談系の場合、話の内容での判断も難しい……)、極端に声の高さに差があるか、片方が方言など(イントネーション程度が望ましい)特徴があれば、なお安心です。

 例えば『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)を隣室で音だけ聞いていても、マツコさんと村上さんの聞き分けは、お二人を知らない方でも容易でしょう。あんなイメージです。

 なお、ずっと1人だけの語りを聞いていると、変化に乏しくて眠くなるという方には、1対1のインタビューや対談の方が向くかもしれません。

 といっても、3人以上の話者でも、人数がせいぜい4、5人(2対3とか1対4とか)なら、1対1の応用ぐらいで対応できることもあります。
 10人ぐらいの話し合いブレストで、話者の特定が難しい――というより、どういう方が何人で話しているのかさえ情報をいただけない場合もありますが、心ある(というか想像力が機能している)方なら、大抵「発言者が替わった時点で改行してくれれぱ問題なし」と緩めに設定してくださいます。

 そんな音源なのに「1人1人厳密に聞き分けて」と言われた場合、大体「その場にいらした方がまとめられた方が安全だと思います(意味・テメエでやれ)」とお断りしています。また、そういう方に限って、とんでもない低価格で提案してくるものですから、文字起こしという案件をいかになめているかがうかがわれます。そこで再び「そんなに簡単だと思うならテメエでやんな」となるわけです。

 話は変わりますが、学校や職場で一定時間一緒に過ごしたり、会話したりという経験のある人の声は、不思議なほど聞き分けできますよね。
 私も議会事務局にいた頃は、40人程度の議員さんの声を意外と把握できていましたが、それはひとえに顔やパーソナリティーとの一致も込みの話で、人の声をその場だけで完全に・確実に聞き分けるのは、かなり困難です。

 例えば1時間の音源はなら、休憩を入れて4~6時間で起こすことは可能ですが、聞き手が話し手に「〇〇さんはその辺いかがですか?」と質問を振ったり、何となく聞いているうちに、小さな口癖が見つかったり、明らかに質問に答える口調だと特定できる、という程度の要素を補完して、何とかそれっぽく作業をしているだけで、単純に「声」だけで聞き分けるのは、ほぼ無理といっても過言ではないかもしれません。

 現実には、例えば文字起こし用のプレーヤーで音源を起こしつつ、ほかのプレーヤーでも人を特定できる箇所を聞いてすり合わせる、みたいな感じになりますが、とても効率的とは言い難いし、何より「んな面倒なことやりたくないわ」が本音です。

 声優さんの話になりますが(声ヲタなので)。
 声が特徴的で、初聞きでも一発で覚えられるみたいなタイプの声優さんもたまにいらっしゃいます。
 今思いついた方だと、さまざまなナレーションでおなじみの立木たちき文彦ふみひこさんなどがそうでしょうか。
 最近はテレビドラマの俳優としても大人気の津田つだ健次郎けんじろうさんも、かなり特徴のある声ですが、ラジオなどで自然体で話されているのを聞くと、結構「〇〇さん(他の声優さんの名前)と声似ているなあ…」と思うことがありますので、演技込みでの個性ということなんでしょうね、当たり前の話ですが。

 ところで、アニメや外国ドラマの吹き替えを見ていて、「初めて聞く声だ。新人?」と純粋に思うことは少ない気がします。
 というのも、聞き慣れない声だとしても、「あの人かな?」と仮定して、それが正解だった場合、こういう演技は新鮮だと感心したり、向いてないんじゃないかなと思ったり、全く別の有名声優さんで、意外性にびっくりしたりということが多いからです。

 全く存じないお名前のこともあり、調べて新人さんだったりすると、「〇〇さんに声の似ている声優さん」として記憶しますが、面白いもので、個性が微妙に違うので、その後の聞き分けは意外とできたりします。

 私が人並外れて耳がいいわけでもないから、というのはさておき、地声でも特徴のある方が多いプロの声優さんだってそんな感じですから、多分その仕事を出したら、もう二度と「お耳にかかる」ことのない方の声の聞き分けは難しいに決まっていると思います。

 このあたりを文字起こし発注の方にもう少し周知いただいて、最低限「出席者は男性2人、女性3人」とか「最初に話し出す方がAさんで、6人いるうち主に話すのは3人」程度の補完情報はフツーにくださいなという話です。 NDAは必要ならば結んだらいいでしょうが、内容を口外するなとかいう前に、「やってくれて当たり前(**下記注)」のことが理解されていない気がします。

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開き直ってデカイ態度に出ているわけではなくて、発注者の義務ぐらいに思っていただかないと!と個人的には思います。

少なくとも
〇レコーダー作動してれば絶対録音できてる。
〇違う人がしゃべってんだから、聞き分けなんて簡単
〇Zoomはマイク使ってんだからちゃんと聞こえんだろ?

この三つの認識は ↑ できれば捨てていただきたいなと。

#私の仕事 #声優 #文字起こし #音源 #人の声 #反訳
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