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【映画】夜明けのすべて【まだまだ本編3】

#ネタバレ

映画と、同名の原作小説についてのネタバレをがっつり含みます。
すでに映画や小説に触れた人や触れる予定のない人に感想をまくし立てて話すかのように、とりとめなく書き連ねていきます。

中学生2人が撮り続けている、会社のドキュメンタリーで、来年の目標を答えるシーン。
住川さんの「業務の標準化。いつ誰かがいなくなってもいいように」という言葉。社長の弟さんのことが頭をよぎる。

映画のパンフレットには登場人物一人ひとりの詳細な設定が書かれている(映画を観終わるまで読むのをなんとか我慢しました)。
住川さんの設定には「社長の弟さんが亡くなった直後、悲しみに暮れる社長の代わりに会社を支えた」とあった。このことを知ると「いつ誰かがいなくなっても」という言葉の重さが増す。

パンフレットに書かれた設定を読むと、パニック障害やPMSだけでなく、他の登場人物もみな何かを抱えて生きていることがうかがえる。きっと誰でもそうなのだろうけど。
菜かでも気になったのは、ドキュメンタリーを撮っている女子中学生の柳澤さん。セーラー服のスカートの下にジャージをはいている。単に寒いのか、スカートに抵抗があるのか、はたまた別の理由か。気になってしまう。

ヨガの後に苛立ちをあらわにしてしまう藤沢さんのシーンでは、原作に少し足されたセリフがある。
誕生日メッセージへの返信についての友人の言葉に対してとげのある言葉を放ったあと、我に返って「はっ……ごめん、ごめんごめん…」と自分の言動を悔いる藤沢さん。
細かいところだけど原作にはなかったもので、症状に苦しむ様子がいっそうリアルに伝わってきた。

その足で会社に出向いて洗車を始める藤沢さんと、見つけて声をかける山添くん。
「なんかあったんですね」
「ちょっと…イライラしちゃって…」
予告編で見たときは素晴らしいシーンだと思ったけど、夜明けのすべてあるあるなのか、予告編で切り抜かれてすごく映えているシーンが、本編で通しの物語の中の一コマとして見ると、日常的なシーンに落ち着いているという。
このシーンに関しては、前述の藤沢さんの言葉に対して
「それは…ヤバいですね」
「だよねぇ…」
と言いながら二人で洗車をする。
しかも山添くんが窓を洗うスポンジが「キュゥゥゥ」と大きめの音を立てる(偶然だそう)。
がっつり感動するシーンにはせず、あくまで日常の一コマになっていたのもよかった。

そのまま社内で机に向かう山添くんと、隣で友人への謝罪メールを打つ藤沢さん。
「パニック障害って休みの日になるとやる気出るの?」
「藤沢さん、PMSだからって何を言ってもいいわけじゃないですよ」
「ちゃんと"言ってもいい"って判断してから言ってる」
原作のこの会話を読んだときには、二人とも真顔で淡々と話しているのかと思った。映画では山添くんは笑いながら突っ込んで、藤沢さんもニコニコしながら話している。二人の物理的な距離も近くて恋愛っぽい雰囲気が出てしまうのではと思ったが、あの雰囲気はむしろ、あれだ。
北斗氏、演技じゃなく素で笑ってなかった?萌音氏の楽しそうな返しも、演技というよりオフのときの二人のテンションのように話していたのが、そのまま映画のワンシーンになったかのようだった。

三宅監督や出演者さんのいろんなインタビューを読んだけど、夜明けのすべての現場ではとにかくたくさんの対話、会話があって、原作の雰囲気や映画の雰囲気が少しずつ大切に作り出されてきたことが語られていた。その象徴的なシーンだったと思う。

映画の後半では、プラネタリウムの解説の原稿作成が進んでいく。プラネタリウムは原作にはない要素で、これを加えることで何を描こうとしたのかと思いながら観た。

倉庫から探し出された、社長の弟さんのプラネタリウムの解説がとてもよかった。

太陽は沈みません。動いているのは地球の方。
孤独という意味のアルファルドも、誰かに頼りにされていたと知ったら嬉しくなるだろう。
北極星はいつか別の星に代わる。この世には、変わらないものなんてないのかも。

星を擬人化したり、人生観とつなげたり、こんな解説を聞きながらプラネタリウムを眺めてみたいと思った。
同時に、自死してしまった弟さんが、夜空の星の支えを得てなんとか生きようとしていた心情も思い浮かび、胸が苦しくなった。

同時に、初めは弟さんの声で語られていた解説が、途中から山添くんや藤沢さんの声で読み上げられるように。二人が弟さんの思いを読み解こうとしている様子が伝わってきた。
さらに、弟さんが遺した思いが後輩たちによって、再びプラネタリウムに映し出されようとしている…!と思った。

そして話題のシーン、ポテチ一気食いへと続く…!


またまた続きます。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
では、また。