三橋鷹女3

夏痩せて嫌いなものは嫌いなり

 だれか、夏やせした鷹女を見て、もっと栄養のあるものを食べなさいよとでも忠告したのだろう。鷹女は、ふんぞり返って「そんなこと言ったって、嫌いなものは嫌いなのよ」と宣ったことだろう。そんな光景が目に浮かぶ。でもこの子どもみたいな鷹女の、素直な表現が私は好きだ。

初嵐して人の機嫌は取れませぬ

立秋後、最初に吹くかなり強い風のことを初嵐という。この風が吹くと、急に秋らしくなり、台風の先駆けとなる。その初嵐の吹くころは、人の機嫌を取ることは容易ではないと唱っている。だが、私には疑問が湧く。鷹女のように強気な性格で、明快に物事を言う人が、いついかなる時でも他人の機嫌をとったりはしないだろうと思うのだ。
なぜ初嵐の頃なのか、他人の機嫌をとることなどありえないような人間が、なぜこんな句を詠んだのか、私には謎だ。


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