見出し画像

ガラブロ/5枚の写真から語る『ガラスブロック』都市のラス・メニーナス【第21回】

2020年から「路上観察の現在地を探る」として、いろいろな方をお招きして、その方が見ているものの魅力、また、どうしてそういう視点に至ったかなどを、片手袋研究家の石井公二編集者・都市鑑賞者の磯部祥行がお聞きしてきたトークイベント『都市のラス・メニーナス』主としてYouTubeで配信してきた。「ラス・メニーナス」とは、17世紀にベラスケスによって描かれた、見る人によってさまざまな解釈を生じさせる絵画。街も、人によって、まったく異なる見え方をしているはずだ。

現在、平井オープンボックスを会場として、毎月1回開催中。その第21回が2023年10月22日(日)に「GLASS BLOCK MANIAC」ことガラブロさんをお招きして開催された。

中央がガラブロさん。左は磯部祥行、右は石井公二(写真=丸田祥三さん)

建築を鑑賞する人は多いし、建築史は学問的にも一分野だ。そのディテールを愛でている人も多い。でも、ガラスブロックを探して歩いている人は、ガラブロさんだけではなかろうか。

ガラブロさんは、元々は『VOW!』の大ファンだった。そこから、街を歩きながら見て回ることが好きになり、やがてガラスブロックにたどりつく。世代的には『VOW!」では全然ないものの、その流れを知っていて、それでいて鑑賞や発信の仕方は現代的だ。

さて、さっそく1枚目。題して「ガラスブロックと光」。ガラスブロックは、光を通すが視線は通さない。もしここが板ガラスであれば光は「面」で入ってくるが、ガラス「ブロック」なので境目で遮られ、「線」として差し込む。

現在、ガラスブロックを製造しているのはただ1社。型板ガラスのように、パターンには名称があり、このパターンは「みやび」という。

場所は、このレポートを読んでくださる方にはピンと来るかもしれない。そう、『マニアフェスタ』の会場でもあった「3331 Arts Chiyoda」だ。

2枚目も「ガラスブロックと光」。現在のカタログには掲載がないので「たまゆら」の亜種ではないかと推測。1個1個のパターンがわずかに違うように見えるが、それは目の錯覚というか、光と鑑賞者の位置関係で見え方が変わるのだ。それこそガラスブロックのよさだ。ガラブロさんは、6月の暑い日にこれに出会ったとき、水面に見えてきた、という。(後日、内海慶一さんにより「石目」というパターンだと判明した)

3枚目は「珍しいパターンを見つけたらラッキー」。石井さんから「これを『珍しい』とわかることが、すごい」。たしかに、たくさん見て、それが自分の頭の中で整理されていないとそうは思わないはずだ。

名称がわからないパターンもある。その場合、自分で名前を考えてみる。「亀甲」と自分で呼んでいたところ、インスタで「田毎(たごと)」という型板ガラスと同じパターンではないかと教えていただいた。

また、劣化した目地も鑑賞・研究の対象だ。

4枚目は「ガラスブロックは懐かしさを喚起する」。ガラスブロックは「病院にあるものですよね」と言われることが多いという。病院を連想すれば、幼きころ、風邪を引いて病院に行って待っていた光景を思い出すことも多いだろう。

ガラスブロックの内部は真空に近いので、遮音効果が高いという。そこで、歯医者ではとりわけ多く使われるようだ。

ガラスブロックは、昭和40年代によく使われたものだが、現代でも使われる。銀座のエルメスの外壁もイタリア製の特別なガラスブロックがあしらわれている。

第19回で『遊技場的建築と時代』のお話をうかがった山下メロさんから、「平成レトロのトレンディードラマでは室内にガラスブロックがあった。『東京ラブストーリー』のカンチの部屋がそうだった。『愛していると言ってくれ』にも出てくる」との情報も上がった。

5枚目は「キラリと光る一工夫」。3種類のガラスブロックがある。場所は公園の公共トイレ。そこに最初から3種類を使っていることは考えづらく、おそらく破損で交換されたものだろう。目地からして、上段の三つ+2・3段目右の一つ+下段の右二つが当初のもの、寒天のようなものがその次、下段の左から二つ目はさらにそれが破損した後にはめ込まれたものか。

会場には、実際にガラスブロックをお持ちいただいた。持ち上げてみると、意外に軽い。これは、建築解体現場からご家族の方がもらってきてくださったのだそうだ。こうして単体で見てみると、軽さや微妙な不透明な感じ、表面がツルツルであることなどがよくわかる。トーク終了後、ガラスブロックのカタログや建築の専門書なども見せていただいた。配信でももちろんお楽しみいただけるけれども、現地観覧はそのような嬉しいこともある。ご都合つきましたら現地観覧にてぜひ!

* * *

アーカイブはこちらから

YouTubeにて公開しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?