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岡元大『5枚の写真から語る江戸川区のガードパイプ』/都市のラス・メニーナス【第24回】

2020年から「路上観察の現在地を探る」として、いろいろな方をお招きして、その方が見ているものの魅力、また、どうしてそういう視点に至ったかなどを、片手袋研究家の石井公二編集者・都市鑑賞者の磯部祥行がお聞きしてきたトークイベント『都市のラス・メニーナス』主としてYouTubeで配信してきた。「ラス・メニーナス」とは、17世紀にベラスケスによって描かれた、見る人によってさまざまな解釈を生じさせる絵画。街も、人によって、まったく異なる見え方をしているはずだ。

現在、平井オープンボックスを会場として、毎月1回開催中。その第24回が2024年3月10日(日)に、昨秋『まちかどガードパイプ図鑑』を創元社から上梓した岡元大さんをお招きして開催された。

中央岡元さん。左は磯部祥行、右は石井公二(写真=丸田祥三さん)


『まちかどガードパイプ図鑑』

岡元さんの著書はこんなパッケージ。開始早々、石井さんが問いかけた。鑑賞者にとっての「果てしなくないですか」。例えばある建築家が好きな場合、その人の作品数には限りがある。一方、石井さんの片手袋のように、常に生まれ続ける事象の観察には終わりがない。このガードパイプは、後者だ。

そんな前提のあと、さっそく岡元さんにガードパイプの概念をうかがう。「本来のガードパイプは、横断防止柵のうち、水平に3本のパイプを渡してあるもの。でも『横断防止柵』ではピンとこないので、ガードパイプと呼ぶことにしました」

今回はイベントを開催している「平井オープンボックス」のある江戸川区のガードパイプがテーマだ。いろいろな種類があるというのはもちろん、実は江戸川区は「標準構造図集」をWEBサイトで公開しており、「江戸川型ガードパイプ」4種類を規定しており、それがしっかりと区道に設置されているのが江戸川区の特徴。このあたりは区によってまちまちとのこと。

1枚目

さっそく1枚目。2色塗り分けなことがまず珍しい。描かれているのは鳥だが、これは江戸川区章。「これは江戸川型のB-1タイプのハト型です」。サイズは5サイズある。「車道から見て区章が正しい向きになるようになっています」。ここまで精巧に作られているのも珍しく、製造しているのは1社とのこと。

2枚目

2枚目は江戸川区型のB-1タイプの川型。川をモチーフにするのはよくあり、隣の葛飾区にも「川」モチーフはある。漢字の「川」なのだろうが、そこだけ水色に塗られているので意味合いもわかりやすい。江戸川区を南北に流れる中川、新中川、江戸川なのかもしれない。

「なぜか、群馬県前橋市にもあったんです」と岡元さんはいう。1色だったが、江戸川区と同じ川が流れているわけではない。そういう「越境ガードパイプ」とでもいうべきものは、時々あるらしい。

それぞれ「B-2」タイプがあるが、同じものの色違い(茶色)として規定されているものだ。

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ここで、石井が路上観察について聞いてみた。「元々、団地や給水塔とかが好きでした。廃道や廃線も好きです。自転車を買った時に、目的地として設定したんです」「また、『集める』のも好きでした。幼少期の体験としてはそれです。コンプリートする気はないけれど、ビックリマンを自分で買って自分で開けたい、みたいな。回答は知りたくない。自分で買って、食べる。『出会いたい』。だからガードパイプも、事前にあるかどうかは調べない」。

本格的に集めようと思ったきっかけは、北区の「北」モチーフのガードパイプを見た瞬間。「そのときはヒザから崩れ落ちそうになりましたね」。マンホールなども撮っているが、ガードパイプのように集めて分類しているわけではなく、いわば「撮っているだけ」。また、写真としては「写っていればいい」。照れもあるし、端が欠けていたりする。本を作るにあたって、ちゃんと撮るようになったという。「もう、適当に撮るというスタンスに戻れなくなりました」。

3枚目

さて3枚目。これは「Aタイプ」。素材が異なる、区章だが、作りが違う。パイプではなく板であり、区章のシャープさも異なる。支柱の意匠や高さも異なる。

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ここで石井によるミニコーナー、「ガードパイプと片手袋」。片手袋はとにかくガードパイプと相性がいい。人が拾ってそこに置く「介入型」として共存する。その手袋の置き方が、上に載せるもの、ストッパー(支柱との接続部)に載せるもの、縛るもの、袋に入れてぶら下げるもの、そして意匠を利用したもの都道のガードパイプなどがある。イチョウをモチーフにした都道のガードパイプの窪みはよく使われる。

岡元さん「ガードパイプに片手袋が載っているのはよく見るので、写真を探したんですよ。でも、写真が全然ない。よく考えたら、撮る時は片手袋が載っていないガードパイプを選んでいました」。仮に撮りたいものに載っていたらどかしてしまう。それはそうだ。

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4枚目

「江戸川型B-2タイプの川型」。前橋にあったのもこのタイプ、ただし色は違う。「設置されたばかりで新しいので撮りました」。

5枚目

「江戸川区はA型、B-1・B-2各2種で合計5種類あると言いましたが、そこにあてはまらないものです」。篠崎公園にあるものだ。ほかにもいろいろさがしたが、まだ見つけられていない。

告知画像

ここで、イベントの告知画像を見てみよう。3種類が並んでいる。とても珍しい、おそらくここにしかない光景だ。

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江戸川区だけで1時間話せるのがガードパイプ。『街角図鑑』でも採り上げているけれど、そのうちの1項目だけで1冊の本ができている。絶対に買って読んでほしい1冊だ。

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