徒花

人生に無駄は無い

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反転する運命

周りの音が消えるのと同時に、彼は立ち止まった。突然、電話が鳴った。受話器を取ると、見知らぬ声が聞こえた。「助けてくれ。私たちはここに閉じ込められている。」声は途切れ途切れだった。 彼は驚きと共に急いでその場所に向かう決心をした。車を走らせ、指示された場所に到着したが、そこには誰もいなかった。代わりに、彼は古びた日記を見つけた。 日記を開くと、中には様々な恐怖のエピソードが綴られていた。彼はその日記を読み進めるうちに、自分自身がその恐怖の中心にいることに気づいた。日記の内容

    • 短編3

      佐藤浩二は、都会でのストレスフルな生活から逃れようと、妻の美咲と共に田舎の古い館を借りて、しばらくの間、静養することにした。館は、山間の静かな村の外れにあり、周囲は鬱蒼とした森に囲まれていた。 初めて館を訪れたとき、二人はその壮大な佇まいに驚かされた。だが、館の内部はひどく暗く、静寂が異様なほど深かった。家具や装飾品は古く、どれも埃をかぶっていたが、それがこの場所に独特の趣を与えていた。 最初の数日は穏やかに過ぎていった。浩二は久しぶりの休息に心から安堵していたが、美咲は

      • 短編2

        古びた時計の針が静かに午前零時を指した。窓の外には、闇が一面に広がり、星の光も届かないほどに黒く深い夜が支配していた。部屋の中は薄暗く、灯りは机の上に置かれた一本の蝋燭だけだった。その揺れる炎が、小さな影を壁に映し出している。 老人は静かに椅子に座り、手元の古い日記を見つめていた。その日記は、ページが黄色く変色し、端が擦り切れていたが、彼にとっては何よりも大切な宝物だった。 彼の指先が震えながら、日記のページをそっとめくる。そこには、彼が若い頃に綴った思い出が詰まっていた

        • 短編1

          桜が咲き誇る春の日、村の外れにある古びた神社で、若い女性が一人、石段に腰掛けていた。彼女の名前は美咲。彼女は毎年この時期に、ここにやってくることが習慣だった。桜の花が咲くと、彼女は必ずこの神社を訪れ、ある祈りを捧げるのだ。 「今年こそは、願いが叶いますように。」美咲は小さく呟きながら、手に持った紙に願い事を書いた。その紙を桜の樹の根元に置き、静かに祈りを捧げた。彼女の願いは、長い間病気で苦しんでいる妹の回復だった。 桜の花が散り始めると、神社は再び静けさを取り戻し、美咲は

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