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【サイエンスアゴラ 登壇レポート】『生理用品設置をきっかけとするコミュニケーションデザイン』

わたしの暮らし研究所は、2022年11月5(土) - 6日(日)に科学技術振興機構(JST)が主催するオープンフォーラム「サイエンスアゴラ2022」のステージ企画に登壇し、パネルディスカッションを行うほか、イベント参加者とのディスカッション形式のワークショップを行いました。

サイエンスアゴラとは

あらゆる立場の方々が年齢、国境、学問分野などを超えて自由に参加し、垣根なく対話するオープンフォーラム

本年度のサイエンスアゴラのテーマは『まぜて、こえて、つくりだそう』。
そこで、わたしたちのステージ企画は「生理用品設置をきっかけとするコミュニケーションデザイン」と題して、その取り組みの関わり方を『まぜて、こえて、つくりだす』ことについて語り合いました。

イベント開催レポート

これまでの実証実験や活動のご報告や、この活動の中で、わたしの暮らし研究所と関わってくださっている方々にご登壇いただきました。

みんなで話ができること、その仕掛け作りにこだわる代表沢田から、目がついたキュートな生理用品ケース「せりぽん」のご紹介からスタート。

LAQDAの研究調査では、生理の問題を当事者だけの問題とした企業については、生理用品が設置されることはなく、生理用品の設置を決めた企業には共通点があったことをお話しました。それは、生理用品の設置の問題が、「生理がある人だけの問題ではなく、会社全体、もしくはみんなの問題」として、対話が発生したことでした。

これらのことから、LAQDAでは、この問題が生理がある人だけで解決すべきものではないこと、ジェンダー関係なく空間をともにする人を巻き込んで、みんなで一緒に考えていくことが大切だと考えていることをお話しました。

パネルディスカッション①

生理用品の設置は、ビルの入居者が自由にできるものではなく、ビル事業者との対話が必要になります。今回のパネルディスカッションは、ビルを管理する東京建物さまと、その1テナントであるビットキー さまとの貴重なセッションです。

▼登壇者

おふたりには2021年にスマホで開錠できる以下ケースでの実証実験でご協力頂きました。最初にLAQDAと繋がったのは、ビットキーの北島さんです。

実は、一般的には知られていないことも多いですが、トイレはビルの共有部。生理用品の設置を行うには、ビル事業者への許可取りが必要となります。

(撮影:加藤康)

それを踏まえ、以下をお伺いしました。

  • 北島さまはどう社内で話をしていったのか。

  • ビル管理側である東京建物の猪俣さまにどうお話されたのか。

  • そして、どのように両社は、生理用品の実証実験の実施に至ったのか。

写真左:北島さま

北島さまは、最初に生理用品設置の話を聞いて、重要なテーマだと感じたものの、自社内での合意形成を図ることの優先順位を上げようとすると、実施までのスピード感が落ちてしまうと考えたとのことです。

そのため、自社と関連のある入居しているビルの管理を行なっている東京建物の猪俣さまに相談をされたそうです。猪俣さまならきっと関心があるのではという勘所があり、お話したところ、猪俣さまはすぐに興味を示して下さり、東京建物本社内での実証実験に至ったそうです。その後、ビットキーさんでも決済が通り、実施が実現。両社で連携して実施されているのは素晴らしいと思いました。

個人の意見だけでは組織を動かすのは難しいもの。「テナントさんが実施したいと言っている」「ビル事業者さんがやりたいと言っている」と、企業同士の関係性を生かしながら、お互いの社内を動かしていったとのことでした。

パネルディスカッション②

2つ目のパネルディスカッションでは、生理用品を使わない立場であるのに、生理用品設置に携わった2人の方にご登壇頂きました。

▼登壇者

おふたりには以下をお伺いしました。

  • 生理の経験がない立場から、どのように課題を認識し取り組んだのか。

  • 生理ある人とどう対話し、生理用品の設置に取り組んだのか。

写真左:山崎さま

群馬で板金を中心としたものづくりを行う山崎製作所の代表取締役山崎さまは、当初群馬県からの依頼で、生理用品のディスペンサー開発に着手。山崎さまは、生理用品ディスペンサー制作の依頼がきた際、「これは確かに困っている人がいるに違いない」と、抵抗感なくスタートされたそう。

実際の開発には実際に生理がある社員の意見を聞くだけでなく、実際にデザインにも着手してもらうなど、利用者の視点や意見の取りこぼしがないことを強く意識しながら進めていったそうです。

写真右:猪俣さま

猪俣さまは、生理用品のトイレ設置の話をまずはパートナーにされたそうです。パートナーから「それはとても必要なこと」と言われたことから、問題の重要性を感じ、社内では、女性(解剖学的*1)も巻き込んだチームで取り組まれていることについてお話下さいました。

セッション後には、参加者の皆さまも交えたディスカッションを行い、まさに「まぜて、こえて、つくりだそう」を体現した企画となりました。
ご参加くださった皆さま、登壇やファシリテーションでご協力くださった皆さまに御礼を申し上げます。

イベント終了後に登壇者・関係者のみなさまと

主催・協力
主催:わたしの暮らし研究所株式会社
協力:東京建物株式会社、株式会社ビットキー、有限会社山崎製作所
取材・記事作成:NEWPEACE Inc. ワインエリカ様、Ai Tomita様

わたしの暮らし研究所では、令和4年度経済産業省フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金における補助事業者に採択され、2023年3月までに、各社と連携し、生理用品設置による実証実験・研究調査をまとめて発表する予定です。
また、経産省への調査結果の提出のほか、データから確認できる結果から従業員規模が一定数以上の企業についてはトイレへの生理用品設置を推奨する提言書を作成する予定です。
長期的なビジョンとしては、1社ごとに孤軍奮闘するのではなく、意思決定に至るスキームや生理用品の理想のディスペンサーを研究論文や記事として公開し、オープンソース化。世界中の人や企業が活用できるエコシステムの創出を目指しています。

✏️ 最後に…

生理の問題の解決には誰もが参加できます。昔駅のトイレにトイレットペーパーがなかったことを、今の若い世代が「えー!そんな時代があったの!?」と驚くように、2030年に初経を迎える人たちが「えー!昔って生理用品がトイレになかったの?」と言える社会をつくることを目指しましょう。実証実験へのご参加・提言するメッセージへの参加にお持ちくださる方はぜひご連絡ください。

わたしの暮らし研究所LAQDAプロジェクトへのご連絡は、こちらまでinfo★wk-k.com(★を@にしてご連絡ください!)

注釈
*1 解剖学的男性・女性(性別):生殖器、染色体などから区別され、役所に届け出ることで法律上「女性」か「男性」に割り当てられる性別。「生物学的性別」という表現をよく目にしますが、生物学的という言葉が「科学的に証明されている”真の”あるいは”本来の”性別」というような印象を与えてしまい、結果的にトランスジェンダーに対する差別に加担する恐れがあると考え、記事内では「解剖学的」という言葉を選択しています。

🤝 サポート
今回の記事は、わたしの暮らし研究所のビジョンに共鳴し、NEWPEACE DEIBチームにてライティング(ワイン エリカ)と、表現チェックを行いました(Ai Tomita)。

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