ゲージ理論
Maxwell方程式からゲージ理論に入るための話をめっちゃ省略して書こうと思う.多分初学者が見ても突飛で天下り的な話ばっかで意味わからんと思うけど,誰も見てないだろうしままええやろ…
ちなみに,以下では光速とDirac定数$${\hbar}$$と,あとついでに$${\mu_0}$$を1ととる単位系を選んでます.混乱しないように.
Euler-Lagrange方程式
解析力学を既に習った人は知ってるかもしれないけど,Lagrangianを指定して変分原理にしたがって運動方程式であるEuler-Lagrange方程式が導かれたんでした.その時はLagrangianには座標$${q(t)}$$と速度$${\dot{q}(t)}$$を変数として採用していたのだけれども,今回は場の理論として,つまり電磁場とか物質場を変数として定式化をしたいわけです.
そこで,Lagrangianは「一組の場$${\Psi^\ell(\mathbf{x},t)}$$と,その時間微分$${\dot{\Psi}^\ell(\mathbf{x},t)}$$を変数」とする汎関数$${L[\Psi(t),\dot{\Psi}(t)]}$$,という形式になります.
普通の解析力学ではLagrangianを速度$${\dot{q}}$$で微分することで運動量$${p}$$を
$$
p(t)=\frac{\partial L}{\partial \dot{q}}
$$
と定めたように,今回の形式においても共役場$${\Pi_\ell(\mathbf{x},t)}$$を,$${\dot{\Psi}}$$によるLagrangianの汎関数微分として定義しましょう.
$$
\Pi_\ell(\mathbf{x},t)\equiv \frac{\delta L[\Psi(t),\dot{\Psi}(t)]}{\delta\dot{\Psi}^\ell(\mathbf{x},t)}
$$
運動方程式を導きましょうか.作用として,いつも通り$${\Psi^\ell(x)}$$の全時空間に渡る汎関数を
$$
I[\Psi]\equiv \int^\infty_{-\infty} dt\, L[\Psi(t),\dot{\Psi}(t)]
$$
として定義しましょう.すると$${\Psi(x)}$$の任意の変分のもとで$${I[\Psi]}$$の変化は
$$
\delta I[\Psi]=\int^\infty_{-\infty}\int d^3x\left[ \frac{\delta L}{\delta \Psi^\ell(x)}\delta\Psi^\ell(x)+\frac{\delta L}{\delta\dot{\Psi}^\ell(x)}\delta \dot{\Psi}^\ell(x) \right]
$$
となります.いつも通り,$${\delta\Psi^\ell(x)}$$は$${t\to \pm \infty}$$でゼロになると仮定すれば第二項目で部分積分ができて
$$
\begin{array}{ll}
\delta I[\Psi]&=\int^\infty_{-\infty}\int d^3x\left[ \frac{\delta L}{\delta \Psi^\ell(x)}\delta\Psi^\ell(x)-\frac{d}{dt}\frac{\delta L}{\delta\dot{\Psi}^\ell(x)}\delta \Psi^\ell(x) \right] \\
&=\int^\infty_{-\infty}\int d^3x\left[ \frac{\delta L}{\delta \Psi^\ell(x)}-\frac{d}{dt}\frac{\delta L}{\delta\dot{\Psi}^\ell(x)} \right]\delta\Psi^\ell(x)
\end{array}
$$
見慣れた形になりました.任意の変分でこれがゼロになるのは,つまり運動方程式
$$
\dot{\Pi}_\ell(x)=\frac{\delta L[\Psi(t),\dot{\Psi}(t)]}{\delta \Psi^\ell(x)}
$$
を満たすときに限ってですね.
まぁここまでは今までと大体同じ感じなんですが,この形式ではまだLorentz変換に対して不変な理論を具体的に構成することができません.なぜか?作用が時間積分のみから構成されているからですね.
作用が時空間積分で構成されているためにはLagrangianが次のように何らかのスカラー関数の空間積分で構成されていればいいわけです.
$$
L[\Psi(t),\dot{\Psi}(t)]=\int d^3x \mathcal{L}\left(\Psi(\mathbf{x},t),\nabla\Psi(\mathbf{x},t),\dot{\Psi}(\mathbf{x},t)\right)
$$
これなら作用は
$$
I[\Psi]=\int d^4x \mathcal{L}\left(\Psi(x),\partial \Psi(x)/\partial x^\mu \right)
$$
という時空間積分で構成されて,$${\mathcal{L}}$$がLorentzスカラーなら明確にLorentz不変であることが保証されます!
このスカラー関数$${\mathcal{L}}$$は,「Lagrangian密度」として知られていて,現在の素粒子理論で使われている大抵のLagrangianはこの形です.二階微分を含むものは修正重力理論とかでしか見かけなかった気がする.知らんけど.
さて,この形式で$${\Psi^\ell(x)}$$を$${\delta \Psi^\ell(x)}$$だけ変化させてからまた空間座標で部分積分すれば,Lagrangian$${L}$$の変化は
$$
\begin{array}{lll}
\delta L&=\int d^3x \delta\mathcal{L} \\
&=\int d^3x\left[\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \Psi^\ell}\delta\Psi^\ell+\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\nabla\Psi^\ell)}\cdot\nabla\delta\Psi^\ell +\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot{\Psi}^\ell}\delta\dot{\Psi}^\ell \right] \\
&=\int d^3x\left[\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \Psi^\ell}-\nabla\cdot\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\nabla\Psi^\ell)} \right)\delta \Psi^\ell +\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot{\Psi}^\ell}\delta\dot{\Psi}^\ell \right]
\end{array} \\
$$
となりますね.つまり
$$
\begin{array}{ll}
\frac{\delta L}{\delta\Psi^\ell}=\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \Psi^\ell}-\nabla\cdot\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\nabla\Psi^\ell)} \\
\frac{\delta L}{\delta\dot{\Psi}^\ell}=\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot{\Psi}^\ell}
\end{array}
$$
が導けたので,結局場の運動方程式というのは
$$
\begin{array}{lll}
\frac{d}{dt}\frac{\delta L}{\delta \dot{\Psi}^\ell}=\frac{\delta L}{\delta \Psi^\ell} \\
\frac{d}{dt}\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot{\Psi}^\ell}=\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \Psi^\ell}-\nabla\cdot\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\nabla\Psi^\ell)} \\
\therefore \frac{\partial}{\partial x^\mu}\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial\Psi^\ell/\partial x^\mu)}=\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \Psi^\ell}
\end{array}
$$
だということになります.これが場の理論におけるEuler-Lagrange方程式です!Lagrangianを場で構成した場合,この方程式が運動方程式となっていればOKなわけです.
Maxwell方程式を再現するLagrangian
さて,Euler-Lagrange方程式の形が分かったので,Maxwellの運動方程式
$$
\partial_\mu F^{\mu\nu}=-j^\nu
$$
を再現するようなLagrangianを構成したいわけです.左辺の$${\partial_\mu}$$が共通しているので,次のような関係を満たすようにすれば良さそうですね.
$$
\begin{array}{ll}
\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial A_\mu/\partial x^\nu)}=\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial(\partial_\nu A_\mu)}=F^{\mu\nu} \\
\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial A_\mu(x)}=j^\mu
\end{array}
$$
これを満たすLagrangianはどのような形でしょうか?$${F^{\mu\nu}=\partial^\mu A^\nu-\partial^\nu A^\mu}$$であることを思い出せば,少し試行錯誤すれば簡単に見つかると思います.正解は次の形です.
$$
\mathcal{L}=-\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}+j^\mu A_\mu
$$
条件式の二つ目は明らかに満たせていることが分かるでしょう.一つ目は少し頑張って計算しなければいけませんが,まず第一項目が次の形であることに留意します.
$$
\begin{array}{llll}
-\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}&=-\frac{1}{4}(\partial_\mu A_\nu-\partial_\nu A_\mu)(\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu) \\
&=-\frac{1}{4}(\partial_\mu A_\nu \partial^\mu A^\nu-\partial_\mu A_\nu \partial^\nu A^\mu \\
&\quad \quad -\partial_\nu A_\mu \partial^\mu A^\nu+\partial_\nu A_\mu \partial^\nu A^\mu) \\
&=-\frac{1}{2}(\partial_\mu A_\nu \partial^\mu A^\nu-\partial_\mu A_\nu \partial^\nu A^\mu)
\end{array}
$$
すると,これを微分すると
$$
\begin{array}{lll}
\frac{\partial}{\partial(\partial_\rho A_\sigma)}[-\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}]&=-\frac{1}{2}\frac{\partial}{\partial(\partial_\rho A_\sigma)}(\partial_\mu A_\nu \partial^\mu A^\nu-\partial_\mu A_\nu \partial^\nu A^\mu) \\
&=-\frac{1}{2}(\delta^\rho_\mu\delta^\sigma_\nu \partial^\mu A^\nu+\partial_\mu A_\nu \eta^{\rho\mu}\eta^{\sigma\nu} \\
&\qquad -\delta^\rho_\mu\delta^\sigma_\nu \partial^\nu A^\mu-\partial_\mu A_\nu \eta^{\rho\nu}\eta^{\sigma\mu}) \\
&=-(\partial^\rho A^\sigma-\partial^\sigma A^\rho)=F^{\sigma\rho}
\end{array}
$$
これで条件式が満たされていることが分かりました.したがって,この$${\mathcal{L}}$$こそがMaxwell方程式を再現するゲージ場のLagrangianです.(ここまで真面目に一緒に計算してくれた人なら,「Lagrangianの全体にマイナスがついてても同じ結果じゃない?」と考えるかもしれません.しかし,これはHamiltonianをLegendre変換で得た時に,下に有界であるように要請すると符号が一意的に決まらざるを得ません.なぜなら無限大に負のエネルギーは物理的ではないからです.)
他の場の方程式を満たすLagrangian
ここでは例としてMaxwell方程式を満たすLagrangianを考えましたが,他の方程式についてもLagrangianを考えることができます.例えば,Klein-Gordon方程式
$$
(\Box-m^2)\phi=0
$$
を満たすLagrangianなども同様に構成することができます.詳細は省きますが,これは次のような形になります.
$$
\mathcal{L}=-\frac{1}{2}\partial_\mu \phi \partial^\mu \phi -\frac{m^2}{2}\phi^2
$$
まぁ正直ゲージ場の方程式をLagrangianから導けたならKlein-Gordon方程式を導くことは朝飯前だと思います.
終わり
今回はこんなところかな.かなり分かりづらい説明になってしまったかもしれないけど,まぁ場の理論ってのはこういうことが基礎になってきます.もっと分かりやすく書こうと思えば書けること沢山あるんだけども,正直言ってしまえば途中から文字打つのがめちゃくちゃ面倒になってきて「まぁこれくらいでええやろ」ってなってました.多分あんまり閲覧されることもないのでままええか…
質問はTwitterとかコメントとか,なんかそこらへんで.
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