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逆三角形の関係が守ったタイ東北部の養蚕農家のプライド

さて、先日異文化カルチャーを紹介する企画へ案内いただいた。
ありがたい話でお二人から異文化カルチャーといえばラオスのコージだろう!ということでお誘いいただきました。

おひとりはMakana さん
遅くなってしまいましたがバトンうけとりました💦

もうひとりはhikari さん
ツイッターでご確認いただいて、すでにバトンを受け取っていたため別の方にバトン回されたと思いますが、お誘いありがとうございました。

おそらくご案内いただいたご両人ともラオスの異文化を!と思い私を思い出してくれたのだと思います。

が、毎日ラオスで生活していてラオスの記事をアップしていると、「異」文化としてラオスの文化を紹介するのに違和感をおぼえてしまった。いや、正直に話すと、ラオスラオスで記事を書いてて、ラオスの記事を書くのに退屈を覚えてしまっただけかもしれない。この機会、せっかくなので久しぶりに違う地方の記事を書きたくなった天邪鬼な私をお許しください。

で、せっかくなので何かラオスでもない日本でもない私の馴染みの文化を紹介したいと思いをめぐらしているとタイの東北部(イサーン地方)を思い出した。

実はタイの東北部はラオ族が多く、タイ東北部とラオス南部は両方ともクメール王朝のあった地域で、文化圏はほとんど同じ。
なのでタイ東北弁とラオ語は言葉も似ているらしい。食べ物もよく似ていて、生唐辛子をいっぱい使うスタイルはこの辺り特有。タイ人でもイサーン料理といえば真っ赤で辛いという印象らしい(バンコク在住タイ人談)

さて、前置きが長くなってしまったけれど、今日はタイのシルクのお話。

私は以前、本当に着心地のいいシルクを求めてタイへ何度も訪れていた。
特にタイでシルクの生産が盛んな東北(イサーン)地方を中心に車で毎日数時間の移動をしながらあちこちの生産者をまわっていた。
これはそんな時に、養蚕農家から聞いた素敵な話。

東北のシルクは田舎臭いシルクだった

私が自信をもってお伝えする着心地のいいシルクというと、手引きの生繰り手織りのシルクということになる。
しかしこんなシルク今は世界でもほとんど(99%以上!?)つくられていない
生の状態を手で引くため、時間はかかるし、生産量が少ない。さらに糸にムラができる。そんな糸になるからだ。

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しかもそれを草木で染めて、手で織るのだから、機械にくらべて不均一で同じものができあがってこない。

私が訪れたタイ東北部の村のいくつかは昔からこのやり方でシルクを作ってきて今もそのやり方を守っている村。草木染の材料は庭になっている植物を利用してるし、家の軒には機織りがある。そしてもちろん自分たちで養蚕もしている。
訪れたときにおっかさんは自信の笑顔と共に私たちに案内してくれた。

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しかし、そんな村々も一時期シルクの生産に自信がなくなった時期があったそう。なぜかというと、タイが高度成長期に入り物が売れ始めると、大量生産ができる工業的で均一のとれた化学染料のはっきりした色合いの生地が求められ始めたからだ。
シルクも乾繭の機械引きで化学染料のものがきれいだからとそちらが重要視されるようになった。

そしてピンっと張った、ツルツルテカテカのものがシルクになっていった。

すると、機械を買うことの出来ない、手引きの手織りしかできない田舎の養蚕農家は次第に自信をなくしていった。

田舎臭いシルク

自分の作るシルクの良さを世間が認めてくれないとなると、いくら自分がいいと思っていても、自信がなくなっていく。

ぼこぼこしていて、不均一で、ハリのないシルク生地。
私たちのシルクなんて田舎のシルクだ。
次第にそう思うようになっていったそうだ。

そんな生地は信じられないことに、機械引きの機械織りの生地よりも安く販売されていたそうだ。時代が成長し物価があがるのに、効率の悪い手引きシルクは効率のいいシルクよりも安く取引されていた。
(もちろん私は効率が悪いから、希少だから高くていいとは思わない。しかしシルクの良さを知ると手引きのシルクにはその価値があると実感する)

多くの養蚕農家は工場へ出稼ぎにでかけるようになった。

訪れたのは国王プミポン

そんなときである。
タイの(前)国王がその地方を訪れたのだ。

そして養蚕農家を一軒一軒まわって話をきいた。

その後国王は彼らにに敬意を表し、感謝の言葉を述べるとともに

これこそ価値のあるものだから続けてほしい

と頭を下げたんだそう。
そして、国王は早速シルク生産を守るために伝統的な手法のシルクに価値をつけるように指示をだす。
もちろんなんでもかんでも良いわけではなく、本当に手法を守っていることを条件にタイシルクのなかで最高のステータスである5スターを女王の名前でつけることとした。

国王のお墨付きをいただいた養蚕農家は金額の面だけでなく、その価値に自信と誇りをとりもどした。

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私たちが訪れたイサーン地方の養蚕農家はみんな自信をもって説明してくれた。

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この子達は自分の子供みたいなものさ。自分たちで全部やっているシルク産地がどれだけあるとおもうんだい?

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糸は生の繭を手で引いてるから数はできないんだ。だけど着心地は最高さ。

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手で織る方が柔らかくて着心地いい生地ができるでしょ?

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糸はどれも草木染。あの木だとこの色になるし、あの木だとあの色になる
綺麗だろ?

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うちの絣の技術は一番だよ。

と。

ちなみに、きれいなシルクを見ても、日本語で「きれい」を連発するのはお勧めしない。「きれい」という発音はタイでは「きたない」という意味になるからだ。私は最初それで村の人に怪訝な顔をされたのを覚えている。通訳を交えて笑い話になったからよかったけれど、きれいなシルクを見たときは「スワイ」と叫ぼう。

逆三角形の関係が守った誇り

さて、表題である逆三角形とはというと、分かった方がいるだろうか?
それは組織の在り方だ。

国(という組織)の長である国王が自ら現地を訪れ、現地の人の声を聴き、頭をさげて感謝の気持ちをのべる。それが働く人のプライドとなり何十年も誇りある仕事を続けることができる。いち早く国民に頭を下げて誇りを守った国王と養蚕農家の関係はまさに逆三角形だったと思う。

未だに三角形の組織が多い中で、このような取り組みができた国王は国民の父としてたたえられるのもうなずける

「これからは逆三角形にならなきゃ。」
これは20年近く前に出会う社長社長にそう講義していた私の先生の言葉である。当時の私は何のことか分からなかったけど、この件を体感し「なるほど」と実感したのを思い出す。

さて、あれから20年。いまだに三角形の組織が多いけれど、これからはその関係でもないと思う。先生は10年前こういった。私たちは「地球船宇宙号の住人。丸にならなきゃね。」
はたして、まだまだ三角形の組織ばかりな今、私たちは丸の関係をつくることができるのでしょうか?
世間のことはわからないけれど、少なくとも自分の身の回りの人、ラオスの村の人たちとは丸の関係を築いて生きたいなぁ。と思う。

以上、今日は中々触れることのないタイシルクの生産村の話から組織の在り方を思い出したお話でした。

・・・

ということで、今回はこの企画に参加させていただきました。早く書こうと思いつつ、期間ギリギリになってしまったためバトンはチェンナーさんにお返しします。しつれいしました。


【期間】7月20日(火)まで
【バトンリレー】ルール
1.バトンが回ってきたら、noteを書く。
自分が薦めたいマイカルチャーを記事にする。表現や書き方は自由。
2.noteを書いたら、次にバトンを渡すnoterさんを指名する。
指名するnoterさんの最新の記事を貼る。
3.指名するnoterさんは、最大2名まで。
4.チェーンナーさんの記事を貼る。
5.ハッシュタグ、「異文化カルチャーシェア活」を入れる。
【バトンリレー】の返還について
1.バトンをもらったけどnoteを書きたくないという人は、バトンをチェーンナーさんに返還してください。方法は以下のどちらか。
①「チェーンナーさんに返します」という記事を書いたものに、上記チェーンナーさんの記事を貼って投稿。
②チェーンナーさんの記事のコメント欄で「バトンを返します」と申告
返還すると、チェーンナーさんがオススメのカルチャーを書いて投稿されます。
2.バトンをもらって記事を書いたけど バトンを回すのがいやだという人は、チェーンナーさんにバトンを返してください。その際記事に「チェーンナーさんに返します」と書いていただければ、チェーンナーさんが引き取って、おススメマイカルチャーを書かれます。バトンは遠慮なく返して大丈夫です。

サポート頂いた場合は、食べれる森作りを中心に、南ラオスの自然を大切にする農場スタッフのための何かに還元させてもらいます。