名CM考Ⅱ 第三八回 2004年 日本電気 「U can change」

結論から言います。ユビキタス社会はやって来ませんでした。
こんな事言うとまたIT企業勢から反論を食らいそうだが見てください。コロナ禍終わったら満員電車、FAX、ハンコの世界ですよ。これのどこがユビキタスですか。よってコロナ禍という特殊な3年間だけ、一瞬だけユビキタスが実現したけど、掛け声だけで倒れた。そういう歴史として終わったとピリオド打っていいよね。


もしこんなのが実現してたら「ヒキコモリ問題」なんて解決済みで家に居ながら仕事ができる、通勤も不要、ワーケーション実現、コミュ障でも問題なしである。そうならないのはなぜなのか。我が国のシェアオフィスやレンタルオフィスってコロナ禍以後どうなったと思っているのでしょうか?

技術というのは技術だけ進歩すればいいってもんじゃない。問題はユーザー側の「心」つまり文化なのである。

そしてその後のNEC日本電気グループに待ってたのは悲惨な現実である。そう、携帯電話事業壊滅。つまりスマホに負けたのです。国産スマホすら作れなかった。なのに「モバイル社会」???

アホですか?

だからもうこのころになるともう日本は「心停止」してたのです。そして東日本大震災がトドメの一撃で完全に死亡。それが日本という国だったのでしょう。NECに残ってるのは官需と宇宙事業ぐらいです。PCに至ってはNECレノボと言ってレノボグループのものになりさらに社名変更したときはもう中国レノボがNECのPC事業の3分の2の株式を取得しています。
「日本電気」とは言ってるけど事実上のPC屋であってNECからPCと携帯電話を抜き取るともう実質何もありません。「日本の電気」とはほど遠い企業なのです。ソフト?ゲーム事業からして壊滅ですがな。NECって昔は連結約30万人も居たんです。それがバブル崩壊直後に「PCエンジン事業」(NECホームエレクトロニクス)が崩壊してからもう地獄を見てますからね、この企業。今や連結約11万人。つまり従業員の3分2がリストラで消えたのです。万死に値します。

NEC様に怒られちゃうかもしれないけどこの企業はバブル崩壊以後何も出来なかった、が社史であって日本の衰退とともに会社も衰退した、というのが事実なんでしょう。だってNEC日立メモリに至ってはエルピーダメモリとなって倒産したでしょ?「知らない」とは言わせない。ルネサスもしかりだ。「知らない」とは言わせない。NECビッグローブすら売ってしまった。つまりプロバイダ事業すら出来なかった。そう、NECが失ったのはPCとゲーム機だけではない。半導体事業もプロバイダ事業もなのだ。もしかしたら顔認証システムはNECがシェアが大きいのかもしれないけどそれは「官需」つまり国に生かされるに過ぎない。そうそう、レジ事業(POS事業)はNECが割と強い。NECフィールディングと言って保守・サポート事業もある。まるで東芝テックみたいだ。それでも11万人も従業員がいるのは案外レジ事業があったからなのかもしれない。シャープNECディスプレイなるものがある。ここをJDI(ジャパンディスプレイ)に売らなくて本当に良かった。ただし半分は実質台湾企業のホンハイが持ってるに等しいのでもうここも外国企業なのかもしれないが。
2019年にはNECライティングまで売却された。今では非NEC資本の「ホタルクス」となった。とうとうNECという会社は蛍光灯すらも作れなくなった。いつのまにかNECトーキンが消えていた。現・トーキンも独立資本である。

だからもう一回言う。この企業はバブル崩壊以後何も出来なかった。33年間墜落しきったままなのだ。

会社が「BtoCからBtoBへ」と言ってきたらそれは会社倒産危機のサインです。そうでしょう?一般消費者に物やサービスをまともに売ることができない企業が対企業には物やサービスを売れる?プロ(業務用)を馬鹿にするな。「U can change」って言葉の意味はそういう裏の意味があったわけ。貴社がそれでも業務用を売れるのは単に電電ファミリー企業だからに過ぎない。つまりガラパゴスとコネでしかない。普通の会社は元から業務用オンリー以外の企業であれば普通はこう言うのだ。「BtoCもBtoBも すべてのお客様のために最先端技術を」と。そうでしょう?

私は1つご提案があります。NECって住友財閥なんでしょ? もう住友電工・住友電装と合併して正式に「住友電気」と名乗ったらどうでしょう? 車載電装ならどうにか生き残れそうだ。ちなみに住友電装っておもにホンダ車の電装を手掛けるという。住友電装はワイヤーハーネス世界1位の企業である。この方がよっぽど「日本電気」という名にふさわしい。住友マークも使えるしいいことだらけだ。もしかしたら三井財閥である東芝の解体に伴って三井の部分まで食えるのかもしれない。「三井住友電気」とすら出来そうだ。銀行や損害保険が「三井住友」と名乗っているようにね。

ただし、旧三井生命のように見捨てられなければ、の話だが。

最後に

"Empowerment by innovation"の「Empowerment」とは本来社会学用語で権限付与、もっと言うと女性解放のための言葉である(女性への職務権限付与という意味だ)。そんな言葉を日本人は勝手にゆがめて「勇気」とか「希望」という偽善用語の和製英語になってしまったし、その原因を作ったのはこの「NEC」のCMなんです。リストラ屋が「Empowerment」??? それとも「(IT)イノベーションの権限はNECが付与します」って意味か?それはそれで傲慢だね。まあ後者はありえない解釈だが。

なのでね、こういう落ち目の会社ほどカタカナ用語で誤魔化す。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?