平成名文学考 第5章 『ポトスライムの舟』

ちゃんと読みました?女性ですが就職氷河期世代の話ですよね。就職氷河期世代って就職したらラッキーじゃないのよ。入ってもパワハラで精神を病んでドロップアウトするんですよ。それで引きこもるんです。そしてそういう人間に対して「軟弱者」と攻撃されたのがロスジェネなんです。

さすがにこの作品は2009年に芥川賞を受賞しましたが。だから親しくない人には「あなたの愛読書は何ですか」って聞かれたら私は『ポトスライムの舟』って答えますね。「何それ?DQ?」とか言ってきたら「お前、芥川賞受賞作品も知らないの?」と逆マウントが取れるんでね。そういう意味でもこの作品名は便利ですよ。ぜひためしてみてください。

ポトスライムって観葉植物の名前だよ、ボケが。

「ポトス」でもたぶん通じないかも。さすがに写真見せたら「あ~あ、これね!」とか言うのでしょうけど。ポト・スライムじゃないのね。ポトス・ライムだから。ライム色のライムね。ゴールデンポトスという種類もございますよ。

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※ポトス・ライムの画像。Wikipediaより。見たことありますよね?

で、主人公は29歳の女性でパソコンスクールインストラクターの契約社員とか転々としてます。一度レールから外れたらアウトなのが日本なのよ。まあこの人は女性だから結婚というラストチャンスがあるんだけどさ。男だったら20代前半ですでに「人生ゲームオーバー」ですよ。氷河期世代というのは22~23歳で「はい、あなたの人生は終了でーす。残念でした~」と言われて「ゾンビ」になることを余儀なくされた「死んだ」人々なんだよ。分かる?つまり主人公は女性ゾンビなわけ。

工場勤務年収とほぼ同額である世界一周旅行(163万円)が夢。副業を2つ掛け持ちですよ。これが平成のリアルですよ。だから貯金していくのですが……。


このエッセイ、まさかネタバレありとか思ってませんよね?ずるしようとしてませんよね?

はっきり言ってこんな突拍子もない夢でも持ってないとやってられないのが平成や令和の日本。時代が時代だったら組合結成で戦うことでしょう。パワハラ上司とか昔は組合員が止めに入ったんですよ。だから昔はパワハラ被害が少なかった。昔からあったもんじゃない。昔と言うっても高度成長時代だが。弱者がより弱い弱者を叩き、その弱者がありもしない非現実に逃避する。それが平成や令和という時代なんだ。

2009年と言えばリーマンショック。このリーマンショックにあった「派遣村」の人たちに罵声をネット上で浴びせたネット右翼の人々が忘れられない。「時給700円の農家の仕事があるだろが」とか。食えないから主人公の女性は副業を2つかけもちしてるのである。体はどうなるかだって?お察しください。

ひきこもりというのは正社員になって身も心もボロボロになった人だということが社会調査で判明いたしましたよね。率にして実に70%がそうだという。平成や令和と言うのは弱者が逃げられない世なんだよ。彼女は実家住まいですが実家に入れるお金を除いたらほぼほぼ消える。それが「安くて便利」の犠牲だしだから29歳になっても結婚が出来ない。昨今の芥川賞作品にしては社会をちゃんと見てるじゃないかって思うの。そう思いませんか?

まさに「働いたら負けかなと思う」を有言実行してる主人公ですよ。『とくダネ』に出てたニートのセリフを何でお前ら笑えるのか。3つも現業職を掛け持ちしてそれで年収が200万に届かないんじゃ生活保護を申請したほうがよっぽどマシだよボケが。

それが、「トリクルダウン」の幻想で2021年に岸田総理が「新しい資本主義」と提唱するまで訂正出来なかった経済体制だったんだよ。当時の民主党はリーマンショックと東日本大震災でそれどころじゃなかったからね。


『ポトスライムの舟』、お勧めです。ぜひお読みください。貴方の愛読書は?って聞かれたたこれを答えるとええ。漫画作品答えたらお前の知性を疑われるからな?大人なんだし。『〇滅』とか言ってるそこの大人、聞こえてます?

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