#15 トランプ大統領の財務記録・情報に関する英語記事の意訳(3680字程; Jul.9,2020, VOA Learning English)


(英文元記事739words)

1.[1つ目の写真の説明文から] "Follow the Money" (金の行方を追え)

The court ruled that the Manhattan district attorney can obtain Trump's financial records. (マンハッタンの地方検事はトランプ大統領の財務記録を手に入れることができると、裁判所が決定しました。)

2.[以下,本文から](1) 米国最高裁は木曜日(2020年7月9日)、ニューヨーク州検事が Donald Trump大統領の財務記録を手に入れることができると決定しました。裁判所は現時点において、下院議院が文書を手に入れることは認めませんでした

 他の最近の大統領と異なり、トランプ大統領は、納税申告書を含む財務記録を公表していません。それらの書類は、彼の富と、親族企業連合であるトランプ・オーガナイゼーションの活動に関する情報をもたらし得るでしょう(couldは,現在時制の仮定法で、可能なこと、推量を控えめに表していると考えます。)。

 この決定は、公衆(一般大衆)がそれらの記録を見ることができることまでは保証していません。

(2) トランプ大統領は今年終盤の大統領選挙での再選を目論んでいます。ツイッターで、大統領はすぐに、最高裁決定は「政治的な起訴」だと非難しました。

「最高裁は、事件を下級裁判所に差し戻し、議論は続く。これはすべて政治的な起訴だ。私は、Robert Mueller FBI長官らによる魔女狩りに勝利し、そして今、政治的に堕落したニューヨークの権力者たち(establishmentが省略されていると考えました。)との戦いを続けている。この大統領の職や現政権へのアンフェアな対応だ。」

(3)Trump vs. Vance

ア.木曜日に示された最高裁決定の一つに、Trump versus Vanceがあります。Cyrus R. Vance Jr氏は、ニューヨーク州ニューヨーク郡の地方検事です。

 その最高裁決定の中で、John Roberts連邦最高裁長官は、米国司法制度において、「公衆はいかなる人についての証拠物をも閲覧する権利を持っている」と書きました。彼は、「いかなる国民も、大統領でさえも、刑事司法手続において召喚されたときには、証拠物を提出することを拒むことはできない」と付け加えました(couldも現在時制の仮定法ですが、no ... canとできないと断定的に書かずに、no ... couldと仮定法を用いて控えめに書いているのは、仮に提出しない場合には、罰則が科されうるからでしょう。)。

イ.Vance検事の事務所は、2018年にトランプ氏と彼の事業への捜査を始めました。Vance検事は、トランプ氏と彼の事業から2人の女性への、報じられた(複数の)支払いについて捜査をしていました。その支払いは、彼女らのトランプ氏との情事という事実を隠そうとしたものでした。その報じられた支払いは、2016年の大統領選挙キャンペーンが行われている間になされたものです。

 2人の女性は、トランプ氏と性的な関係をもったと話しました。トランプ大統領の当時の私設弁護人であった Muchael Cohen氏がその支払いを認めましたが、トランプ氏は情事を否定しました。

 刑事事件の捜査の一環として、Vance検事は、トランプ氏の会計会社 Mazars LLP(有限責任事業組合)に、彼の納税文書を含む財務記録の提出を求めました。それらの文書は、ニューヨーク市の大陪審に提出されました。

ウ.トランプ氏の弁護士らは、合衆国憲法の下、トランプ氏は、大統領職にある間、刑事司法捜査の対象とはならないと反論しました。彼らは、米国司法省の手引書に、現職大統領は起訴も求刑もなされ得ないとされていることを、指摘しました。

 下級審裁判所での聴聞の間、トランプ氏の弁護士は、ニューヨークの5番街で仮に誰かを撃ち殺したとしても、役人がトランプ氏を捜査することはできないと主張しました。

(During a lower court hearing, Trump’s lawyer claimed that officials could not investigate Trump even if he shot someone on New York’s Fifth Avenue. 

 ①ここでの couldは、複文に含まれる名詞節中の述部であり、複文のメインの動詞が過去時制なので、時制の一致により、名詞節中の動詞も過去時制(直接法)になっているとも考えられます。

 ②これに対して、even if以下の副詞節中の shotについては、あり得ないあるいはありそうもないことを表す仮定法で、原形動詞と同じ形の過去形の shotが使われてると考えます。複文のメインの動詞が過去形なので、さらに時制を一致させて過去完了形の形になるのではないかとの疑問を持ちましたが、そこまで文を複雑にさせなくても意味合いは通じるでしょうから、過去完了形ではなく、そのまま過去形にしているのではないかと考えます。「従位節(従属節)内の仮定法の動詞は時制の一致によって変化しない」という英文法書の説明もありますので(『表現のための実践ロイヤル英文法』重版(2017年,2011年)514頁参照)、別に過去完了形にしなくてもいいようです。以下のブログは参考まで。

 ③翻って、couldについても、時制の一致によったのではなく、仮定法と考えた方がよりシンプルかもしれません。すなわち、役人がトランプ氏を捜査することはできないだろうと、現在時制の仮定法を用いて控えめに書いているとも考えられます。

 couldが直接法の過去時制であれ、過去時制の仮定法であれ、どちらの意味合いでもとれるように書かれているのかもしれません。もし、役人がトランプ氏を捜査することはできないと断定的な意味合いを持たせたいのであれば、During a lower court hearing, Trump’s lawyer claimed that officials were not able to investigate Trump even if he shot someone on New York’s Fifth Avenue. と書き表せばいいだけです。実際に、トランプの弁護士が "... can not investigate ..."と言っていたとしてそのまま直接話法で書くこともできれば、間接話法を使って、couldに変えるか、were not able toに変えるかは、記事を書く人が選択できます。記事を書いた人が、役人がトランプ氏を捜査することはできないということに100%賛同できなければ、were not able toを使わずに、couldを使うでしょう。)

エ.7対2で、連邦最高裁判所は 、Mazars有限責任事業組合(LLP)は、刑事司法捜査の一環として大陪審へ財務記録提供を命じられ得る、という決定を行いました(この couldについても、前述と同様、時制の一致による直接法の過去時制とも、時制の一致を受けない仮定法の現在時制とも捉えうると考えます。)。なぜならば、大陪審手続は非公開であり、トランプ氏の記録は公衆には知られないといえるからです(wouldは、仮定法の現在時制で、控えめに書かれていると考えます。しかし、日本語訳は、「・・・知られないでしょうから。」とはせず、「・・・知られないといえるからです。」としました。「・・・といえる」は必ずしも断定的な意味合いではないからです。)。

 Vance氏は民主党員であり、連邦最高裁判所の決定を称賛しました。「これは、我国の司法制度、および、誰も、大統領でさえ、法の上には存在しないという、根源的な原則にとって、すばらしい勝利です。」と彼は述べました。

(4)Trump vs Mazars

ア.Mazars有限責任事業組合(LLP)は、もう一つ別の最高裁事件に関わっています。その事件は、民主党が支配している米国下院議院の3つの委員会も関わっています。

 それらの委員会は、Mazars有限責任事業組合と2つの銀行、すなわちドイツ銀行とキャピタル・ワン・フィナンシャル・コーポレーションに対して、大統領と彼の親族および関連企業から得た財務情報を提出することを求めました。

 それらの下院委員会は、下院が、その立法府としての責任を全うするために、召喚状を発付する憲法上の権限を有する、と主張しました。

(The House committees argued they have the power under the Constitution to issue subpoenas to help it in carrying out legislative responsibilities.

 itがどれを指すのか、the Constitutionあるいはthe power under the Constituion、the U.S. Supreme Court、the U.S. House of Representativesか、迷いました。ですが、少し後のところに、the House’s subpoena powersと書かれていましたので、itとは the House(of Representatives)だとわかりました。)

イ.大統領の弁護士らは、下院の要求は法律制定のために必要という理由ではないと主張しました。下院の要求の目的は、大統領や親族の個人情報を暴露することであると主張しました。そして、召喚状は下院議院の憲法上の権能に含まれないのではないかと疑問を投げかけました。

ウ.7対2で、最高裁は、下院の召喚状発付権限を認めない決定をしました。この決定に基づき、トランプ氏の財務情報開示についての争いも、下級審裁判所に差し戻されました。

 法廷意見(多数意見)に賛同する立場から、Roberts連邦最高裁長官は、「大統領の個人情報開示のための、議会による召喚状の発付は、権力分立に関わるいくつかの重要な懸念を包含する。しかしながら、どちらの当事者も、これらの懸念を払しょくするために説明するアプローチを確立しなかった。」と書いています。

エ.決定後、Nancy Pelosi下院議長は、「私は、トランプ氏はある事実をツイートし、他の者たちはそれとは異なる別の事実を述べていると聞いている。どちらが真実だとしても、そういう事態にあることは、合衆国の大統領にとして好ましい報道ではない。」と述べました。

 民主党のリーダーは、下院議院は「真実を明らかにし、」そして「下級審裁判所の我々の差戻審に力を注ぎ」続けるだろうと、声明を発表しました(would仮定法の現在時制)。

以上

Hai Do wrote this story for Learning English. Ashley Thompson was the editor.

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