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The Smithsってなんなんだ?


エルヴィス・プレスリーを彷彿とさせる髪型、古着のレディースのシャツやネックレスをしてグラジオラスの花をぶんぶん振り回しながら独特のファルセットの効いた甘く切ない歌声で歌うといえば、The SmithsのMorrisseyの代表的なイメージである。

Smithsといえば、そのシンプルなサウンドやウィットの効いたザ・ブリティッシュな詩的な歌詞、ジョニー・マーの虹色のような美しい音色であるが、まず彼らはwikiや一般的には音楽ジャンルはネオコア・インディーポップとある。
しかし私はこれは一部正直なところ間違っていると思う。
この記事を読む人の中には私がThe Smithsの大ファンだとご存知の方もいるだろう。

なぜ、私が彼らの音楽ジャンルが間違っているかと思うのかは理由がある。
まず、『The Smiths』、『Maet is Murder』、『Queen is Dead』、『Strangeways, Here We Come』この4枚のアルバムはサウンドが統一されているように感じるが実は全くバラバラである。
まず、デビュー曲の『Hand in globe』であるが、これは60年代のポップアイドルやガールズコーラスグループの大ファンのMorrisseyの趣味全開である。
シングル版ではハーモニカが使われているが、アルバム版ではまるでMorrisseyは大事なバンドの第一歩よりも彼が大ファンのポップアイドルの1人であるサンディー・ショウに歌ってもらうことを前提としたサウンドである。
セルフタイトルのファースアルバムの『The Smiths』は『Hand in grove』と彼らの知名度を高めたセカンドシングルの『This charming man』をのぞいたら、随分違和感があるサウンドの作りである。
『Reel Around the Fountain』は比較的アルバムの中では明るい曲であるし、『Suffer Little Children』や『The Hand That Rocks the Cradle』ほど暗くない。
むしろ、ファーストアルバムのThe Smithsは実はメロディーラインやアレンジなど完璧にMorrissey好みの60年代のポップアイドルサウンドのアルバムなのである。

次に彼らの代表作である『Meat is Murder』はそんなポップアイドルが大好きな趣味とは正反対のこれもMorrisseyが大ファンのNewYork Dollsの影響が感じられるパンクアルバムである。
特に『Nowhere Fast』や『Barbarism Begins at Home』はジョニーマーのギターやアンディ・ルークのベースが暴れ回っている。
これまでに最高のパンクアルバムがあるだろうか。
パンクとは、政治的や社会的な問題を風刺したものであるし、パンクといえばcrashなどがあげられるが、The Smithsはcrashなどの先輩バンドよりも遥かにパンクの精神を貫いている。

『Queen is Dead』については、いわずともがなである。

『Strangeways, Here We Come』はまさに彼らの幕引きの挨拶を告げるようなサウンドで構成されているが、その中でもやはり奇妙なのは1曲目の『Rush and a Push and the Land Is Ours』である。
この曲はもともとReparataという70年代の『shoes』という曲からインスピレーションを受けており、この曲は歌詞もサウンドも奇妙すぎるのである。
結婚式の歌といわれているが、『母は虐待をしなかった/彼女は靴を忘れなかった』なんのこっちゃである。
サウンドも、まるでボニーMのラスプーチンのような中東を思わせる雰囲気と、不気味で無邪気な子供たちのコーラスが入っている。

『UnHappy Birthday』や『Girlfriend in a Coma』はoasisが好きそうなブリットポップであるのに対して、『Rush and a Push and the Land Is Ours』はThe Raincoatsのようなポストパンクなのだ。

The Smithsというバンドは短い活動期間ながら、4作のアルバムで一貫したシンプルなサウンドと思わせながら実は60年代のポップアイドルサウンド、パンク、フォーク、グラムロック、ブリットポップをやり切ったのである。

自身の出身地のマンチェスターを「退屈でなにもない街」と呪詛のように自伝や歌詞で言っているMorrisseyであるが、彼は皮肉屋である。
実はこの恨み節は「マンチェスターに産まれたからこそ、僕という人間ができた」という故郷愛であり、彼はイギリスの中で一番愛国心が強く、イギリスで一番の英国紳士であり、そして変態的な天才で、まさに彼の愛してやまないオスカー・ワイルドそのものなのだ。


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