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2021年8月29日(日)

 新約聖書の世界を舞台にした歴史フィクション小説(historical novel)にハマっている(と言いつつ、まだ2冊しか読んでいないのでニワカもニワカだが......)

 最近読んだのはA Week in the Life of Ephesus(エペソの暮らしの一週間)という作品。新約時代、紀元89年のエペソを舞台にした物語である。

 これはIVP Academicから出版されているシリーズものの一冊で、他にはローマやコリントを舞台にしたもの、また「ギリシャ=ローマ世界の女性」や「ローマ軍の百人隊長」を主人公としたものなどがあるらしい。

 ちなみに『エペソでのーー』は群像劇風の物語で、アルテミス神殿に仕えるギリシャ人の神官、家の教会を主催する富裕層クリスチャン、ローマ帝国を呪う貧困層クリスチャン、皇帝崇拝教団に仕えるクリスチャン、クリスチャンと交際するユダヤ人......など、いろいろな人物の視点から話が進んでいく。

 ストーリーももちろん面白いが、なによりコラムがわくわくさせてくれる。

 たとえば「エペソを拠点とする多様なキリスト教」や「皇帝崇拝教団の役人たち」など。当時の文献や考古学的証拠を参照しつつ記された短い文章。内容はけっこう専門的で、読み応えがある。

 物語の作者は新約学の専門家、だからこその充実したコラム。また著者自身が現地におもむいて撮影した遺跡や出土品の写真も挿入されており、理解の助けになる。

 物語に心動かされながら、新約背景に関する専門的な知識も得ることができる。

 実際に、新約聖書を読むとき、場面や背景を想像できるようになり、テクストに没入できるようになった気がする。

 (もちろん、あくまで想像に過ぎないということは弁えておかねばならないが)

 専門家の手による歴史フィクション、背景を楽しく学ぶうえでの最適解なのではと思うようになった。

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