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2021年8月27日(金)

 ときどき無性に漱石の小説が読みたくなる。これは逃避だ。彼の抑鬱的な「厭世観」に惹かれることがある。漱石自身が手紙のなかで書いている。生は厭わしい、かといって無理に死へと移ることも厭わしい。生と不自然な死を厭うた漱石は、結局生き続けた。他の幾人かの文豪のようには死を選ばなかった。そこにも惹かれる。厭世観を抱きながら、生を厭いながら、その生をまっとうするための生き方を模索したのだ。もしかしたら、その厭世観もどこかで変わったのかもしれない。修善寺の大患以降、人柄が大きく変化したという指摘もある。変化ということで言えば、彼の作風も作品を経るごとに変化している。初期の『吾輩は猫である』と、後期の『こころ』との間にはやはり大きな差が見られる。

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