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2021年12月8日(水)

 アニメ『平家物語』を観た。一気に観た。それはもう一気に、全11話をぶっ通しで観た。

 1話あたり24分として、全部で264分、というと4.4時間か・・・。何はともあれとてつもなく充実した休日の午後となった。

 とりとめなく感想をメモしておきたい。また気が向けば、その時にはちゃんと整理してまとめたいと思う。とりあえず今回は、一度ひととおり観ただけのファンが抱いた第一印象。

・・・

 さて、別に原作ガチ勢というわけではないけれど、やはり原作を知っているファンからすれば、見逃せない場面、アニメでどう描かれるのか気になってしかたないシーンがいくつかある。

 忠盛昇殿、殿下乗合事件、鹿ヶ谷の陰謀、清盛と白拍子たち、富士川の戦い、二位尼並びに安徳帝入水・・・などなど。印象に残っている場面は人それぞれだろう。

 今回のアニメの本筋は「平家の没落とそれに翻弄されつつも懸命に生きる人々」を描くところにあるため、それと関係のない部分は省かれることになる。

 個人的に気になっていたシーンは、鹿ヶ谷の陰謀ののち、後白河院を幽閉しようと出兵の準備をしていた清盛をその息子重盛が諌める場面。

 かの有名な「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず。進退これ窮まれり」の場面。これは重盛が清盛に向けて放ったことばである。

(追記:この場面、原典で読んでみたいと講談社学術文庫版『平家物語』を当たってみたところ、どこにも見つからなかった。調べてみると、この出典は平家物語ではなく、頼山陽の『日本外史』であるらしい。知りませんでした。お恥ずかしや)

 大体の意味は「後白河院に忠であろうとすれば、清盛にたいして不孝な息子となってしまう。清盛に対して孝たらんとすれば、後白河院に不忠となってしまう。この板挟みにあって動けなくなってしまった」となる。

 アニメ版でもやはり重要な場面として描かれていたが、しかしあっさりとしている印象を受けた。なぜだろう。

 そして気になるのは、琵琶法師の少女「びわ」の存在。

 SPOILER WARNING‼️ ここからはネタバレになるので、まだ観ていないという方は読み進めないでください。


















 結局、びわは何者だったのか? なぜ未来が見える目をもっていたのか? なぜ年をとらないのか? と思いきや、平家滅亡後には盲目になり髪も白くなっていた。どういうこと?

 びわの両親についても謎は深まるばかり。父は琵琶法師、母は白拍子。いずれも盲目となっていた。母のほうは、盲目になる前はオッドアイだったそう。びわと同じく未来を見通す目をもっていたのか? だとしたら、どんな未来が見えていたのか?

 これらの(めちゃめちゃ興味をそそる)設定も、結局ほとんど深掘りされなかった。そこに魅力があるといえばそうかもしれない。考察班の楽しみが増えるだろう。

 しかしやはり、物足りなさも感じてしまう。物語としてそもそも完成度の高い、また各人物のキャラが立ちに立って立ちまくっている平家物語に、アニメオリジナルの新しい人物を登場させるという試み自体が超難題なのかもしれない。

 どうしても、びわが浮いてしまっている(平家物語という物語に馴染めていない)という感じが拭えなかった。

 平家物語オリジナルの人物をいじくれないとすれば、びわというキャラクターをどう描くかが焦点となる。

 言い換えると、平家の物語を目の当たりにしたびわがどのように成長していくか、どのように変化していくかを描くことで、魅力的な物語に仕立て上げることができる。

 もちろんこの点は描かれていた。しかしその描き方が少し控えめすぎたように思う。

 平家の悲惨な未来しか見えず、未来が見えたとしてもそれを変える力がないことに絶望し、未来を見たくないと思うびわ。

 しかし没落していく平家を前に、それでも懸命に生きていこうとする平家の人々を前に、彼女は、平家の運命を見届けようと決心する。

「父親を平家に殺され、平家を憎み、
平家滅亡を予告するびわ」

「平家の人々と親しくなり、平家滅亡の
未来から目を背けたいと願うびわ」

「平家の人々と連帯し、平家滅亡の未来を
見届けようと決心するびわ」

「琵琶法師として、滅亡した平家の
過去を語り継ぐびわ」

 びわ成長のプロットを取り出すと、このように図式化できる。この図式の描き方が控えめで、汲み取るのに苦労した。もう少し浮き彫りにして目立たせてもよかったのでは、と思ったり。

・・・

 とりあえず、第一印象をとりとめもなく書いてきた。2周目を観れば、1周目には気づけていなかったことに気づいて理解が深まるかもしれない。この文章を見返して、読みの浅さを情けなく思うかもしれない。

 何はともあれ「観てよかった!」のは間違いない。

 なにより映像が美しかったし、ところどころ感動的(もちろん、切なく悲しい感動だが・・・)な場面もあり、震えた。とくに維盛が入水するシーンなどは、泣いた。

 オープニング曲もエンディング曲も、物語とリンクしていて素晴らしかった。YouTubeで聴くことができるので、ぜひ聴いてみてください。

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