見出し画像

スリランカ紅茶農園でのランドスケープアプローチ

「バリューチェーン」というワードを聞いたことはあっても、実際に日本企業が真剣に「バリューチェーン」を考えるようになったのは、2011年にGHGプロトコルのスコープ3基準が正式に開示されて以降のように思います。
大きな一歩ではあったものの、対象がGHGであったがために数字を通じた抽象化された理解に留まり、視点は自社の灯台の下から調達先という直線状の課題に広がっただけでした。
一旦数字になってしまうと、その背景には関心が行かないものです。

実際は、企業は様々な社会の「システム」とその「サービス」の上で活動しています。
そして、バリューチェーン上流の主体もまた、それぞれの社会「システム」とその「サービス」の上で活動している訳です。
単純に、自社のバリューチェーン上で見えている課題を解決しても根本的な課題の解決にはつながらず、目の前に見えるリスクを消した気になっただけで、むしろ本質的なリスクを隠ぺいしてしまう問題すら起こっていたように思います。

この課題を「バリューチェーンの認識を広げる」と捉えて解決しようとしても、想像が広がらず、手触り感もなく、社内の理解も深まらず、手詰まりとなる危険性があります。
むしろ、「自社のバリューチェーンそのものが、社会システムとサービスに上に乗っかかって機能できている」と考えた方が分かりやすいように思います。

このことが、ようやく意識されるようになってきたのは、ESGのフォーカスが、GHGから「自然資本」に移ってきたからだといえます。
自然資本は、そこに生態系と水、そして人間との関係性が出てきて、それらの総合的な恩恵が生態系サービスとなり、企業が使用できるものです。

この関係性は、食品企業では理解しやすく、具体的な活動も10年以上前から多くみられるのの、その経営層や従業員が理解しているという訳でもありませんでした。
やはり、自然資本を概念として理解しようとするには敷居が高いからです。
そのため、事業と全く関係性のない森林活動など、いわゆるCSR以上に社会貢献的なボランティアな活動に落ち込み、満足してしまう企業が多くあります。

その理由は、長らく自然資本と企業活動との本質的な定義や課題を定義するワードがなかったからです。
「ランドスケープアプローチ」は、まさに、このギャップを埋める重要なワードであり、認識です。

ランドスケープアプローチとは、生物多様性国際枠組み(GBF)では、「原料生産地の多様な人間の営みと自然環境を総合的に扱い持続可能な課題解決を導き出す手法」とされています。
ポイントは「統合的」です。

私たちが、2013年からスリランカで実施している紅茶農園に対するレインフォレスト・アライアンス認証の取得支援の中で、現地とエンゲージメントしながら活動をフィットさせてきたことで、特段意識することなく、「ランドスケープアプローチ」を実践してきたといえるかも知れません。

少し前の記事ですが、取り組みの概要は下記をご覧ください。
https://toyokeizai.net/articles/-/473249

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?