欠けたところに~寒露の時~【詩】

天高くどこまでも澄みわたり 柔らかな木漏れ日が眠り誘う
耳を澄ませば元気よく駆ける 子供らの声が空響き渡る

白露の十五夜は満月なれど 秋の長雨におぼろげに霞む
寒露の十三夜の欠けた月は 遮るもののない「無双の月」

あるべき姿とここにある姿 横たわる溝の深さを受け止め
諦めることもなく突き進む 非の打ちどころなき完璧さ なれど

この世に生きる誰ひとりとして 欠けるところなき者などいない
完全無欠の美ではなくとも 欠けたところこそが愛おしい

寒冷静かに訪れるとき 草木の露も凍らんとする
菊の開花の知らせに触れて 胸に迫る晩秋の到来


「寒露」 新暦十月八日~二十三日(頃) 露が凍りそうになる頃

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