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モルカーは授乳カフェで給油していた!?-VRChat

 「自動車がモルモットだったら、車に関するイライラはなくなるかもしれない」というコンセプトの羊毛フェルトアニメ「モルカー」が人気だ。2分30秒の短い動画の中に、クルマを題材にした人間の失敗や優しさのストーリーが詰まっているヒューマンドラマである。

 モルカーはクルマだから給油するかもしれない。同時にモルモットであるから哺乳類でもある。つまり哺乳類にとって最も栄養価の高い液体燃料を体内で燃焼させて動いているわけであり、合理的に考えるとモルカーはミルクにより走っている可能性が高い。必然的にモルカー世界のガソリンスタンドは授乳カフェになる。

 モルカーには感情がある。たくさん走れば疲れるし、渋滞にはまればイライラする。ドライバーにはモルカーを労う必要があるが、ドライバーですら常に調子がいいとは限らない。ガソリンスタンドが授乳カフェならば、店員ママがよしよししながら授乳することでモルカーの苦労も労われる。セルフスタンドもあるかもしれない。

 ガソリンスタンドの代わりに授乳カフェがある世界は、実はそんなにおかしくはない。つい100年前まで、我々石油文明の人類も牛馬と共に暮らしていた。牛馬も旅の途中で草を食む必要があるし、疲れを癒す必要がある。奈良時代、日本各地に律令道路が開かれた時も、馬の拠点となる「駅」が置かれた。授乳カフェの源流は意外と古いのだ。

 松尾芭蕉は「奥の細道」で人生を旅にたとえた。我々人類も、みんなそれぞれに旅をしているモルカーだ。しかし、今のところ人類の精神を入れる器は、簡単に疲れてしまう不完全な生命体。脆弱な入れ物に心が依存している以上は自力ではコントロールできないので、定期的に愛を受けて癒されることが大切だ。自動車の脱炭素化は近いが、人類そのものの脱炭素化は道半ば。自動車にガソリンが必要なように、人類も授乳を必要としている。

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