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批評記事まとめ

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大きく誤読されている(良い方向/悪い方向ともに)作品の評論記事まとめ
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『オッペンハイマー』が描いた原爆【投下】とAI(そして機械学習)に共通する危険性は「責任」の透明化

映画『オッペンハイマー』は原爆の父を描いたことでAIの危険性と絡めて言及されることが多い。と言うと「なるほど今のAIの進歩は凄まじいから人間を超え原爆のような脅威の存在になるってことか」と思うかもしれないがそれは違う。「ディープフェイクとかもっと現実的な話だろ?」と思うかもしれないが(それも確かに危険だが)違う。監督もAIそれ自体と原爆それ自体が同じ危険性を持つとは言っていない。 本作が原爆計画を主導したオッペンハイマーを通して描いているのは原爆そのものと言うよりその投下を

【ネタバレ】ななせ悠『続く道 花の跡』は「名も無き人々に紡がれた歴史」ではなく「歴史を紡ぎながら忘却された人々」を描いた作品である

既にITmedia NEWSなどでも解説されているように、これは日本初のコンピュータ「FUJIC」の史実に基づいた作品である。 ラスト2ページはこのように締めくくられる。 「新しい技術によって無くなった職業(計算手)はもう誰も知らない」と語られる。 そして「そこにいた誰かのこと」も忘れられると語られるが、ここには論理的飛躍がある。何故なら新技術によって職業が無くなることとそれに携わってた人が忘れられることは別問題だからだ。 例えば技術の発達で日本刀より遥かに殺傷力の高いミ