現実への現実逃避 ~ 『この世界の片隅に』 と『オッペンハイマー』~
『この世界の片隅に』の作者こうの史代は映画『オッペンハイマー』を以下のように評している。
オッペンハイマーと『この世界の片隅に』の主人公すずは同時代人とは言え対照的に思える。交戦国同士で性別も異なり、オッペンハイマーが国家機密に関わる天才科学者である一方すずは一庶民に過ぎない。
だが上記のこうの史代の評はすずにも、いやいつでも・どこでも・誰にでも当てはまるのだ。
『この世界の片隅に』は「戦時下の平凡な日常」を描いたことで話題となった。確かにすずは「普通」に見える。軍国主義者