The Game. 2014 BBC.

■総評
地味で辛気臭くて盛り上がりにかけるが、1シーズン6話でよくまとまっている。
華々しさはTom Hughesの「端正な顔立ちの若者」の演技でしか補えないので、2ndシーズンがキャンセルされたのは正直分かるが、制作陣の堅実に作ろうという意気込みを感じたので3シーズン分ぐらいは見たかった。


■細々とした吐露 ※微妙にネタバレ
Amazon Primeで"Tinker Tailor Soldier Spy"(裏切りのサーカス)とか"Deutschland 83"(ドイツ1983年)とかの諜報もの見てたらサジェストされたので、Amazonのサジェスト本当に安易なんだよなと思いながらも、私も安易な人間なので面白さを楽しみました。

劇中でTom Hughes演じる、ジョー・ラムは"You are too beautiful to die."って1話で言われる(これ以降彼のハンサムさは劇中でスルーされるのがウケる)がこれが割と彼の全てを語っており、「冷酷で頑固で愛国心の無い」と彼自身が「演出している」ジョーは死にそうにない。MI5の誰がモグラか?と視聴者は制作陣とゲームすることになるんですが、ジョーは死なんだろうという安心感だけはある。


話の筋としては、1972年にMI5所属の諜報員であるジョー・ラムが、KGBの作戦を追いつつ、MI5内のモグラも探す流れ。ちなみに彼は直近で、女(ユリア)絡みで作戦に失敗しているが上長であるダディに拾われ(泳がされ?)ており、ロメオ諜報員的な下っ端業務をしていたので、ガラス作戦の究明は久しぶりの大仕事である。

登場人物の言動や行動からKGBのガラス作戦とMI5内にいるモグラの推測をするのがたぶん本作の醍醐味。

ガラス作戦は私の冷戦下知識の引き出しがないので先読みできなかったが、モグラは結構早い段階で直感でわかると思う。カメラの視線誘導が巧みなので。

見ていて一番思考が読めない(ように出来ている)のがたぶん主人公であるジョー・ラムであるというのが、他のTVシリーズであまり見たことない気がする。
ただし、倒叙ミステリーでないというのは、ジョー・ラムが自分の素性や能力を極力見せないようにしているから逆にわかる(何もわからんのに倒叙も何もない)。

彼は諜報員として最適化されているので、同じMI5のチームのメンバーにも最低限の側面しか見せないし、相棒ポジションのジムに(モグラの)"The sixth is me."という可能性に言及しても鼻で笑われるぐらいにはこんな何も信じてない奴KGBも雇わんでしょと思われている。
※彼はここでもジムを全面的には信じず、鎌をかけているように見える。

ちょいちょい彼の回想として挟まれるユリアとの出来事も所詮1年前のことでしかないので、それ以上、視聴者は彼について知ることが出来ないのである。

そして、彼はめちゃめちゃ優秀(保護対象が割と死ぬ)というわけでもないのに、何故ダディは使ってるんだ?と序盤で疑問が浮かぶが、私のような安易な視聴者が正解だと思うゴール以外の結果がふってくるのを見越して、意図的に綻びをつくっており、失敗してもそこの綻びを回収しにいけばリカバリできる状況を作るのに長けている諜報員なのだと思った。
EP3のMI6のケイトとのやり取りだって、わざと落ち度を見せているようにも見える。

こんな彼がダディに拾われたであろう過去編とか面白そうなのに、2014年時点でキャンセルされてるから2ndシーズンは存在しないのやっぱり悲しい。
出典 https://tvseriesfinale.com/tv-show/the-game-bbc-two-series-cancelled-due-to-limited-budget-37609/

でも2014年ってSHERLOCKとかドクター・フーとか結構盛り上がってた頃だろうし、それらとは流石にタメ張れなかったんだろうな。あるいは、調度クリミア危機のタイミングだったから、スポンサー面で厳しかったのかもしれない。

何はともあれ、ベネディクト・カンバーバッチやマット・スミスとお茶の間バトルはきつすぎる。

トム・ヒューズは雰囲気作りがとてもうまいと思ったので、彼の出てる他の作品もみたいが、The English、The Laureateは好みではなさそうだから見るならRed JohnかVictoriaかなぁ。


Deutschland 86で、素人シュタージから多少成長したコリブリ見るのが先かもしれない。日本での配信よろしくね!