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はじめに

2020年は年始から新型コロナウイルスのパンデミックから始まり、年末にはアメリカ大統領選挙で世界情勢から目が離せない状況が続き、特別な生活を余技なくされた一年となりました。また、新しい生活様式、働き方などこれまでのライフスタイル、コミュニケーションを根本から見直すきっかけとなり、コロナ禍の対応、業務、教育、イベントなどこの一年を振り返ってまとめておこうと思います。

コロナ禍の対応

2020年1月から大きな実施プロジェクトに取り組み、打合せ対応を含め、東京拠点を構え、スタッフも常駐させ、東京での本格的な活動を画策していたところでした。しかし、ネット上に流れる新型コロナウイルス情報や日々報道される感染者情報を不安に思い、緊急事態宣言が発令される以前の3月からテレワーク体制を整備し、社員の安全を第一優先に東京常駐も取りやめ、出社率50%以下(実際には週1or2出社)を目標に取り組み始めました。もともと私自身がテレワークを2019年から行っており、若いスタッフ達もテレワークにすぐに順応してくれました。通勤時間から解放され、適度な余裕が生まれコロナ感染のリスクも減り、安心できる生活を過ごせたような気がします。私も在宅で仕事を行いながらも家族と過ごす時間が増え、ここ10数年仕事漬けだった生活が一転しました。こういう状況にならない限りはいつまでも深夜帰宅の生活を続けていたでしょう。悪しき慣習を見直す機会にもなったと思います。業務を円滑に進める上で、スタッフとは毎日TeamsやZoom(テレビ会議)やAsana(タスク管理)を使って週スケジュールや進捗を確認し、スラック(チャット)で業務報告や相談を行い、NASやVPNを使ってファイルサーバーにアクセスしてデータ共有を行いながら業務を進めました。

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週1or2の出社日にはなるべくオンラインで相談しづらいことや細かい事項を確認し、適度なバランスを図りながらコミュニケーション不足にならないよう日々の業務を進めました。ただ半年程度経つとテレワーク慣れ(疲れ?)と業務を取り組む上での緊張感の希薄、対面での打合せ、出張も増えてきたこともあって私のみはフル出社に近い状況としましたが、帰宅を早め、残業は自宅で行うということにして現在はこの勤務体制で落ち着いています。

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EELのアップデート

2020年7月頃には、Grasshopper専用構造設計支援プログラム EEL Ver.1.0.7が弊社HPからダウンロードして試用できるようになりました。本バージョンから構造解析データの連携だけでなく、BIMやVIZ系ソフトとの連携が可能になり、Rhinoceros, Grasshopper, EELを起点としたワークフローを実現できるようになり、日常業務もこのワークフローで取り組むようになっています。

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ワイクウーデザインの桑山さん主催のBIMイベントでも本スキームで設計した作品を出展させてもらい、VRイベントとClusterの面白さを体験することができました。

アップデートに伴って、オンライン説明会を会社別で開催させて頂き、コロナ禍でなかなかお会いできなかった方々と久しぶりに近況なども含めて話せる良い機会にもなりました。

また、企業向けに開催していたGrasshopper構造研修もオンラインで再開し、Zoomの機能を使って全体での講習と個別のフォローを繰り返し行い、対面と遜色ない研修を実践しました。コロナ禍の対応として好評で2021年も継続的に続けていくことになっています。

オンライン研修

研修の予習やフォローのため、EELチャンネルも立ち上げ、コンテンツを充実していければと思っています。

コンピュテーショナルデザインを使った実施プロジェクト

2020年はコンピュテーショナルデザインを使った実施プロジェクトが多く、中でも年明け早々から大型プロジェクトに参加していました(プレスについては2021年にされるとは思います。) 主に構造フレームのジオメトリ調整やデータ管理が主でしたが、鉄骨製作に直結する大変重要な作業で1mmの誤差も許されない業務でした。関係者が多く緊張感のあるプロジェクトとなり、3Dデータの作成・管理・検収について貴重な知見が得られました。またBIMデータだけではなんともならず、製作側が多用するツールに落とし込む重要性(鉄骨であればTekla,やReal4, 木であればHsbCADやXF15)もわかり、デジタルファブリケーションの実用性についても実践を経て学ぶことができました。このPJでは他のジオメトリエンジニアとも協働することができ、チームワークを活かしたワークフローを実践できたと思います。また、生産設計という意匠、構造、設備を統合していくような緻密な作業の積み重ねとものつくりの面白さを改めて実感でき、現場で活かせるRhinoceros, Grasshopperがとても大事で、プロジェクト対応および支援業務も今後継続的に行っていく予定です。

他にも、木造デジタルファブリケーション実施案件も動き、加工機と直結するデータ生成プログラムを実装し、2021年の早い時期に竣工予定です。このプロジェクトでもプレカットメーカーさんとデータに関してヒアリングを行い、Rhinocerosとの互換性を確認し、EELを使ってプロトタイピングを開発しました。加工データの生成は設計者の範疇外といわれるケースもありますが、製作限界を考えた設計によって施工フェーズでのトラブル回避にもつながりますプレカットメーカーさんも3Dデータを受領することで設計者とスムーズに意思疎通ができるようになり、フィードバックを経て、建物の品質向上につながると考えています。現在はCEDXMという木造プレカットフォーマットとRhinoデータを使ってプレカットメーカーさんと連携できるようになり、構造設計者と製造メーカーを直接繋げるような試みをしています。EELの次回アップデートで対応予定です。

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スリット

パラメトリックタワーgh

地獄組取り付けプロジェクト

 名古屋の学生チームND3Mさんに社内3Fの天井に地獄組取り付けを依頼し、デザイン、取り付け方法、施工まで一貫して対応してもらいました。地獄組自体は愛知県芸の学生さんの卒業製作で、製作協力した経緯で作品を会社で保管することになり、それを天井仕上げに再利用するプロジェクトです。

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コロナ禍の中、対面の打合せは最小限にし、ZoomやSlackで打合せ、施工も段取りよく準備してもらい、ND3Mさんにはの積極的に対応してもらいました。地獄組を支える取り付け部材はEMARFを使って既存部材に合わせながらデザインと加工を行ってもらい、Rhinoceros, Emarf, VRなど最先端技術も使いながら完成形の確認や意思決定が行いやすいようにしてもらい、ND3Mさんにオファーできてとても良かったです。プロジェクトの概要は以下のND3Mさんの公式動画を御覧頂ければと思います。業務オファーも受け付けているそうです。

HoloLens2と多面体モックアップイベント

Microsoftから販売されているHoloLens2を使った建築系イベントをワイクウーデザインの桑山さんと企画し、10月29日(木)に開催しました。HoloLens2は最先端技術やトラッキングを使ってMR(複合現実)を取り扱うデバイスで、建築系で使ってみようという主旨でイベント開催しました。イベント紹介はCompassから確認できます。

桑山さんのnoteでも紹介して頂いておりますが、桑山さんは瓦の設置、私は多面体の組み立てをHoloLens2を使ったワークショップを開催し、Zoom, Clusterとも同時中継するというイベントでした。


VRミートアップ三重

私はHoloLens2を構造設計で使うテーマで、以下のようなものを紹介しました。まだまだ設計・監理の現場で使うには少し時間がかかるかもしれませんが、数年後には普及することは間違いないでしょう。HoloLens2の実装自体はUnityがよいのですが、能力的にまだできないのでRhinocerosのアドオンFologramを使ってMRを実現しました。

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Rhinoceros,Grasshopper, EEL, Fologramを使って構造モデルや応力解析結果が短時間でAR, MRで確認できる面白い技術です。UIボタンはGrasshopperで無理やり作成していますが、マウス、キーボードを使わずに指のみで操作できます。

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実際の紹介動画は以下をご覧下さい。

今回のイベントでは、このHoloLens2を装着しながら参加者に直径2m程度の多面体(12面体)を組み立ててもらい、完成後に解析結果(応力、変形)を1/1スケールで実物に合わせて確認してもらいました。多面体については木部材(地獄組の余った部材)と金物(Rhinoで作ったデータをMeviyというオンライン金物発注サービスで製作した金物)をつかった構造体で、概要は以下の通りです。細かい内容は今度noteで紹介したいと思います。

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組立は30分程度で、建築系以外の方も参加されていましたが楽しんで組立を行ってもらい、完成後は力の流れの説明などをして構造教育にふさわしいものだと感じました。最近はこのHoloLens2を使ったデモを紹介する機会が増え、HoloLens2を使ったコンテンツを引き続き開発していく予定です。イベント後の懇親会も良い思い出となりました。

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Clusterでの建築構造授業

毎年行っている名古屋市立大学での特別講義(12月実施)もオンライン対応を余技なくされましたが、40名程度を相手にZoomで淡々と講義を行うのも面白くない(受ける側もそうだと思いますが)と思い、Clusterでの開催を実施しました。HoloLensイベント時に作成したワールドを発展させてVR空間内に様々な構造3Dモデルを配置し、スクリーンを設置してそこに動画やスライドを流し、ゲーム感覚でワールドを移動しながら講義を行いました。OculusのようなHMDを装着すれば、実際のスケールで体験できます。生徒の反応はとてもよく、コロナ禍の影響は2021年も続くと思うのでまた積極的にこういったオンライン授業も実践していきたいと思います。

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まとめ

長文ですが、読んで頂きありがとうございました。2020年はコロナ禍の生活と働き方と教育について、考えながらも実践する機会が多々あり、いろいろな学びと貴重な経験をすることができました。このような過酷な状況の中、従来通り、仕事を継続的に発注頂いた方々には感謝しかありませんし、新しい年は恩返ししながらもより一層、業務の質を高めていきたいと思いました。これからの展望については、またnoteでまとめますが、2021年は会社の節目として特別な年になると思っています。新たな社員を迎え入れて、構造設計、デジタルエンジニアリングを組み合わせた仕事を展開していきたいと思います。またEELについても更にアップデートを行い、構造設計や製造がより円滑にできるようなシステムにしていきたいと思います。(12月予定していましたが、もう少しかかりそうです)

2021年もよろしくお願い致します。


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