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故郷で上演するということ(南出謙吾)


数えてみれば、故郷を離れて23年が経っていました。

25才の時に、石川は加賀の山代から、遅きに演劇にあこがれ大阪へ出た身としては、こうして、金沢での上演の機会をいただけたことは、とても有難いことです。今は、半芸半サラ、つまり、サラリーマンとの兼業劇作家として生きています。

まずは、ひとめぼれした俳優、谷恭輔さんを見ていただきたい。
柔らかな声、未来を開拓する熱い魂を、見事謙虚に封じ込めた身体。

演出の森田は、金沢に長期滞在し半ば拠点とし、北陸の風土に身を浸し、私の戯曲の奥底に眠る、手触りの源に迫ろうとしてくれました。小説や映画では決して拾うことのできない、人物のニュアンスを探求する演出家です。

私の故郷は、金沢みたいな堂々たる全国区の都市ではありません。
自然は豊かだけど絶景とまで言えず、雪は降れど驚くほどでもない。
温泉の風情といっても中途半端に近代的で、秘境の要素は皆無。
田んぼの真ん中の特急の止まる駅には、忽然とショッピングセンターが建つ。
のどかな町は、気味悪く近代化して、緩やかに衰退している。
どこか、まるで、今の日本の縮図のようにも思えてきた。

それでも自分は故郷が好きなんだと、つくづく思う。帰郷の際には、飽きずに風景を長く眺め続けている。バスの会話に聞き耳を立ててしまう。弱々しい活気、失策の町並み。インパクトに欠ける地殻変動がもたらした自然の造詣や、気象。そこに立ち、それを見る。そうするとやはり何か沸くのです。

今回の作品は、とある一人の人物の半生を描いたひとり芝居です。

実家のまどから 365×16年も。か、だけ、か。

■次回公演情報
らまのだ7かいめ公演
「あまやかな足音」

脚本 南出謙吾
演出 森田あや
出演 谷恭輔(KAKUTA)

ー金沢公演ー
金沢21世紀美術館
芸術交流共催事業アンド21
2022年11月26日(土)〜27日(日)
※25日(金)プレビュー公演
会場:金沢21世紀美術館 シアター21

ー東京公演ー
2022年12月2日(金)〜4日(日)
会場:3331 Arts Chiyoda B104



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