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東大ロー2023 再現答案①民事系66.1点

1 再現答案

第1 大問1(法令名は民法)
1 AはBに対して甲不動産の管理処分を委託する代理権を授与しており、その「処分」には担保借入を行うことも含まれていたのだから、本件抵当権1設定契約は有権代理(99条1項)として効力を生ずるのが原則である。
2 しかし、本件抵当権1はA名義で借り入れた金銭1000万円の担保として設定されたものであるのにも関わらず、その1000万円をBは自らの経営する事業の資金として用いるつもりであったのだから「代理人が自己の…利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした」と言える(107条)。そうすると、かかる目的につき、「相手方」たるCがその「目的を知り、又は知ることができた」場合には無権代理とみなされ、本件抵当権1設定契約は無効となる(107条、113条1項)。

第2 設問2(小問1)(法令名は会社法)
1 Hの請求の根拠は847条1項、3項に基づく責任追及の訴えである。まず訴訟要件を満たすか検討する。D社は「公開会社でない株式会社」であり、Hは「株主」であるから原告適格を有する(同2項)。またHはD社にEに対して1000万円の支払いの責任追及の訴え提起を請求したが「60日以内」にその訴えを提起していないためHが訴えを直接提起できる(同3項)。管轄についてはD社の「本店の所在地を管轄する地方裁判所」に訴えを提起できる(848条)。よって訴訟要件は満たす。では本案は認められるか。
2 HはEの423条に基づく任務懈怠責任を追及することが考えられる。
(1)まず、本件抵当権2設定契約(以下本件契約という)は「取締役」であるHの「債務」を「株式会社」たるD社が物上保証する契約であるから間接取引(356条1項3号)にあたる。D社は「取締役会設置会社」であるから本件契約には「取締役会」の決議が必要になる(365条1項、356条1項柱書)ところ、本問でかかる決議は適法にされており問題ない。もっともかかる「取引をした取締役」は取引後遅滞なく「当該取引についての重要な事実」の報告義務がある(365条2項)ところ、かかる義務に反した点と言えないか。
 「重要な事項」とは、同条の趣旨が間接取引についても経営の迅速化のために取締役会の決定を優先した一方で会社利益の保護のためにかかる決定の基礎となる事情についての変更がある場合にはそれを報告させる点にあることに鑑み、取締役会決議の判断の基礎事情を変更させる事項をいうと解する。
 本問では、Eは海外カジノで大儲けをして丙債権を弁済する予定であったのに、そこで大負けして多額の借金を負い、資産を喪失しており、かかる事情を知った場合、取締役会は間接取引を許容しない判断に至ると考えられるから、基礎事情について変更があり、「重要な事項」の報告がないと言える。したがって、任務懈怠がある。
 その懈怠に「よって」、なんらかの策をとることができず1000万円の「損害」が生じたと言える場合には任務懈怠責任を問いえる。
(2)続いて423条3項に基づく責任追及が考えられる。
 本件契約は間接取引であり結局Eが弁済できずD社に1000万円の支払いという「損害」が生じているからその取引をした「取締役」たるEは「任務を怠った」と推定される(423条3項、356条1項3号)。かかる推定を覆す事情がないか検討するに、そもそもEはカジノで大儲けをするという見通しの甘い返済計画のもと、本件取引に及んでおり「任務を怠」っていないとは言えないであろう。したがって「任務を怠った」といえ、1000万円の賠償請求ができる。
(3)さらに、本件取引においてEは自己の利益と会社の利益が衝突し忠実義務違反(355条)をもたらす恐れのある特別利害関係に当たり、本件取引の「議決に加わることができない」(369条2項)のに、それに参加しお願いする希望を述べているから同条違反として「任務を怠った」といえないか。
ア 同情の趣旨は特別利害関係取締役が役会決議に参加することで公平な決議が保てなくなることを防ぐ点にある。そうすると、決議に加わらずともかかる公平性を害する以上は、「議決に加わることができない」とは会議そのものに参加することを禁止する意味であると解すべきである。
イ 本問では、確かに決議に加わっているわけではない。しかし、Eは本件決議時に本件取引をお願いする旨の希望を述べており、会議に参加しているため同条に反し「任務を怠った」と言える。
 かかる任務懈怠「によって」本件決議の公平性が阻害された結果、本件取引に至ったという事情がある場合には「損害」として1000万円の賠償請求ができる。

第3 設問2(小問2)(法令名は民事訴訟法)
1 まずIが応訴しているものの、Iは「当事者」ではなく無効ではないか。「当事者」(134条2項1号)とは定まらなければ訴訟が開始できない点で基準の明確性が要求されるため訴状記載の者をいう。そうすると「当事者」はEとなり、Iは受継しない限り訴訟追行権限がないといえる。
 本問ではHが訴状を提出する4日前に「当事者」たるEが死亡しているから、潜在的訴訟承継(124条1項1号類推適用)もなく、「訴えが不適法」で「却下される」のが原則である(140条)。
2 しかし、かかる場合に訴訟経済に反するから、任意的当事者変更により適法とならないか。任意的当事者変更とはHE間の旧訴の取り下げとHI間の明文なき主観的追加的併合を合わせたものをいう。
 裁判所は、後者については本問では濫訴の恐れも訴訟混乱の恐れもなく認めた上、前者についえは訴えの取り下げ(262条2項)に準じて訴訟を取り下げることとなる。以上

2 追記(順位等がもしわかったら追記します)

 設問2、書きすぎです→設問3、8分で書きました。配分をミスったのは実力不足等、色々原因がありますが、論文発表から約3週間論文の書き方やそもそも商法自体から離れていたこともあって、自分の中の論文の感覚が薄れていたことが大きいと思います。
 しかも、(1)は何書いてるかよくわかんないですね。(1)をなんで書いたかというと、まず問題文に『複数の法律構成が考えられる場合にはそのすべてに触れた上』と書いてあり、間接取引以外にも複数筋あるんか〜と躍起になって、別の筋を探してしまったのが一つです。あとは、そもそもEは、カジノで大儲けをして会社が保証する銀行への借金を補填しようとしており、その事実を言っていなかったとしたら、それ自体が356条1項柱書の「重要な事実の開示」義務に反することになるよなあと思い途中まで書いていたところ、問題文末尾に『なお、本件決議は適法になされたものであったことを前提としてよい』と書いてあることに途中で気づいてしまったことも変なこと書いた原因です。「うわ、見逃した、決議自体は適法かよ、終わった〜紙面が足らない、時間もやばい、もう書いてるよ〜、どうしよ、あ、365条2項ある、これは決議後の話だからなんとか無理矢理これについて書いちゃお〜」という安直な方向転換をしました。
 でもこれ、『決議が適法』っていうのは、369条1項違反がないのか、そもそも、決議に関する全事項が適法であったのか(だとすると、(1)と(3)で書いたことに点数が1点も入らないことになります…)、いまだに意図がよくわからない問題だったと思います。(1)(3)0点だとすると、偏差値換算で66.1点ももらえるはずがないので多少なりとも点数入ってると考えるのが素直かと思いますが…わからないですね。東大ローむずかしい。


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