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シュリーマド・バーガヴァタム

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ヨガを実践している人や、サーダカー(霊的探究者)が、最終的に到達する聖典が『シュリーマド・バーガヴァタム』です。『シュリーマド・バーガヴァタム』は、『バガヴァッタム』あるいは、『バーガヴァタ・プラーナ』とも呼ばれています。『シュリーマド・バーガヴァタム』は、『バガヴァッド・ギーター』を含む『マハーバーラタ』や、18もの『プラーナ(インド神話)』や、膨大な『ヴェーダ』を4つに編纂した聖賢ヴィヤーサが、苦しんだ末に、最後に書きあげた聖典です。

その理由は、あの有名なシュリー・クリシュナの時代を描いた叙事詩『マハーバーラタ』を編纂したのにもかかわらず、パーンダヴァ兄弟の敵である邪悪なカゥラヴァ兄弟の想念や波動を想い起こしたため、安らぎがまったく得られなかったからです。そんな苦しむヴィヤーサに、手を差し伸べたのが天界の聖者ナーラダで、「バガヴァン(神)とバクタ(帰依者)の信愛の物語である『シュリーマド・バーガヴァタム』を書きあげなさい。」という言葉でした。

内容は、ヴィシュヌ神やその化身と信者との美しくも親密で模範的で理想的な関係を描いたエピソード集です。神は、空間にも、時間にも、原因結果の法則にも、何にも束縛されません。しかし、ただひとつだけ束縛されています。それは、信じる者との絆、信愛(バクティ)です。

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以前、あるシヴァナンダヨガの先生から、「家族から、ヨガを実践したり教えたり、またインドに旅してヴェーダーンタを学ぶことに反対されている。」と悩んでいることを打ち明けられました。ご本人は、家族を捨ててまで自分の歩みたい道を行くべきか、あるいは自分を押し殺して家族に奉仕すべきか、かなり悩んだそうです。このような悩みを持つ、ヨガの先生方や霊性修行者は非常に多いです。その人その人の霊的成熟度によって答えはさまざまですが、そんな時はこの『シュリーマド・バーガヴァタム』に答えがあると思います。極端ですが、この世のあらゆる悩みや心配や問題のすべての答えは、この本にあると思います。

『オーム・ナモー・ナーラーヤナーヤ』と常にヴィシュヌ神の御名を唱えていたため、悪魔の父ヒランニャカシプから筆舌に尽くしがたい拷問を受けていたプラフラーダの話には学ぶべきものがたくさんあります。

また、愛する父親の膝の上に乗ることさえ許されなかった幼子ドゥルヴァが、深い悲しみの内に森に入って『オーム・ナモー・バガヴァテー・ヴァースデーヴァーヤ』とひたすら唱えながらナーラーヤナ神を憶念し、世俗的霊的恩寵を勝ち得た話も涙が出るくらい美しい話です。

解脱を主から求めず、むしろ飢えて苦しむ人々を和らげるために道を選び、自分のことは一切かえりみず、食物も水も持っている物すべて分け与えて犠牲の精神を示したランティデーヴァの物語は、私たちの心を浄化してくれます。

『シュリーマド・バーガヴァタム』は、ヴェーダーンタの精髄そのものと言われています。世俗的生活と霊的生活の融合、真理と正義、無執着と識別、感官の制御と心の純粋さ、師匠と弟子のあり方、義務と権利、神の慈愛と恩寵、平安と至福、犠牲と不滅の甘露、神性の一体性原理などが、これほど霊的エッセンスが凝縮されている聖典は『シュリーマド・バーガヴァタム』以外ないと思います。もしこの世から本がなくなり、1つの本だけ持つことが許されるのなら、私は間違いなく『シュリーマド・バーガヴァタム』を選びます。ただ、私はすべての人にはこの本はおすすめはしません。というのは、本当に神聖体験や神性そのものを求めている人でないと、共感も感動も感じられず、退屈なただのおとぎ話で終わってしまうからです。映画やテレビドラマにあるような、エンターテイメント的な面白さを求める人には、向かないと思います。

実際に、この聖典を理解したり、実践できる人々は少ないようです。敬愛するサティヤ・サイババは「『シュリーマド・バーガヴァタム』を理解し実践するには、『悪い仲間を避けること』、『善い仲間を求めること』、『常に善い行いをすること』、『永遠と束の間のものを識別すること』の4つの資格が必要。」とおっしゃっています。

霊的な高みの上がるために、信念を持ってヨーガの道を歩んでいる人々や、過去世からの善行の結果で純粋に神を求めることができる人々には、『シュリーマド・バーガヴァタム』ほど至福と安らぎを得られる聖典はないと思います。

補足ですが、聖典はその人その人によって読む時期があります。ちなみには、私はヴェーダーンタ哲学の詳細である『ウパニシャッド』を20代で既に読んでいましたが、実際に内容を理解し、日々の日常で実践し始めたのは30代を過ぎてからです。あと、『バガヴァッド・ギーター』は20代から読んでいますが、10年以上経った今でも繰り返し読んでいて、読むたびに新しい発見があります。これは、知って、聴いて、熟考し、実践して得た知識が骨肉化されるまで、忍耐強く待たなくてはならないということかも知れません。ヨーガ、ことにスピリチュアルな事柄は急いではならないということを意味しています。

■ シュリーマド・バーガヴァタムに関するバガヴァン・シュリ・サティヤ・サイババの御言葉を下記に記しておきます。

『バーガヴァタムは人間に9つの信愛の道を説いています。私たちはこの不滅の書に語られているさまざまな物語を読み、耳を傾けるべきです。バーガヴァタムという言葉には、内的意味があります。バはバクティ(信愛)を、ガはギャーナ(英知)を、ヴァはヴァイラギャ(無執着)を、タはタットヴァ(神性原理)を、ムはムクティ(解脱)を指しています。バーガヴァタは単なる神の物語(バガヴァタ・カタ)ではありません。バーガヴァタムはテルグ語のバガーヴァターム(私たちは良くなる)を意味しています。この内的意味を知り、それに従って行動し、解脱に向けて努力しなさい。-サティヤ・サイババ-』

『バーガヴァタムは神の栄光を賞賛すると同時に、信愛、全託の精神、霊性の道の本質、帰依者の無執着の観念について述べています。バーガヴァタムは、行為は信愛をこめて行われなければならず、それによって英知に導かれていくという、信愛の教義を提唱しています。神に恩寵を授けさせるのは、あなたの信愛のみです。バーガヴァタムは、バーラタ(古代インド)の文化には、バクタ(帰依者)、バガヴァン(神)、バガーヴァターム(私たちは良くなるというテルグ語)の3つの主な要素があると述べています。神のみが帰依者の拠り所です。神は帰依者の財産であり、命であり、すべてです。-サティヤ・サイババ-』

『バーガヴァタム全編は、傑出した帰依者たちの誠実さ、揺るぐことのない心、ひるむことがない信仰、完全な全託、深い信愛を明らかにするエピソードで溢れていると同時に、神の威風と愛と慈悲を褒め讃えています。-サティヤ・サイババ-』

*画像➀ <画像左が、日本ヴェーダーンタ協会・刊の『シュリーマッド・バーガヴァタム』。真ん中が、サティヤ・サイ出版協会・刊の『シュリーマッド・バーガヴァタム』。画像右が、蝸牛社・刊の『バガヴァタ・バヒニ』ですが、今はサティヤ・サイ出版協会から出てるようです>

*画像② < 日本でただひとつ存在する、シュリーマド・バーガヴァタムの全訳、『バーガヴァタ・プラーナ(上)(中)(下)』(星雲社・刊) 全3冊 >

愛と優しさをいっぱいありがとうございます!