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聖音オームのマントラ(プラナヴァ・マントラ)

まず、マントラについて。「マ」はマナナ(反芻すること)で、「トラ」は救うことを意味します。つまり、マントラとは、それを唱えて瞑想すれば救うものを意味します。マントラは、浮世の悲しみや苦しみや痛みや死といったとらわれた状態から、私たちを救ってくれるものです。

シヴァナンダ ヨガのクラスでは、何度もオームのマントラを唱えます。オームはプラナヴァとも呼ばれています。聖音オーム(プラナヴァ・マントラ)を唱えることは、大切な意味が込められています。オームは宇宙の原音、世界が創造されたときに最初に発生した音が聖音オーム(プラナヴァ)です。

まず、シヴァナンダヨガのクラスの始まりと終わりに3回唱えるオーム。この3回のオームは、身体と心と魂を浄化します。ちなみに、お祈りの後に「シャンティ・シャンティ・シャンティヒ。」と3回唱えられるシャンティ(平安、平和)は、身体と心と魂の安らぎを祈念します。すべてのマントラの中で、オーム(プラナヴァ)は最良で最高であり、またすべてのマントラの頭部であり王冠と言われています。

シヴァナンダヨガのアーシュラムで唱えられているシヴァ神を讃えるマントラOm Namah Sivaya(オーム・ナマッ・シヴァーヤ)、ヴィシュヌ神を讃えるマントラOm Namo Narayanaya (オーム・ナモー・ナーラーヤナーヤ)など、神々の御名の前には必ずオームがきます。すべてのヴェーダ(知識)の母であるガーヤットリー・マントラでさえ、最初にオームがきます。これは、オームより上位にくるマントラはないことを意味します。すべての音やマントラ、そして万物はもともとはオームに包括されていたので、最終的にみずからの源であったプラナヴァ(オーム)へと融合します。

ヴェーダーンタ哲学では、オーム(プラナヴァ)は、ブラフマン(絶対実在・真理)のシンボルであると言われています。オーム(プラナヴァ)を知ることで、マーヤ(幻、非真実)のヴェールから解き放たれて最高の英知に達し、ブラフマン(絶対実在・真理)そのものに到達すると説かれています。ただオームを唱えるだけでは意味ありません。まずオームを唱えている時は集中し、完全に感覚や感情がコントロールされている必要があります。あらゆる邪心や悪い想念はもちろん、エゴや欲望から完全に解き放たれている必要があります。そのときはじめてオームはあらゆるものから自由で、完全な至福へと到達します。

聖者アーディ・シャンカラが注釈した聖典『マーンドゥーキャ・ウパニシャッド』には、聖音オーム(プラナヴァ)に関する賛美が美しく記されています。「不滅のブラフマン(絶対実在・真理)であるオームという音節は、全世界そのものである。過去・現在・未来を超越するもの、それらはことごとくオームである。」と。聖者アタルヴァがナーラーヤナ神のダルシャン(拝謁)を受けた体験を記した美しい詩『ナーラーヤナ・ウパニシャッド』には、「オームはこの上ない至福の状態である。すべての生き物の命を支えているのは、オーム(プラナヴァ)にほかならない。ヨーギは、オームを唱えることにより、輪廻の鎖から解放されてきた。」と記されています。

聖音オーム(A・U・M)は、目覚め・夢見・熟眠の況位にそれぞれ相当する、全宇宙・光輝・純知をあらわしています。Aが強調される念想のとき人にあらゆる欲望を認識させ、Uに集中するとき英知が増し、Mが強調される念想のときは内在の神霊の至高者への融合が達せられます。A・UからMという順番にオームが響き、最後には音のない状態である無音の静寂に帰します。その時、まさにオームは、平安・恩寵・不二一元を象徴しています。たった3文字で表現されるオームは実は、こんなにも深い意味があるのです。

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