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序章 入院生活から手術まで(後)

 手術の話は入院して数日後に聞かされた。最初に予定日を聞かされた時は執刀日の10日も前のことだった。その間日に日に激しくなる痛みに耐えるよりほかなかった。どうしてそんなに日が開いたかというと、血糖コントロールの期間があったからだ。十分とはいえないが血糖値を落としておかないと感染症のリスクと術後の回復が遅れるとのことだった。それを考えると10日はあまりに短くて心許ないとも感じるし、容体は日に日に悪化していくのを見れば10日はあまりに長いとも感じてしまう。

 手術そのものは不思議と怖いとは感じなかった。これもおそらく一ヶ月以上も痛みに苦しんだからなのだと思う。骨が脆くなっている部分の2節ほど下の骨と胸骨の間に固定器具をつけ、その間の圧迫されている神経の経路を確保して脆い部分に負荷が掛からなくなるようにする、言われれば他の部分よりも想像に容易いかも知れない、それでも怖いとはあまり感じられなかった。

 こうして手術に向けてカウントダウンの生活が始まっても痛む部分は痛いし、楽な姿勢もほとんどない。部屋の中で日がな一日ラジオを聴いているのが日課になってきた。そのうち病棟のナースとも仲良くなって顔と名前を覚えるようにもなった。また、早いうちからリハビリ担当の人が毎日来てくれてそれが楽しみな時間にもなってきた。

 ナースに関しては良くも悪くも朝倉いずみってのはいるもんだなと毎日思うものだった。採血が下手くそで何度も失敗し最後に成功するとこれで今日は良い気分で帰れると喜ぶのもいるし。かと思えば頼もしいけど愛嬌はまるでなしな人もいる。

 こうして入院生活には慣れてきたが、何度も書くように病状は日に日に悪くなる一方で、もはや手術後の事を期待するよりほかなかった。それもまた手術が怖いと思わなかった原因だと思う■

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