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痛い目に遭う

【入院日記3 2023年2月7日(火) 23日目】

 真夜中に点滴があったり(それも翼状針で)起床前1時間くらいから向かいのジジイがガタガタとやたらと音を立てて寝られたモノではない。起床時間前から音立てたり灯りを点けたりとそういうことがよく平気でできるよなと思う。

 起床と同時にコンビニへ行き、コーヒーを買って飲む。いつもはSサイズだが今日はMサイズ。コーヒーが苦すぎてしかも熱くてなかなか飲めないのに、手術後やっと飲めるようになって感無量だ。朝のルーティンがこうやってひとつ戻って来た。その後は部屋に戻って写経をする。これももうちょっと楽になったらデイルームで行いたいが、それができる頃には退院するのだと思う。

 今回も言ってはなんだけど同室の人には恵まれなかった。向かいのジジイはかつての「病棟動物園」で登場した「ハゲ」と同じで。ちょっと気をつければ立てないで済む音を何度も何度も立てる。周囲に配慮なんてできないのだろう。己の本能が命ずるがままに動いている感じだ。

 さらに隣にいるオッサンは独り言がうるさい。「ああ、そうだ。」だの、「なるほどね。」だの独りでぶつくさ言っている始末、さらに「はぁ」だの「あーあ」だのといった聞くのも嫌になる溜息がやたらと多い。横で聞いていて気持ちが悪い。誰も聞いてないし聞こうとも思っていない。とにかく黙っていろ。それでもまだ「病棟動物園」で登場した「屁こき太郎」や「ハゲ」のように平気で屁をこいたりゲップをしたり、食事の時にクチャラーにならないだけマシなんだけど。今回はまだ思うように動けないのでデイルームに避難もできない。(夕飯後から消灯くらいの時間しか居られない)とにかく今は我慢だ。一生のつきあいになるわけではない。

 体調は毎日のように変わり、今日はやたらと身体が痛くて寝返りも打てない。この痛みは何なのか、昨日はしみるような痛みがあったが今日はそうではなく明らかに筋肉痛だ。考えてみれば2年以上もガッチリと固定された脊椎がその支えを失い、周囲の筋肉も自由に動くようになったのだから2年分の筋肉痛に見舞われてもおかしくない。しばらくこの痛みと付き合わないといけない。まだ傷口も塞がっていないから湿布を貼ることもできないし、坐薬も今回は使えない。オマケに週末には気圧の乱高下が予想されていて今からその前兆を感じる。

 今日は午前中に傷口の消毒があったが、昨日はなかったのに背中の左側に皮膚のただれがあるらしく、それが傷口の近くと言うこともあり大騒ぎ、感染しないかどうかとざわついているが、当の本人は見えるでもなくどうなっているのかもわからない。お昼前に皮膚科に呼ばれて診察を受け、薬を塗ることに。右脇の傷はやはり手術の時にできたモノと思われ、左側と使う薬が違っていた。自分にはあまり自覚がなくてちょっと痒いくらいにしか思わないのだが、知らぬが仏と言うこともあるし「あらら、困りましたね」と困ったフリでもしていればいいかなと思う。

 皮膚科の先生の診断では右脇も先程も書いた様に手術の時の固定がキツすぎた為にできたもので、今日新たにできたものはテープかぶれらしい。自分の皮膚ってそんなに弱かったかなと疑問にも思う。かぶれない(けど粘着力も弱い)テープを使う事となる。

 皮膚科に行く前に点滴を受ける。これがあと数回残っているのに夕べでカテーテルが使えなくなってしまい今朝早朝は翼状針で、午前中の回はカテーテルを採血で使う部分につけて点滴を受けることができた。

 自分は以前の入院の時からどうもカテーテルを付けにくい体質らしく、せっかく付けてもすぐに使えなくなってしまう。研修医でも歯が立たず上手なナースがいたのに今回はもういない。誰もが異口同音で「硬い皮膚だなぁ」、とか「よく逃げる血管だなぁ」と人のことを爬虫類か何かのように言うが、当の本人には深刻な問題だ。一昨日の研修医だって結局2回失敗してそこが今日になって青痣になっている。僕の腕はもう冗談抜きで痣だらけだ。

 結局主治医が明日からは抗生剤を服薬にする事に決めてくれたが、明日の早朝もう一度点滴が、それも翼状針で行われるので気が重い。この点滴問題も入院するたびにますます深刻になってきていてパパッと解決できるような人が一人くらいはいないのかと思う。

 今日は身体も痛いし、安静にしているべきだと思いほとんど部屋からは出なかったが、部屋から出なければ出ないで隣のオッサンも向かいのジジイもやりたい放題で気が狂いそう。とにかくイヤホンが常時必要だ。

 こんな生活、まだあと10日くらいは続くかと思うと今からちょっとうんざり。もっと病室の外に出てデイルームにいても辛くなくなるくらいにまでなりたいものだ。それにしても同室にはどうしてこんな輩ばかりなのだが、考えただけでもウンザリ。それでもこっそりとモノ食うバカがいないだけまだ良いのかも■


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