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療養日記 2022年11月4日 『韓(から)の国事情〈後篇〉』

(この日記は前日『韓(から)の国事情〈前篇〉』の続きでございます。元が長文すぎたので前後篇に分けました。)

 話はがらりと変わるが先月の梨泰院での転倒事故は本当に凄惨たるものだったと思う。勿論僕も梨泰院には何度となく行っているし、事故の場所も通っていないわけはないと思う。今現在その責任の所在が問われているが警察の対応の悪さがやり玉に挙げられている。あれだけの事故だからその責任の所在を追及したくなるのはわかる。その場にいた著名人がこの人見たさで人が殺到したなどと非難されたり。押せ押せと周囲をあおり立てていた人物がいるだのと、まさに誰かに責任を押しつけたい気持ちが見え見えなのも困る。かと思えば亡くなった人の中には俳優もいたと言うから気の毒にも思う。

 この事故はどうしても日本の渋谷と比較したくなる。梨泰院という場所は日本で言うところの渋谷みたいなところとは言えないが、似ているところは多々ある。渋谷はこれまでもハロウィンのバカ騒ぎで警備が厳しくなっていて、他にもボランティアが積極的に参加することで安全を保たれているが、梨泰院にはそれがまるでなかったようだ。

 大混雑をただの人流のせいと静観していたからこそあそこまでの惨事が起こったのだと思う。そして本当に何かが起こるまで静観するか、見て見ぬ振りをするか、問題意識を持たない悪いクセがある。つまり当事者意識の欠如が甚だしく何事も他人事なのだ。しかしいざ何か起こったときはまるで当事者かの如く逆上する。これが韓国人気質のいただけぬ点だ。

 過去にも韓国では誰かが気付いて声を上げれば避けられたであろう当事者意識の欠如が原因の事故があった。どれもあまりにインパクトが強すぎてよく覚えている。

 こんな初歩的な意識の欠如で日本ではいくらでも防げる惨事が韓国では平気で起こるのはなんとも残念でならない。

 まず1995年大邱(テグ)で地下鉄工事中にガス爆発があった「大邱地下鉄上仁(サンイン)駅ガス爆発事故」。工事中にガス管を損傷させたことに気付かなかったというお粗末なミスで近くの学校の生徒を中心に100人以上が犠牲になった惨劇だ。普通はガス管を損傷させるくらいの異常を感じたら作業を止めて安全確認くらいはするだろうに。それさえできずに起きた事故だ。

 同じ年にはデパートが崩落して500人近い犠牲者が出ている。あまりにショッキングだったので覚えている人もいると思う「三豊(サンプン)百貨店崩落事故」だ。ソウルの江南にあったこのデパートはそもそもが欠陥建造物。強度を保つ柱も少なければ鉄筋に然るべき加工もせず、それだけでなく鉄筋そのものがまるでない柱もあったらしい。コンクリートも外国から急ごしらえで輸入した粗悪品だったらしい。

 そんな材料で作られた建物が設計の段階から何度も見てくれを良くさせる為に変更に変更を重ねた結果建物はさらに強度を失う。その上自分達の都合で階数をひとつ追加までし、そこに重たいエアコンの室外機を乗せていたらしい。こうして完成時から徐々に壊れちょっとずつ建物に異変が起こっていることに気付いていながら何の手も打たず最後は客で賑わう時間帯に崩落。この惨劇は今でもドラマの中で登場することがある。(ムーブ・トゥ・ヘブンなど)

 先程の地下鉄工事ガス爆発があった大邱の地下鉄ではその後2003年に放火で大惨事が起きている。所謂「大邱地下鉄放火事件」だ。自殺願望者の男が車内にガソリンをまいて出火。車両の一部に燃えやすい素材があって地下鉄の電車は編成単位で炎上。燃えただけでなく駅員がそれに全く気付かず通報が遅れ、逃げた乗客の通報でようやく大事に気付いたことなど初動からお粗末。

 そこに反対側からの電車がやって来てあっという間に火が燃え移る。火災を認識していればホームに入る前に止められた電車が燃えてしまったこと、後から来た電車の方が大勢人が乗っていて大半が焼死してしまったことなどで危機管理や日頃の危機に対する意識の甘さが指摘されて大問題に。

 実はこの火災事故の1ヶ月前自分も大邱の中央路駅を利用していた。大邱滞在時一番利用した駅だったのでおそらく大邱の地下鉄の中ではもっとも乗降客数の多い駅だったのではないだろうか。偶然とは言えそんなこともあり自分ももしかしたらと考えるとゾッとした。異国で地下鉄火災に巻き込まれて死にたくはない

 この事故の報道では当初焼死者80名程、行方不明者多数とNHKをはじめ具体的な数字を報告していなかったのに、最初から日テレは死者180名以上と言い切っていてそれがまだ行方不明者の段階だったことからひどい報道だなと腹立たしくなったのを覚えている。死者の数字に差が出たのは後からやって来た列車に火がついて不明者が急増したからだ。数字に間違いはなかったとは言え日テレがとにかく不明者を殺したがるのは今でも変わっていないような気がする。

 それから10余年後に今度は海難事故が起こる。記憶に新しいという人もいると思われる「セウォル号沈没事故」だ。船体の急な進路変更が原因で積み荷だか積載していた車だかのバランスを崩し横倒しになったフェリーが乗客を避難させずにそのまま沈没してしまい、300人以上の犠牲者が出る始末に。

 乗船客の多くが異常に気づき、尋常ではない傾斜に不安を感じている中船長からはその場で待機するようにと呼びかけがあった。この時代にはすでに韓国最大のSNSカカオトークはサービスを提供して数年。犠牲者が亡くなる直前まで外部と連絡を取り合っていて事故の生々しさが犠牲者が残したログなどの形式で公開される。同時に事故当時の運航、運営会社側のお粗末加減も露呈した。これもまた危機意識の欠如が原因。何だってこんなに他人事なんだよと今思い出しても他国の出来事だというのに物凄く腹立たしい。この事故では修学旅行中の高校生も多数亡くなっていてSNSで最後まで救いを求めている様子も明らかにされた。それを思い出すだけでも今なお腹立たしい。

 そして今回の梨泰院での群衆事故、これもまた危機意識の欠如と通報を無視したがる事なかれ主義が起こした事故だと思う。

 日本の報道番組によっては「ハロウィンで浮かれ騒いで集まってくる側にも責任がある。」などと言い放つ人もいたらしいが渋谷のようにそれを承知でできるだけ事故が起こらないように準備するのと、事故が起こって通報があってもそれを悉く無視するのとでは大違い。仮に渋谷が事故の時の梨泰院のように放置状態だったら起きた事故の被害は梨泰院の比ではないんじゃないかなと容易に想像できる。それでも渋谷では死者はおろか怪我人も報告されなかったのはやはり警察、消防を始め地域の商工会からボランティアに至るまでの大勢の人がひとつの目標、すなわち事故が起こらないようにすることに尽力をした結果だと思う。あまり見たくはないがこの辺りに日本と韓国の大きな差が見出せる。

 ハロウィンのあのパリピの悪ノリは正直見るにつれ気分が悪くなるがそれでも安全に楽しんでもらおうと縁の下に大勢の力持ちがいることには感謝すべきだろうと思う。またお隣韓国でも来年からは警備体制もガラリと変わって梨泰院が安全な街になることを真に願うばかり。

 韓国は日本に較べると繁華街の道が狭いという印象をうける。それがこんな形で現れるのは本当に残念なことだ。もっと梨泰院が安全な街に生まれ変わることを切に願う。だって個人的意見だけと渋谷よりも梨泰院の方が断然楽しいと思う。自分はここ数年病気ということもあって韓国を留守にしているがまた機会があればいつでも行きたい。その時にはもっと安全な町になっていることを願う■

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