見出し画像

ブルースは絆〜我が救世主ブルースブラザース

ジョン・ベルーシのドキュメンタリー映画が上映されるという。

ジョン・ベルーシといえば、映画「ブルースブラザース」。僕の人生を支えてくれた一本である。

この映画との出会いは今から30年ほど前、僕が高校生だったとき。当時の僕は学校に馴染めず辛い日々を送っていた。徐々に成績は落ちていき、いつしか学年で下から十番以内。体力も落ちていき短距離走をすれば必ず嘔吐し、長距離走となれば最下位を独走。当然友達もおらず、青春を謳歌する周囲の連中を見ながら『俺は本当に生きている価値があるのだろうか・・・』などと本気で悩んだりもした。

 そんな僕の支えとなっていたのは音楽だった。僕が惹かれたアーティストは清志郎だったり、ブルーハーツだったりコトバに魅力のあるアーティストたち。家や通学の際、大音量で音楽を聞くことで自分を慰めていた。そのうち日本のアーティストだけでは飽き足らず、洋楽に興味が向き始める。僕の大好きな清志郎や甲本ヒロトが影響を受け、そして歌の中にも出てくる”ブルース”って音楽が気になっていた。演歌や歌謡曲でもブルースと名のつく曲がいくつもある。『ろくでなしブルース』なんていう漫画も流行っていた。なんだよ?ブルースって!知りたい、本物のブルースを知りたい。そんな頃、清志郎がリズム&ブルース発祥の地テネシー州メンフィスでブッカーT&MG'sというバンドとアルバムを制作した。その逸話を雑誌などで読み、少しずつブルースという音楽がどういったものか知ることが出来た。

清志郎がMG'sと共演するキッカケとなったのはブルースブラザースバンドの来日公演の司会を任されたことだったとのこと。そこでMG'sの名ギタリストにしてソングライターでもあり、ブルースブラザースバンドのメンバーであるスティーブクロッパーと知り合う。ブルースブラザースについては、以前モノマネ番組でソックリさんが出演していた記憶があり、ただそんな人たちがいるんだな、というくらいの知識しかなかった。しかしその後ブルースやリズム&ブルースにはまり込むにつれブルースブラザースの映画があることを知り、ジェームスブラウン、レイ・チャールズ、アレサ・フランクリンなども出演しているというではないか!「これは見るっきゃない!」とレンタルビデオ屋へ向かった。

まずビデオのパッケージを見て驚いた。ダン・エイクロイド!?あのゴーストバスターズの人?ブルースブラザースを歌手と思っていたので同姓同名の人じゃないか?と思ったが、しかし脚本も担当している。そういえばゴーストバスターズでも脚本を担当してたよな。さらに主要キャスト何名かに短い解説コメントがあり、ジョン・ベルーシについては今は亡き才人コメディアンというようなことが書かれてあった。こっちの人は亡くなっているのか・・・。とにかく、ブルースブラザースの本職は俳優なんだ。てことはダン・エイクロイドもゴーストバスターズのあの人で間違いなさそうだ。当時の僕はその程度の認識だった。

家に帰って早速映画を拝見。

初っ端からハートを刺激された。兄ジェイクが刑期を終え出所し、迎えに来た弟と再開する。その時に流れる「she caught the katy」のカッコいいこと!その後もずっと僕の気持ちは昂ぶったままだった。
 
 教会でのミサのシーン。牧師に扮したジェームス・ブラウンによる大迫力のゴスペルコンサート。兄ジェイクはここで天啓を受けバンドの再結成を決意する。歓喜のあまりに教会の通路をトンボ返り!「なんだ、コイツは!!」このジョン・ベルーシのパフォーマンスにも度肝を抜かれた。勿論ジェームス・ブラウンの歌唱ついては言うまでもないだろう。
その他にも、オーティスレディングの「お前を離さない」に乗せてショッピングモールの店舗を車で次々とぶち壊すシーンの痛快さ。中古楽器屋でオンボロのキーボードをを店主のレイ・チャールズが弾いて歌いだすと、街の通行人たちがそれに合わせて踊りだすところなどは今でも胸が熱くなる。そしてブルースブラザースのライヴパフォーマンスのカッコよさ。当時、憂鬱な毎日を送っていた僕にとっては最高の救いとなった。その後も何度でも見たいのでビデオを購入。以降もDVDで買い直し今でも時々見ている。

辛く惨めな高校生活をなんとかきりぬけ、その後もいろいろと躓きながら30歳でようやく定職につくことが出来た僕は、なんとか人生を充実させて失った青春を取り返そうと思った。
 いろいろと模索しているうちに「東京スポーツ」で連載していた《週刊プレイボーイを100万部売った名編集長》島地勝彦さんのコラムに魅せられ、その教養溢れる上質な遊び方を知り、大人になってからでもまだまだ人生は楽しめること教えられた。そんな島地さんに心酔していたある日のこと、ふとしたキッカケで10代の頃古本屋で購入したジョン・ベルーシの死について書かれたノンフィクション「ベルーシ殺人事件ハリウッドスターたちとドラッグの証言(集英社、週刊プレイボーイ特別編集)」を久々に開いてみると、なんと前書きを担当していたのが当時週刊プレイボーイの編集長だった島地勝彦さんであることに驚かされた。島地さんも当時、映画ブルースブラザースを見ることで悲しい気分を解消していたとのことである。
 自分の人生において支えとなってくれた方々が意外なところで繋がっていることになんとも感慨深くなった。まさに「ブルースは絆」(ブルースブラザースの1stアルバムのタイトル)。ブルースという音楽に触れることから、それに関連する人や作品の数々に僕は救われてきた。そしてブルースブラザースとはその中でも特に大きい存在である。

ブルースブラザースに感謝を込めて。

ジョン・ベルーシよ、永遠なれ!






 




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?