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うち、皿屋敷とかそういうのやってないんですよ。

割れた皿は元には戻らない。

は?
「割ったのはそちらですよね??」
思わず口にでた。
と、同時に山椒のチューハイが口からこぼれた。唇がピリピリしている。
「これから先の話をしたいと思っているのに、なんで昔の嫌な話ばかり持ち出すんだ」と不満げに言う。
正気か?
「あのさ?金継ぎっていう技術があるの知ってる?」って答えるのが精一杯だった。
確かに、割れたお皿は元には戻らない。人生も同じで、無傷というわけにはいかないし、恋愛だけじゃなく、すべからく人間関係だってそうだと思う。
タイミング・行き違い・勘違い・誤解、色んな原因でヒビが入るし、割れるし、壊れるし、もうそれはどうしたって仕方ないこともある。
でも、金継ぎ…丁寧にやり直そうとする気持ちや態度や誠意とか、そういった努力で繋いでより美しいものに変える事だって出来る。
でもだよ、割り方ってあるじゃん?割ってからの保存の仕方ってあるじゃん??継ぎ方だってあんだよ。
これから先?ってなに。え、どういうこと?
あぁ、なるほどな。全部、なかったことにしたいんですね。
それはね、どだい無理な話ですよ。

捨てたのは自分じゃん

うろ覚えもいいとことなのだが、三番目の元夫・中村慎森(しんしん)の回。
2話めだったかな…
二人が一緒に暮らしている時に買ったソファーをとわ子(元嫁)が捨てたことにショックを受けるしんしん。離婚してもそのソファーは彼にとっては(今もなお未練の残る)元妻との思い出の品なのでしょうけど、元妻はそれをね、粗大ごみに出してしまうっていうね。
「本当は思い出にできない。さよならが言えない。またあのソファに君と座って、なくした時間を取り戻したい。」ってしんしん、色々遅いね。
「なくしたんじゃないじゃん、捨てたんじゃん。捨てたものは帰ってこないよ。私はもう思い出にしたし、さよならも言った。結婚も恋愛も、契約とは違うから、一人が決めたら、それで終わりでしょ。」
ド正論だね。元・嫁。

異論はありますか?

金継ぎの話をするわたしを不思議そうに見ていた。
わかってないんだろうな。
わかってましたよ。そうそう、思い出しました。
皿屋敷…じゃない。皿うどん食べたい。
山椒のチューハイ、美味しかったのにな。
私が言ってないことは、
わかった気になるくせに、
私が言ったことは
わからないふりするよね。

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