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播磨の祭礼:陰陽師の意匠


宮前屋台の梵天

安倍泰成 九尾狐退治

玉藻前の正体を暴く役割を担う陰陽師は、安倍晴明の子孫である安倍泰成、安倍泰親とされるので、どちらかの可能性が高いと思いましたが、安倍泰成のようです。
以下、引用です。

宮前屋台は、上之庄神社氏子の見土呂の旧屋台を購入。梵天は前後が飛龍、左右が安倍泰成九尾の狐退治。狭間は「鎮西八郎源為朝強弓の場」「楠公父子別れ桜井の駅」「布引四段目小桜責め」「生田の森の合戦-梶原源太景季箙の梅-」の四面。水引幕は阿吽の龍で、高欄掛けは須磨一の谷の合戦が刺繍されている。

播州祭り行脚
2024/11/16撮影
2024/11/16撮影
2024/11/16撮影

岸屋台の高欄掛け

2024/11/16撮影

30年ぶりの高欄掛けを新調したことでも話題になった岸屋台。屋台自体は、恵美酒宮天満神社の御幸屋台で、平成元年新調13年まで使用されていたものを平成28年譲渡されました。泥台は台場練り用の仕様のままです。屋根の水切りにも御幸の独特の曲線が残っています(現地での知人の指摘)。

安倍晴明 九尾狐退治

玉藻前の正体を暴く役割を担う陰陽師は、安倍晴明の子孫である安倍泰成、安倍泰親とされるので、どちらかの可能性が高いと思われがちですが、こちらの高欄掛けの題目は安倍晴明とされています。

2024/11/16撮影
2024/11/16撮影
2024/11/16撮影

蘆屋道満 妖術孔雀明王

岸村は、蘆屋道満の出身地とされるので、題目に蘆屋道満の意匠を取り入れたと思われます。しかも正面の高欄掛けです。村にゆかりのある人物を高欄にするのは、妻鹿屋台の高欄掛けの「久津理(くつり)」を思い出させます。

2024/11/16撮影
2024/11/16撮影

源頼光 酒呑童子退治

陰陽師とはあまり関係はないですが、別面の高欄掛けです。(関係ないと思いきや、実はこちらの採用には深い意味があります。以下の職人様からの解説参照)

2024/11/16撮影


妖術師大盗賊 袴垂保輔

平安一の大盗賊袴垂保輔(はかまだれやすすけ)です。手では印を組んでいます。賊袴垂安輔は、鬼童丸(きどうまる)との対決が有名です。鬼童丸は、一説に大江山の酒呑童子の子と言われ、比叡山の稚児でした。

ともに妖術使いで、保輔は猛火で、鬼童丸は大雨で、保輔が大蛇を出し差し向けると、鬼童丸は天狗の術を使い大蛇を引き掴もうとしたと伝わっています。

2024/11/16撮影

職人様よりご助言

図柄の人物の関係ですが、
蘆屋道満と袴垂保輔は師弟関係。
安倍晴明と源頼光は、酒呑童子の住処を占ったのが晴明です。協力関係となります。
また蘆屋道満と安倍晴明は宿敵。
袴垂保輔と源頼光も宿敵となります。

太鼓台刺繍 紀繍乃や」様より

所感

加古川市西神吉町岸が陰陽師の蘆屋道満の出身地であることもあり、今回神吉中学校に集結した屋台の意匠からは陰陽師の影響を垣間みました。

特に岸屋台の高欄掛けは、今年新調されたことが話題になったこともあり、拝見できたことに感激しました。後で調べてみると、高欄掛け4面の題目には、練り子と職人の深い意図があることにも気がつきました。

自分の勉強不足から、見た瞬間にはその意図や関係性など深いことはいつも分かりません。しかし、職人様からコメントを頂いたり、ネットや書籍で調べることで、わかってくるものもあります。わかった瞬間やつながった瞬間の喜びは最高の気分です。

屋台の意匠の調査や分析において、場合によっては、自分の思考にこじつけや思い込みもあるかもしれません。それでも、調べて考えること自体が楽しくて仕方がありません。科目の「歴史」は得意ではなかったですが、最近好きになってきました。

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