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いま、君の街だよ

「いま、キミの街にきているよ」
超多忙な彼から珍しいメッセージが入る。

夏の間はずっとベトナムのホーチミン
先週はボストンにいたはずだ。
そこまでは把握していた。

地球の裏側のブラジルにいようが
拠点の渋谷区にいようが
どこにいても、なかなか会えることはないから
居場所は特に気にしなくなっていた。

そんな彼がいま、私の街にいる。
そのメッセージはつまり
「会えるよ」というニュアンスだ。

長年付き合っているうちに
言葉少なめな文章の中から
気持ちを汲み取ることができるようになった。

突然会えると言われても…
ネイルを替えている最中だった。

季節はいつの間にか、ストンと秋に落ちて
スピーカーからは、甘いバラードが低く流れている。

サロンのウィンドウ越しに
暗くなり始めたバスターミナルがぼんやりと浮かび
視線を変えたとき、冴えない表情の自分が見えた。

シンディ FU〇KIN レイラ。

なぜかこの言葉が頭をよぎる。
映画「プリティウーマン」に出てきたセリフ。

『そんなハッピーエンドな女っている?』
『いるわよ。
 シンディ FU〇KIN レイラ(シンデレラ)よ』

といったシーンだったと思うけど。

親指のネイルが終わってなくても
透明のジェルを重ねてなくても
「すぐ行くから待っていて!」
と返信することだってできた。

けど、明日からの出張のことを考えると
このあと打ち合わせもあるし
子どもじゃないから、そんなことできない。

ため息をつきながら、サイドブレーキを引く気分だ。
まったくFU〇KIN 。
若くはないって証拠。

けど
「会えるよ」の連絡がうれしかった。
あのクソ忙しいスケジュールの中
時間を割いてくれた気づかいがうれしい。

「君はいつも自分中心に物事を考える」
と怒られることが多い。
先日もそれを指摘されたばかりだ。
ごめんなさい、ションボリ謝ったら
「いいよ、わかってるから」って
いつになく柔らかい返信がきた。

「最近少し、やさしくなったね」
と送ると、返事はなかった。

会えなかったけど、うれしかった。
大人の恋ってこうでなくちゃ
なんて思ったりするから
まだまだお子ちゃまなのかもしれない。

あと2か月ちょっとで今年も終わる。
早く会いたいな。

pay forwardで行動していきます、ありがとうございます☆