美しい容れ物のなかで交わる、わたしと私の身勝手な愛 安史妃子

平穏ながらも日常を送っていた「わたし(アヤネ)」
交通事故に遭い死んでしまったはずなのに、気付いたら見知らぬベッドで眠っていた。宮廷魔術師の妻として。
「私(イシュヴァータ)」はどん底の暮らしから這い上がり、宮廷魔術師の位を手にし、公爵家の娘と結婚した。
しかし嫁は「下賤の者」と見下し、男遊び三昧。
虚しさを覚え、禁断の魔術で異界に「つがい」を見つけ、見守る事に癒しを求める日々。
ある日「つがい」が事故にあい、死に直面した時、運命の歯車が回り始めた…。

何か面白いのないかな〜
ムーンライトノベルズのランキングにある〜
人気なのかな〜
よくある異世界転生モノかな〜
転生モノそんなに好きじゃないけどこのタイトルは良いわぁ〜
と思い読み始めたら、引き込まれた。
魅せられた、の方が正しいかもしれない。
まず、文章・使っている言葉が美しい。
人物達に血肉が通ってるのが感じられ、とてもリアル。
私の大好物でもあるが、物語の中にピンと一本の糸が張られた緊張感。
その糸が切られ狂気に走ってもおかしくないような張り詰めた気迫が感じられ、崖っぷちを歩いてるかのような空気が漂うストーリー。
堪りません…!
この話の見所は、やはりイシュヴァータと師匠の緊迫したやり取りかなぁ。
つがいとの生活を守りたいイシュヴァータ。
イシュヴァータの幸福と、魔術師として守らなければいけない一線のどちらを優先すべきか葛藤している師匠。
二人の静かだけれど張り詰めた激しい問答を読んでいると、呼吸困難に陥りそうになる。
この二人の闘いがあるからこそ、アヤネとイシュヴァータのお互いが全てを明かす事はできないけれど、お互いを思いやり愛を深めていく姿が一層美しい。
二人の死後、次男が全てを悟り、両親の痕跡を綺麗に証拠隠滅するシーンもとても好き。
次男の取った行動をイシュヴァータが喜んでいると思わせる描写がとても美しくて…。
ムーンライトノベルズにもまだ掲載されているけど、アマゾナイトノベルスからも電子書籍化されてて、電書特典の書き下ろしSSも非常に美味しく頂きました。
Kindle Unlimited対象にもなってます。

安先生の紡ぐお話は、一筋縄ではいかなくて本当に好き。
新作の連載も面白くて…。
ツイートされてたけど、体調不良とご多忙なのに連載されてて大丈夫なのかしら。
細々でいいから、創作活動を続けてくださるといいなぁ…。



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