レンタルモップ 第三稿

いよいよだわ。

今日こそ、今日こそ言うのよ。
でないと、貴史に怒られちゃう。

頑張れ、はるか。
 
(深呼吸をする)

よしっ!

(ドアを開ける)


はーい。あ、どうもこんにちはー。


えーと、モップの交換でしたね。

お天気悪い中、お世話様ですー。


はい、これ。

あのー、実はですね、、、


え? あ、ロングモップの方もでしたね。
忘れてた、今とってきますね。

(深呼吸をする)

はい、これロングモップの。


えっと、それでですね、、、


はい?
あ、いやー、そうなんですよ。あんまり汚れてないでしょ。
いえいえ、そんなに綺麗にしてるわけじゃないんですけどね。

うちは子供もいないし、主人も昼間居ないし、私一人でしょう?
だからまああんまり汚れないっていうのもあるんですけどね。
その、、うちにはレンタルモップは無くていいかなーと、、

いやいや、お掃除上手とかそんなんじゃないんですよ。
ただ、どっちかっていうと、無駄な家事はなくしたいなーと思ってて。


そうなんですよ。
別に家事をサボりたいっていうんじゃないんですけどね。やっぱり効率的にこなしたいっていうか。
母の時代みたいに、せっせと雑巾がけっていうのはちょっと、ねー。
だから、レンタルモップって、ホント、、

(小さく咳をする)

あのー、実はですね、、、


え?粗品?
粗品って、、これ粗品なんですか?
わー、綺麗なホーローのお鍋!
こんなお鍋が粗品でつくんですか?

え?1年継続のお礼?


、、、いや、それは、、
必要があるから使ってるだけでお礼なんてそんな、、、


いえ、実はね、、


はい? あと半年継続で旅行が
当たる?

いや、でも抽選なんでしょう?
旅行っていってもそんな、当たる確率低いんじゃ、、、

え、各担当さんの地域で一軒当たるんですか?
うちだけ?一年以上続いてるのが?
ああ、あなたまだ新規に始められたほうでしたものね。

そう。ってことは、、

応募すれば、うちが確実に当選する、、、ってことですよねー、、


いや、羨ましいだなんて、そんな、、

お宅もモップ使われてるんでしょ。それなら、、

あー、そうなんですか。社員は抽選対象じゃないんですか。

あー、確かに。ノルマがあるとねー、なかなかねー、、


あー、いえ、、、

そんな風に言われると困っちゃうわ。


いやいや、それがね、うちはもう、、


あら、ほんとだ。いきなりザアザア降ってきましたね。あ、ごめんなさい。こんなとこじゃ、びしょ濡れになっちゃう。

(背中に向かって声をかける)

あ、すいませーん、ちょっと待って。まだお話が、、


あ、いえいえ、追加のモップとかじゃなくて、、、

あの、、、

旅行ってどちらへ?

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