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白樺湖から「白樺村」へ ── 矢島義拡 自筆メッセージレター

こんにちは、白樺湖レイクリゾートプロジェクト準備委員会です。

長野県にある白樺湖が、時代にあった“新しいレイクリゾート”として生まれ変わろうと、このプロジェクトは始まりました。

noteでは、世界のレイクリゾート事情や、レイクリゾートの楽しみ方、プロジェクトの中心人物たちの想いなどを発信しています。

2020年8月10日(月・祝)〜15日(土)に、白樺湖エリアにて「白樺リゾート LAKESIDE week」を実施するのに合わせ、プロジェクトの発起人である池の平ホテル&リゾーツ代表取締役社長・矢島義拡の自筆にて、このプロジェクトにかける想いを綴ってもらいました。

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矢島義拡(やじまよしひろ)プロフィール
1983年、長野県生まれ。2006年に東京大学法学部卒業後、リクルートを経て、2009年に白樺湖に戻り祖父が創業した池の平ホテル&リゾーツに入社。経営企画室長、副社長を経て、2011年4月より現職。茅野市観光協会理事、白樺リゾート観光協会長、白樺湖活性化協議会部会長ほかの役職を歴任。

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はじめまして。池の平ホテル&リゾーツの代表をしています、矢島です。生まれ育った白樺湖に25歳のときに帰ってきまして、27歳だった東日本大震災の年から社長をやっています。今年、10年目に入りました。

小学校まで育った白樺湖で、当時から親や兄のように面倒を見てもらっていた方々と、今も共に仕事させてもらっています。そんな地域社会に恵まれていることが、僕の仕事での一番の誇りです。

ここ30年の白樺湖

約30年前、私が小学校に入る頃が、白樺湖に最もお客様がお越し頂いている時代でした(日本全国のほとんどの観光地が、同様に、その頃ピークを迎えています)。ビーナスラインへのドライブ、高原への家族旅行、企業様や各組織での団体旅行、ツアーバス、林間学校やスキー体験をはじめとした学校行事、等々、あらゆる旅行をお迎えし、夏のドライブも、冬のスキー場も、常に道が混み合っていた時代です。

また、そういった賑わいの中で、観光業に従事されている地域住民も多くいらっしゃいました。その当時は白樺湖周辺に一学年10人前後もの子供たちがいて、バスで30分かけて一番近くの学校まで通っていたような時代でもありました。

ところが、自分にも子供が出来た時、白樺湖の子供たちは、6学年あわせても3人しかいませんでした。私が小学生だった頃の1割にも満たない数です。お客様にとっての異日常な自然に囲まれた空間は、そこに住む住民にとっては、同時に辺境地でもあり、不便な場所です。全国の観光地が、一方で居住地としては過疎化していく現実が、そのまま白樺湖にも当てはまっていました。

そこから少しずつ、この10年間で、また白樺湖で産まれ育った子供たちが増えてきています。このことは、地域での新たな取組みの中で、事業者の方も増え、お越し頂くお客様がこの10年増え続けていることと、無関係ではないと思っています。

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2020年夏、FIREBASEを設置した場所。40年前の同じ場所ではテント事業を行い、賑わいを見せていた。


訪れて良し、住んで良し ~白樺湖を白樺村へ~

私が家業を継ぎ、観光に従事すると決めた原点は、中学の頃に祖父に連れ立って行った、スイスのツェルマットでの強烈な体験です。ツェルマットは、毎年500万人前後のお客様がお見えになる世界でも有数の山岳リゾートですが、同時に6000人の住民の方々が住む「村」でもあります。

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矢島が中学のときに祖父母と訪れたスイスの山岳リゾート・ツェルマット

当時の強烈な衝撃を一言で言えば、ひとつの村の中で、住民がその村での生活を心から誇りに思い、その生活の豊かさを訪れる方々にお裾分けしているようなもてなしのあり方を感じるシーンが、数多くあったことです。住民自身が、村での生活を心から楽しんでいて、同時にその道のプロとして、訪れる方々にその楽しみ方を体現して伝えていました。

また、目の前で過ごしていらっしゃる方々の時間の流れの豊かさに、当時の日本にはない豊かな観光のあり方を感じました。ヨーロッパの方々の、時間そのものを楽しむバカンスの過ごし方は、予定を詰め込んで旅程を組む当時の日本の旅のあり方とは、明らかに違ったものに映り、同時に、悔しさを覚えました。

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ツェルマットでは、住民たちが誰よりもその村での生活を楽しみ、自然の中で遊ぶプロとして、訪れる人たちにその魅力を伝えていた。

今でこそ、観光地域づくりのキーワードとして、「訪れて良し、住んで良し」という概念が一般的になってきていますが、200年という歳月をかけてその概念を積み重ねてきたツェルマットには、当時からそのシーンがありました。これは、資本主導での短期間でのリゾート開発や、物見遊山的な観光資源の集積地だけでは、決して作り得ないシーンです。

そして、日本でも、長期的な視野の中で、住民の息遣いと誇りを感じる「訪れて良し、住んで良し」のリゾート地が今後求められていくのであれば、白樺湖こそ、その地でありたい。

白樺湖は、第二次世界大戦の前後に、地域の方が死力を尽くして作られた農業用のため池です。それを、最初は農地開拓として、その後は観光事業として、私の祖父やその仲間の方々が地域と力を合わせ、地域を拓いてきたという原点があります。文字通り心血を注いできた地域づくりの原点です。

こうした起源をもちながら、未来に亘って長期的な視野に立って責任が持てる観光住民が存在することは、日本の中でも代え難い資産だと思っています。今の時代にそうした地域を担う我々には、日本に本質的なリゾート地を作る使命があると思って向き合いたい。この地を、白樺湖を囲む「白樺村」として発展させていくことが、これからの村づくりです。


生活文化と湖が調和する“レイクリゾート”へ

2-1_現在の白樺湖

現在の白樺湖。住む人々の生活が自然と調和し、湖の近くで過ごす楽しみ方を伝えていけるような、新しいレイクリゾートを目指す。

観光村づくりの根幹となる要素として、住民たち自身が、その地にある自然を味わい尽くす力を持っているかが、とても重要だと思っています。しかし、海外と比較して、日本の湖の楽しみ方がまだまだもったいない!!と感じています。

例えば、北欧、ニュージーランド、中国等では、それぞれの国の個性の中で、湖を楽しむ生活文化ができています。筏船釣、テントサウナ、湖水浴、桟橋、などなど、湖との距離が近いリゾートの楽しみ方が生活文化の中に定着しています。

日本でも、湖畔に存在する源泉を中心にした温泉街は、ひとつの湖の楽しみ方として定着していますが、湖との距離が少し遠い「観る」対象としての楽しみ方が主流だったようにも感じます。もっと生活文化と湖の距離が近い、日本版のレイクリゾートのスタイルも、そこに加えていけるのではないか。それが、「レイクリゾート」という概念のもとに新しいリゾートづくりをしていこうという考えに至った経緯です。特に、withコロナ/afterコロナで求められるライフスタイルと、穏やかな湖との親和性は、とても高い気がしています。

新たな楽しみ方を発信している湖での取り組みが増えてきている中で、今後、同じように取り組んでいらっしゃる日本全国の湖の方々と一緒に、これからの湖の楽しみ方を、日本版のレイクリゾートのスタイルとして発信していけたらと思っています。

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■「LAKE TIME~湖畔時間~」各ページ
・Webページ: https://shirakaba-lake.com/
Webページでは、白樺湖周辺で体験できるアクティビティやコンテンツをまとめて紹介しています。
・note: https://note.com/laketime
noteでは、人工ため池である白樺湖ができた歴史や湖畔での過ごし方、世界のレイクリゾートの考察なども行っています。
・Instagram: https://www.instagram.com/laketimejp/
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SNSでは、白樺湖の風景や季節の草花の写真、その日の気候や景色を不定期で発信しています。

■白樺湖レイクリゾートプロジェクト準備委員会参画企業・団体
白樺リゾート 池の平ホテル&リゾーツ/信州たてしな観光協会/八ヶ岳アドベンチャーツアーズ/FIRE SIDE/quod, LLC