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あごが外れた記録をまとめてみた①

あごが外れるというのは経験しないことには全くわからないですが、相当の痛みです。そして「はめる」ことも技術が必要です。どんな治療家でも、慣れていなければできません。実際に外れたらどうなるのか、どうしたらいいのか、外れそうな人は何に注意したらいいのか、少しでも参考になれば。あくまで体験談なので、医学的見地は最後に少し紹介しておきます。

なお、わたしは現在8年以上、あごが外れず平和に暮らせていますが、最終的には親知らずを抜いて顎の歪みなどを調整(矯正)したことが良かったのではないかと思っています。それと、とにかくストレスを減らすこと。

では、初回の壮絶な記録から。実際の出来事ですが自分でもネタにしているため、真面目な文体ではございません。リラックスしてどうぞ(痛いとこは痛いです)。もともと別の媒体に書いていたものを少し編集しました。外れた記録は全3回あり、まとめと言いながらも記事を分けます。

1.あご外れ事件 忘れもしない3月の天神さんの日

2007年3月25日、雨あがりの日曜日。2月と同じ暦なので、天神さんが2ヶ月連続サンデーオープン、満員御礼!!・・・そんな日の朝。

8時半ごろ、親から電話が掛かってきて話をしていました。なんとなくあくびをしたら、あごがはずれました。あ、やばい。

いつもなら、ちょっと頑張って「えいっ」とやると「カクン」と音がして元に戻るのですが(本格的には外れていない状態)、その時はいくらあがこうとも微動だにしない。自分で戻すのは不可能と判断し、病院へ行くことに。親と電話中だったので、どうにかこうにか「あごはずれた。きる。」と、聞き取れる限界な感じで言って切りました。親は理解していた。

わたしも母親も、叔母もなので、あごの弱さは遺伝でしょうが、以前から何度か、あくびして「カクン」となることがありました。歯医者でずっと口を大きく開けるのも辛い。ただ、元に戻らなくなったのは初めてでした。

とはいえ、これは予測していたことなのです。その頃は体調が悪く(うつ病)、「カクン」が一日数回も発生する日があり、これは異常だと思っていた。普通は年に数回レベルです。ある日、見舞いに来た友達にその話をしたら、その子の友人のあごが外れたというのです。しゃべれないもんだから自分で救急車が呼べない。近所の人に呼んでもらったそうです。

ほぅ。。。とりあえず救急車に乗り、病院に行けば戻してもらえるのだな。自分にこの事件が起こる確率はかなり高い。そこで、近所の消防署まで何歩で行けるか測定しに行ったところ、50-60歩でした。つまり1分以内。その頃は極度のうつで足が弱く、へろへろだったのですが、これなら歩ける。それから携帯電話のメールに「あごがはずれました 病院へお願いします」と打って、住所と名前書いて、下書き保存。・・・完璧。

そんな準備をした約2週間後。大あくびをしたつもりは全くなかったので驚きつつも「やっぱり来たか」と、必要な物の入ったかばんをさっと取り、適当な部屋着のまま出発。運のいいことに?友達が東京から泊まりに来ていたので、付き添いを頼んで急ぎ足で(よろよろと)向かいました。

すると、あと5歩で消防署!というところで、目の前を「ぴーぽー」と発車していく救急車が1台。

あれ?・・・出ちゃった・・・と思いながらも、とりあえず外にいる隊員さんに話しかける(友達が)。「あ、今ね1台ちょうど出ちゃったから、他のが来るまでちょっと待ってもらわなあかんのですよ」。何ぃ!!!!!

あごが外れた状態というのを詳しく説明します。だらーんとしているわけではないのです。ありえないほど縦に大きく開いた口の奥のほうに、ありえないほどがっちりと、縦につっかえ棒を差し込まれているような状態です。

想像していただけたでしょうか、つまり相当めちゃくちゃ痛いのです。ムンクの叫び+縦棒です。悲しみと痛みの狂想曲(わけわからない)。

そんな状態で待てと言う。仕方ないので座って待つ。
必要なもの(保険証とか)を取り出して見せ、質問には筆談で答える。口に出せるのは「早く」のみ。(実際の発音は「ああぅー」)

待っている間、電子血圧計(バンドみたいに巻くやつ)で何度か計測されるが3回以上全てエラー。パニックのためか何度やってもだめ。消防署員さんは「大丈夫ですよー、お医者さん、すぐ入れてくれはるからねー」と優しくなぐさめてくれるが、「ああぅー(はやくー)!!!」この姿を元に戻さんかぃ!と鬼の形相のわたし(とても人様に見せられないので、ずっと口は隠している。)

10分ほど待って、ようやく救急車到着。支えてもらいながら、自分で歩いて乗り込む(ちなみに救急車に乗るのは別件も入れて2回目)。隊員さん、病院に電話をかけて受入体勢を確認中。そこは予想通り、交差点を渡って斜め向かいの個人医院(中規模だが総合病院ではない)・・・てっとり早く背負っていってくれよ、と思いつつ、我慢する。ああぅー早く早く早く。

サイレンの音も高らかに、ついに救急車が発車。しかし処は京都西陣・北野天満宮前交差点。時は道真公の御命日である25日、天神さんの日曜日である!!屋台もびっしりと出揃い、祭で賑わう午前9時過ぎ・・・・

「あぶないですよー、よけてくださーい」と救急車のアナウンス。「おばちゃん轢かれそう・・・」と友の声。「なんでよりによって25日やねん!!!」と心の叫び(わたしの、だが救急隊員も同じかも)。この時点で相当ネタやなと思うが、痛いのでどうにかしてほしいのが先。

そして1分以内に病院へ到着。処置室に入り、やっと口から手を外す。鏡は見ない。見たくない。さて先生、どうしてくれるんやろ。

医師は、おもむろに壁際へ椅子を持っていき「背中をぴったりくっつけて座ってください」と指示。要するに固定するのだな。そしてガーゼをはめた両手で口をあけられぐいぐいぐいと・・・される前に、唾液がたまっていたので、ちょっと出してねといわれる。

で、洗面台の前に立ち、「ぺっ」 と
・・・・出来ないんですよ!!!

だいたい、口が動かないから唾液も飲み込めないわけで、「ぺ」の発音なんて出来ない。そうすると唾液を口から出す方法は、自然と流れ落ちるに身を任せるだけ。なんという醜態、乙女にあるまじき姿。見せられやしません(書いてるけど)。今これを回想するわたしの脳裏には美空ひばりとテレサ・テンの歌声が響くが、当時のわたしは絶望するのみ。あぁぁ・・・

唾の流れにショックを受けたまま椅子に座ると、医師は「力抜いてくださいねー」と言いながら、両あごをぐいぐいぐい

(イタイイタイ!!)

ぐいぐいぐいぐい

・・・・

微動だにしないあご。「うーん、なかなかうまくいかないねえ」と、正直すぎるコメントで不安を増大させる医師。

ぐいぐいぐい

(痛いて!痛い、うぅぅぅうー)

・・・・

「痛み止め使いましょうね。そうしたらはまりますからね」

ベッドに横になり、注射を受ける(点滴みたいに)。
そして仰向け状態でまた、ぐいぐいぐいぐい。

・・・・はまらない。

ぐいっ ぐいっ

(痛いよぅ 涙)

・・・

「○○追加。」 (看護師さん、新しい薬を投入。)

これって重症?結構レアなケース?と思ったが、次第に痛みが和らぐ。

ぐいぐい ぐい

かくん。(右がはまった音)

はまったのかな・・・うーん・・・という感じの表情で、ぐいぐいぐいを続ける医師。わたし、点滴を受けていない片手のジェスチャーで「右はOKだけど左まだよ」と右顔面のみの半笑いで伝える。傍の看護師さんも「もう大丈夫ね」と微笑む。

ぐいぐいぐい 

かくん。(左がはまった音) !!!!!

喜びのあまり、叫んだかしゃべったかしたはずですが、覚えていない。この間たぶん20分強。家で外れてからだと合計1時間弱、あごが外れっぱなしでした。。。痛みに異常に弱いわたし、この激痛によく耐えた。

痛み止め(麻酔?)の影響でふらふらするのが治るまでベッドに横になり、歩ける状態になってから友達と帰りました。途中、おきにいりの店でケーキを買い、天神さんの屋台でたこ焼きを買った(が、まともに食べられたかどうか記憶がない)。ちなみに、何度も外れるようなら専門の「口腔外科」に行きなさい、とお医者さんは言いました。

そんなわけで予測の上に準備までした事態が本当に起こったけど、予想以上に処置は大変でした。診療分類上は「手術」。ごっつい響きだけど、確かに手技だった。薬を使わなければおそらく処置は3,000円くらいだったのでしょうが、薬を使ったせいで合計5,000円くらいかかりました。あごが外れて5,000円て!?無職なのに痛すぎです。しかし、薬なしで耐えられたとは思えない苦痛ではあった。

その日も、その後も1週間以上あごは痛く、あくびも縦に大きくあけないようにしていました(これがまたキモチワルイ)。あとは、食べ物。最初は口が開かないので、翌日はカレーパンを食べるのが厳しかった。食べる幸せの一部は、大口開けて食べられるってことだ。ハンバーガーとかね。

もし「カクン」という音をあご辺りで聞いたことがあったら要注意。
周りの人に、はずれやすいことをアピールしましょう。すぐ病院に連れてってもらえるように(自分で言えないから!!)。そして、歯科か口腔外科で治療を開始しましょう。場合によっては整体も必要かも。

                 *

note投稿時のあとがき

3月25日は春休みでもある上に、受験の結果も出そろった頃。お礼参りの学生さんも多かったであろうと思われます。それに加えて天神さんの縁日。そもそも、遊びに来ていた友人を連れて出かけるつもりだったはずの、天神さん。3月最後の日曜に、浮かれた人たちで賑わう北野天満宮前交差点を、わたしたちが乗った救急車は蹴散らしながら横断した。人生のネタ帳に、また至高の一件が刻まれた・・・と思った。笑 

これは真面目な話ですが、痛みなしで外れたあごを1分以内に戻してくれるなら、5千円どころか1万円でも払います。それくらい痛いです。こういう技術を持ってる人は、もっとアピールして欲しい。今、ネット検索してみると「顎関節脱臼」について書いている医院はいくつか出てきます。実際は担当医が常にいるのかどうか、電話で確認したほうがいい(しゃべれるうちに、あらかじめ!もしくはメモ書いて残しておき、誰かに頼む)。

この時の救急担当医、彼がもともと何科の医師か知らない上に、顔も名前も覚えていないが・・・ある意味、初体験の(治療してくれた)人であった。当時は比較対象がなかったため評価不能ですが、あごが外れる経験を重ねたのちに技術の違いを知ることになります。最後に、付きそってくれた友人に感謝。せっかくの京都旅行に、凄まじい体験をプラスさせてしまった。

(参考)医学的な解説と応急処置について

応急処置を自力でやるかどうかは、くれぐれも慎重に。わたしは何度か人にやってもらっているので、軽い症状なら自分で元に戻すことも一応できました。初めて外れた人が、いきなり自分でできるとは思えません。ただし、上手な人がやれば一瞬で元に戻すことが可能です(詳しくは次回)。

第1回から長くなりましたが、今回の苦労が信じられないほどの「神業15秒」体験と、逆に時間かけて過去最悪に痛めつけられた話は、次回に。

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