『左ききのエレン HYPE』のすごいところ色々

こんにちは。
asobiというバンドでトラックメイカー/DJを担当している、Laineyと申します。

題名の通り、ジャンプ+でリメイク版が連載されていた『左ききのエレン』。
これの原作版にのみ存在する第二部『左ききのエレン HYPE』を改めて全話読み返してみて、
思ったこと、個人的なイチオシポイント等について、書いてみようと思います。


◯そもそも、『左ききのエレン』って?

『左ききのエレン』(ひだりききのエレン)は、かっぴーによる日本の漫画作品。大手広告代理店を舞台にした群像劇。2016年3月24日から『cakes(現・note)』で連載中。第1部『左ききのエレン』、第2部『左ききのエレン HYPE』、第3部『左ききのエレン DOPE』と物語が続いている。(Wiki引用)

上の説明にもある通り、大枠の舞台は主人公の朝倉光一が勤める広告代理店『目黒広告社』。
一言で言えば、光一や社内外のクリエイター各人にスポットを当てた、『クリエイター群像劇』です。

2017年-2022年にはジャンプ+にてリメイク版が連載され、大きな人気を集め、ドラマ化もされました。

キャッチコピーは『天才になれなかった全ての人へ』。

徹底して、『努力する凡人』として描かれる光一。
目黒広告社に新卒で入社し、才能ある上司や優秀な後輩に囲まれ、あらゆる経験を糧に少しずつデザイナーとして成長していきます。

相反して、『苦悩する天才』として描かれる山岸エレン。
自身と周囲との感性の差異に傷付き悩みながらも、その卓越した才能でNYを舞台にアーティストとしてのスターダムを駆け上がっていきます。

この2人の歪なライバル関係を軸として、その他大勢のクリエイターの情熱、挫折、成功、果ては現代の広告業界の在り方までを精緻に描いた、超名作が『左ききのエレン』なのです。

ジャンプ+にて連載されていたリメイク版は原作版で言う『第一部』にあたります。

ここまででも充分綺麗に完結してるので、『ジャンプ+版だけ読んでたよ!その後は知らないな、、、』なんて人も多いんじゃないでしょうか。

今回の記事は第二部である『HYPE』に焦点を当てているので、第一部の説明はこのくらいで。


・第二部『HYPE』って?

舞台は変わらず目黒広告社がメイン。
第一部から数年が経過し、30代も半ばを過ぎた朝倉光一が、上層部より『朝倉チーム』設立の打診を受ける所から物語がスタートします。

第一部での紆余曲折を経て、以前は有り余っていたクリエイターとしての情熱を失っていた光一。

そんな中、かつて彼が尊敬した上司『神谷雄介』が立ち上げた新進気鋭のブティック『UNTRACE』が、目黒広告社へのクライアント奪取を開始します。

その危機に対抗するため、結果として『朝倉チーム』は設立され、光一は再度クリエイターとしての戦いに身を投じていく、、、

というのが、大まかな流れです。

要するに、イケイケの新しい企業とガチガチの日系企業との、クライアントの奪い合いですね。

ここからイチオシポイントです!!

①対立構造の描写

光一と神谷、目黒広告社とUNTRACEの対立構造の描き方、その細やかさが本当に素晴らしい。

第一部にて多くの上司や厳しい案件に揉まれてきた光一はその経験を活かし、『部下の育成』や『社内調整』等、チームを底上げする様なアプローチでUNTRACEに対抗します。

方や神谷は、その圧倒的なカリスマ性で才能あるクリエイター達を率い、瞬く間に目黒広告社の事業領域を脅かしにかかります。

光一の居る目黒広告社はガチガチの日系企業ですから、社としての判断は遅いわ腰は重いわで、みるみるうちに敗色濃厚。同じ社内でも利害関係やモチベーションにバラつきがあるので、本当にまとまんないんですよ。その辺が超リアル。
UNTRACEは社員数では劣りますが、神谷がトップである以上社内リソースの割き方は自由自在。目黒と同じく一枚岩とは行きませんが、我の強いクリエイター集団を神谷が上手く焚き付けて、勝負を有利に運んでいきます。

僕もいわゆる『ガチガチの日系企業』にしばらく勤めていました。
おまけに今ではジャンルは違えどプロのクリエイターを目指しているので、この辺りの描写にはもう共感する要素しかありませんでした。

目黒の問題点は実際に『0→1』を生み出せるクリエイターや営業マン、その比率が少なすぎること。
これがいかにモノを作る組織として危険か、、、みたいなことが、ありありと描かれてます。ヒエ〜〜

対してUNTRACE側は実力者ばかり、マインドも基本『個人の自己実現』に寄ってるので、各人の思考が常に自分事というか、ある種の『エゴ』をめちゃくちゃ大事にしてるんですよね。
だから個人での情報収集→分析→行動のプロセスが早い上に的確。

だからと言って(ネタバレになるので細かくは書きませんが)目黒側が何もかも劣ってる、なんて描き方はされていないと思うし、UNTRACE側にも各人のエゴが強過ぎて崩れる場面が何度かあります。

ストーリーの帰結的にも、圧倒的な個人主義の勝利!!!みたいな感じでは決してないし、チームの重要性にもかなり重点を置いてます。
要するに、クリエイターとしてのエゴは大事にしつつも、バランスが大事なのかな、、、みたいな事を思ったりしました。(その辺かっぴー先生の大いなる意図は全然読み切れてない気がします)

とは言え個人的には圧倒的にUNTRACE推しです。
僕の理想とするチームってフィクションに限ると『公安9課』なんですが、それに限りなく近い気がして、、、、
たとえ少数でも各人が情報収集に積極的に動けて、理論を組み立てて実践する実力もあったら、それが最強では、、、?

目黒側は光一が上司として超有能かつ周囲の人にも恵まれてるから何とかなってますが、実際の企業だったらこうも行かない気がする、、、


長くなりましたが、相反する個人、対照的な組織の構造、それらをこんなにわかり易く、それでいて細やかに描写してる漫画は他に知りません。


②会話描写、心理描写のリアリティ

これは第一部の時からずっとそうですが、各キャラクターがちゃんと『生きてる感じがする』んです。

キャラ一人一人、生き方や考え方が全っっ然違うし、その『擦り合わせとしての会話』が常に成立してる。

コミュニケーションの在り方にめちゃくちゃ重きを置いている感じがして、読んでいてとっても気持ちがいいです。

特に仕事上での会話って、常に利害が絡むし、伝え方の塩梅、情報量の匙加減、それを読み取る力とか、いろ〜んな要素が複雑に絡み合って出来ているので、それをストーリーの中で自然に走らせるって、マジで絶対難しいと思うんですよ。

それを平然と(ほぼ)週間の連載の中でやってるのが本当に凄すぎて。

HYPEには特に沢山のキャラが登場しますが、ドラマが描かれないいわゆる端役のキャラクターにも、しっかりと会話に個性があったりするのも素敵です。

それに合わせて『心理描写』も素敵。

この漫画は常に『才能』や『実力』を描く事を徹底してて。
クリエイター各人が、ちゃんと自分の能力に基づいた人格してるんですよね。
そのステータスがあるからコイツはこういう考え方なんだな、とか、その才能あったらそういう行動するよね〜、みたいな納得感がエグい。

その選択や行動の結果が良くも悪くも自分や周囲に返ってくるし、それを受けてまた自分も周りも考える、、、
生活の中で当たり前にやっているプロセスが、漫画の中にちゃんとある〜!みたいな感じです。


ひゃー勢いで書いたら3,000字超えちゃった!
ここまで読んでる方そうは居ないと思いますが続きも書きます。
またいずれ!

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