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オットの器の大きさを「灯油とラッシー」で説明してみた

わたしのオットは器が大きいことで有名だ。
有名と言ってもわたしの中において、だけど。


オットは今年新調したアラジンのストーブが大好きで、何かにつけて「寒い?つけようか?」とストーブをつけたがる。
ストーブをつけるためには灯油が必要なわけで、灯油タンクからストーブに灯油を継ぎ足すのはオットの担当だ。


昨夜、オットは晩ごはんの前に「つけようか?」と言い出したので「つけたいんでしょ?」と答えた。あいにく灯油が充分とは言えなかったので継ぎ足すことになったのだけど、オットはこの継ぎ足し作業において前科者なのだ。


入れすぎて灯油を床に少しだけ溢れ出させたことがあるのだ。


わたしは灯油のニオイが比較的苦手なので、床にしばらくニオイが残ったことが嫌だった。なので今回は「気をつけてね。充分に気をつけてね。こぼさないでね」と言いながらオットの作業を見守った。


そうしたらまるでコントのような事件が起きた。ポンプからものすごい量の灯油が逆流し始めた。「わーマジかマジかマジかー!さいあくさいあくさいあくー!」とオットが連呼する。ポンプに残っていた全ての灯油が逆流し終えるまでは為す術もなく、灯油は今までの数十倍の面積で床を這っていった。


こういうときは怒ってはダメだ。怒っても何も良いことはない。責めても元には戻らない。そう思っていても、あまりの惨劇にわたしの口はとんがってくる。呆れすぎて文句も出ないぐらい、わたしの顔が不機嫌になる。オットは「良い掃除になるねぇ」と言っている。


「こうなった敗因はなんなの?」と、極力責めないセリフで言ったつもりだが完全にオットを責めている。オットはテキパキと掃除を始め、わたしも手伝った。ゴム手袋をしていたけれど、ちょっと皮膚についた灯油は石鹸で洗ってもすぐにニオイは消えなかった。



        ※   ※   ※   ※   ※   ※



そして翌朝、わたしはラッシーを作ろうとしていた。昨日カレー屋さんでオットと一緒にいただいたラッシーが美味しくて、家でも作りたくなったからだ。


2人で朝の散歩をして材料を仕入れ、ヨーグルト250gに牛乳を250ml、レモン汁とラカントを大きめのビーカーに入れた。オットはアイランドキッチンの流し側で朝食作りをし、わたしは反対側でビーカーに入ったトロトロの液体を大きめのスプーンで混ぜた。


すると昨日の灯油以上にギャグのようなことが起きた。


まるで野球のボールが障子を突き破るように、ビーカーの内側からスプーンによってパカーンと丸い穴がひび割れて、ラッシーが全てドローンと出てきてアイランドキッチンのテーブルの際から床へと落ち始めた。


わたしは「ふゃぁぁぁぁぁーひゃぁぁーーーー」とよくわからない声を出しながら、滝のようにこぼれ落ちゆくラッシーを反射的にお腹とテーブルでせき止めた。トレーナーがラッシーでビシャビシャになった。床もラッシーだらけになった。まさかビーカーがあんなにかんたんに真ん中だけ割れることがあるなんて。


すぐさまオットから出てきたひとこと。


「ケガしてない?」


昨日の灯油のごとく、オットはテキパキとラッシーの掃除を始めた。わたしはひとまずラッシーだらけの服を上下とも脱いで着替え、オットに引き続きラッシーの掃除を始めたが、ラッシーは手強い。


灯油のように新聞紙を吸うわけではなく、液体のようで固体でもある。やっかいなのだ。オットは「いやぁ〜、ケガが無くて良かったよ〜」と笑っている。わたしを責めるような言葉もなければ、不機嫌な顔を見せることもない。


わたしがオットの器の大きさを感じるのはこういう時だ。
昨夜の灯油事件があっただけに、わたしは大人げないわぁ〜と自分自身反省した。


…でも、未だに少しだけ思っているのは、灯油はニオイが苦手だけど、ラッシーは良いニオイだということだ。わたしだって、昨夜こぼしたものがラッシーならあんなにオットに対して不機嫌な顔は見せなかったはず!…いや、ラッシーが飲めないことに文句言いそうだなぁ、わたし笑

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