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エビデンス確認の重要性

議論などで使用する証拠や根拠のことをエビデンスと言います。何かを議論する際に、単なる思い込みで話すのではなく、きちんとしたエビデンスに基づくことが大切です。先日、テレビを見ていたところ、この具体例に当たることがありましたので、参考のために記載しておきます。

そのテレビでは、コロナ感染症について、
『「フランスでは、日本の数倍の感染者数が出ているのに医療崩壊が起きているとは聞こえてこないがどうしてか?」というコメンテーターの質問に対して、専門家が「フランスでは、三度目の予防接種が進んでいるためではないか」』
と述べていました。

ここで、事実関係の確認が必要であると思われたため、札幌医大のコロナに関するデータベースのサイトを確認し、エビデンスを確認してみました。フランスの100万人当たりの感染者数は日本の約5倍であり、死者数も同様に5倍でした。また、感染者に対する死亡者数の比率は日本とフランスで大きな違いは見られませんでした。

医療崩壊が何を意味するのかによって、医療崩壊が本当に生じているかということに対する回答は変わってきます。しかし、「医療体制が十分に機能せず、平常時であれば、助かる症状の患者が死亡する」という意味で医療崩壊と言っているとすれば、フランスでも医療体制が崩壊している可能性が高いと言えるでしょう。
もしかしたら、フランスでも医療崩壊が起こっていて問題になっているのであるけれども、日本の医療崩壊の問題が重要であるため、海外の医療崩壊は取り上げられていないだけかもしれません。そして、海外の医療崩壊については、マスコミが取り上げないため上のようなやり取りが生じただけかもしれません。
もちろん、これは一つの可能性であることは明記しておきます。


マスコミにはアジェンダ設定機能があるとされています。これは、『何を議論の対象とするべきか』ということを決める機能をマスコミが有しているという考え方です。
今回のコメンテーターと専門家は、日本の医療崩壊についてはアジェンダとして設定されているがフランスの医療崩壊はアジェンダとして設定されていないということを知らずに議論している可能性があります。

物事を見る際には、エビデンスを調べることが重要になります。もちろん、述べられている事実について確認することも重要です。しかし、それ以上に何が述べられていないかを考えることが必要です。そのうえで、述べられていないことに関する事実がどうなっているか、ということは述べられている事実を確認する以上に重要です。

他人を騙すためにはウソをつくよりも、都合の悪い真実の一部を伝えないことのほうが有効な場合も少なくありません。自分を守るためにも、述べられていないエビデンスについて考えることが大切であると感じました。

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