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美味しすぎない「(ソース)かつ丼」

日曜出勤である。ジャパニーズビジネスマンをあざけ笑うような国道の混雑、ステレオタイプに人気店で行列をつくる人々。

本当に勘弁してほしい。本当に羨ましい。

そんな働き者に無情な空気を避けるように、東北本線の石越駅までやってきた。誰もいない駅前の景色が心の荒みを癒してくれる。

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知らない町の知らない駅で、ファンタジーに出逢った。「食堂 赤城亭」だ。看板に踊る(自慢、中華そば)(うまい、かつ丼)のキャッチコピー。近代日本の洋風建築を彷彿とさせる建具。暗い店内と営業中のサインのミスマッチ。期待一杯にドアに手をかけるが、「押す」と記されたドアは、我が手に押される気配をまったく見せない。

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下手側に少し回った場所にあるドアが本当の入り口のようだった。ここは忍者屋敷なのかと勘ぐりながら、

あいつ、さっき入り口間違ったよね

などと勘ぐられないように身を潜め、一番奥の角席に陣をとる。

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久々に晴れた陽の光をやわらかに透す、石目調のガラス。開かない扉には目隠しのレース。客のいない店内。何も食べずに帰っても満足できるほどのシチュエーションだが、折角だからと女将さんを呼びつけた。

選んだのは、かつ丼(900円)。高いだとか安いだとか、美味いだとか不味いだとかはどうでもいいのだ。空腹の胃を、食べ物という概念で満たす行為自体がただただ尊いのだから。

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丼の蓋を開けると現れたのは、茶色い見た目のソースかつ丼。薄手の、サクサク感を失ったカツが三枚。これが美味すぎる訳がない。ニタニタと丼を持ち、豪快にかき込む。意外にも肉は柔らかで、ソースが染み込んだ白米が香ばしい。

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相変わらず店内に他の客はいない。日曜の昼なのに、この町の人々は何処へ行ったのだろうか。そうだ。皆、地下か何処かで必死に働いているに違いない。妄想の中で町民を日曜出勤に巻き込んだ企業戦士は、テレビから流れる和田アキ子の声を聴く。そして今日が日曜日であること以上に、明日が月曜日であるという事実が最も無情だと知るのであった。


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lada
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