![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/82851573/rectangle_large_type_2_04b2271515f1305c7bac433e2e5fe632.jpg?width=1200)
美味しすぎない「チェンマイヌードル」
縦に停めるべきなのか、横に停めるべきなのか。一台がギリギリ停まれるぐらいのスペースしかないのだから、別にどちらでもいいのだろうが、それでも何となく気を使う。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/82852105/picture_pc_e32498b0e19de470ff666d3eb690bc47.png?width=1200)
おそらくここは「喫茶エルガー」。でも、その入り口すらよく分からない。看板はある。しっかりと、そして異様な雰囲気でオープンと主張してはいる。あの茂みの向こう側に店がありそうではあるが、しかしどうにも自信がない。だから駐車の縦と横にも気を遣ってしまうのだ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/82852133/picture_pc_82d8c9b2763db30bed2effe94ac2a7e6.png?width=1200)
腰を屈めて前に進む。数メートルほどもない茂みが、まるで冒険のように感じる。程なく建造物が見えてきた。多分ここがエルガーで間違いない。あとは無事に帰宅できることを祈るのみだ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/82852402/picture_pc_6bde597910593f1d5e927a528cf21743.png?width=1200)
店に入ると、白髪のマダムが機嫌よく部屋に通してくれた。12時を過ぎているのだが、どうやら我々が今日はじめての客らしい。照明を灯し、BGMが鳴らされた。パッヘルベルのカノンだ。どこかの芸人が「悲しいとき」の理由を叫ぶときに流れる曲だ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/82852959/picture_pc_a71ec8a67e6d29e8c1652c68ea87ac18.png?width=1200)
雨上がりの紫陽花を眺める。オーディオの音質が必要以上によい。運ばれてきた水は生ぬるい。メニューに当店一押しと書かれている「チェンマイヌードル」をオーダーする。シナリオで既に決められていたかのようにオーダーする。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/82853367/picture_pc_bb39cec83e9f7ddfa0830ea963d47f73.png?width=1200)
おそらく旦那さんなのであろう。執事のようにも見える男性が、チェンマイヌードルを運んできてくれた。メニューには「うどんに似た太めん」と書かれていたのだが、見る限りは日本のうどんだ。食べてもうどんなのだが、世界にはまだまだ知らないことがあるなと感心する。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/82853965/picture_pc_58a5b25af38688626c75d11c6976a55b.png?width=1200)
サラダの上にはイクラが降り掛かっている。いや、よく見ると黄色や白のイクラもある。味がない。食感もない。そう言えば、こんな知育菓子があったなと懐かしむ。旦那さんが、こちらの様子を伺うようにふらふらと歩いている。ココナッツが効いたタイカレーを食べ汗をかく。タイの太めんは、食感も喉ごしも、やはり、まるで、うどんのようだ。
悲しいとき。悲しいとき。
うどんに似た太めんが、間違いなくうどんだったとき。うどんに似た太めんが、間違いなくうどんだったとき。
サポートいただいたお金で絶妙なお店にランチにいきます。